僕らのダンジョン探索録 4
「――なんて、考える前に掌底アターック!」
スケルトンが立ち止まったのをみて俺は即座に立ち上がりその勢いを乗せた掌底で顎を打ち抜いた。
外れ吹き飛ぶ頭蓋骨。
それを見るのは一瞬、俺は全力で残った体のほうにタックルを繰り出してスケルトンの体を吹き飛ばし、そのまま無視して逃走した。
「ハァ……ハァ……逃げ切った、な」
それなりの距離を走ったところで物陰に潜み、息を整えつつ、スケルトンが追ってきていないことを確信する。
はーしんど。
逃げてる間ほかのモンスターに出くわさなかったのはラッキーだった。
日頃の行いがいいからだな、きっと。
それにしてもリアルなスケルトンだった。
プレイヤーのアバターはいい感じにゲームチックにされてるのにあの骨は現実のそれをよりホラーチックにした感じだ。
わずかに残ってこびりついた肉片とかもうね。
ちょっとホラーにはトラウマがあるので勘弁して欲しい。
さて、ここはどこだろうか。
残念ながら逃げるのとマッピングを同時に行えるような頭はしてないからさっぱりわからん。
自動マッピング機能もなかったし。
周囲に耳を傾けつつ物陰からゆっくりと出て辺りを見渡す。
するとキラリと光るものを発見って、なんかアイテムあるじゃん、ラッキー。
周囲には敵はいないようだしありがたくいただこう。
そう考えて歩き――
――カチッ
「ぬおおおおおお!?」
足裏に違和感を感じ、さらに足下から不穏な音がしたのを認識した瞬間俺はなにも考えず全力で体を動かし前方へ移動していた。
そしてすぐ後ろを何かが通りすぎたのを感じつつ、俺は地べたを転がった。
「あっぶねー! うわっ岩壁にあんな深々と刺さってる……」
どうやら俺はトラップに引っ掛かったらしい。
踏むと壁から矢が飛んでくるやつだ。
我ながらよく反応できたものである。
それから先ほどスイッチを踏んだ場所を見てみるとなるほど確かにスイッチにしか見えないきれいな円柱がひょっこりと飛び出ている。
そうだと分かっていれば分かるが、通常だとよほど観察眼が優れてないと見つけるのは厳しいな。
ヘーテルなら余裕で見つけそうだけど。
さて、トラップに守られていたアイテムはなんだろうかと、気になった俺は他のトラップを警戒しつつひょこひょこと脚を引きずりつつ近寄っていく。
脚を引きずっているのはさっきの無理な回避で脚を痛めたからだ。
ほんとに無駄にリアルなゲームだな。
で、結局新たなトラップに引っ掛かることなくアイテム傍まで来れたので、アイテムを拾いあげる。
布か?
さらさらとしていて非常にさわり心地が良く、仄かに光を反射している。
それが棒に巻かれて直径10センチぐらいになっている。
どうやら拾うまでそれがどういう形のものなのかは分からないようになっているようだ。
この布も最初に見つけた水晶かと思っていたのに拾い上げたときには布になっていた。
それにしてもまたもや換金アイテムか。
まだ二個しか見つけてないからなんとも言えないが、ハイドのタイプの説明通りなら今後も手に入るアイテムは換金アイテムにばかりになるのだろう。
となれば問題は換金率だな。
高ければその金で武器や防具もなどの装備を整えられる。
それに他のタイプよりもギルドのランクは重要かもしれない。
なんせ換金率にボーナスが付くって話だからな。
ランクはクリア回数や、換金アイテムの価値によって上がるって言ってたから頑張ってアイテムを集めないと。
……いや、アイテムを見つけるのは二の次か。
まずは生きてこのダンジョンを脱出して無事街に帰らなければ。
持ち帰らない限り評価はされないのだ。
「よし、方針は決まった。命大事に行くとしよう」
一人呟き、俺は出口を探して歩き出す。
脚の痛みの治まったから一時的なものだったようで安心だ。
焦らず、慌てず、けれども必要以上に動きを遅くすることもなく、普通の速度で歩いていく。
全体を見るように意識して、曲がり角ではクリアリングを欠かさない。
うむ。
単独爆破ミッションと、同じだな。
そのあとは非常に順調にことは進んだ。
この手のステルスミッションは散々やったからな。
しっかり警戒していたから敵モンスターに襲われる前に気付きやり過ごすことができたし、スケルトンの足音は覚えたから即座に逃走することができた。
そうして敵をやり過ごしながらもアイテムを4つほど手に入れている。
全部換金アイテムで、中には布のように大きめのアイテムもあったのでそろそろ背負袋はいっぱいだ。
いや、スペース的には余裕はあるが重量的にきついのだ。
まあ、そんな感じで探索は結構、順調と言えるだろう。
ただ、そろそろ出口にしろ次の階層への入り口にしろ見つけたい。
今だそれっぽいものは発見できずダンジョン探索の続行を強いられているわけだが、このダンジョンかなり広いな。
多分同じ所をぐるぐる回っているなんてことはないと思う。
一応、外部で描画ソフトを立ち上げて適当な感じでマッピングはしているのだ。
まあ、敵から逃走している時とかは無理でその間は朧気な記憶を頼りにして書いているからちょっと怪しいマップに仕上がってはいるがそれでも同じ場所に舞い戻っているなんてことは無いように見える。
ともかく、まだまだダンジョンからの脱出には苦労しそうだな。
とりあえず腹が減ってきたし携帯食料を食べておこう。
「まっず」
こりゃ携帯食料も今度からそれなりに高くても美味しいものを用意したほうが良さそう。
マジでまずい。
とはいえここまで来て餓死など嫌なので一気に口に放り込んで飲み込んだ。
うげえ、後味も悪い。
……さて、出口を探そうか。
それからダンジョン内をひた歩き、敵を察知すれば隠れ、時には全力で逃走。
一度三方向から迫られてやばいって時もあったが煙幕玉を使ってなんとか切り抜けた。
そうしてようやくそれっぽい広場に辿り着いた。
そこは今までの岩壁に囲まれた空洞のような広場ではなく、人工的に整備された部屋であった。
壁はレンガで組まれていて、床一面に魔法陣が描かれている。
もしかしたら罠かもしれない。
もしかしたら強制ボス戦かもしれない。
色々想像できるが悩んでいても仕方ないので魔法陣の中心へと向かう。
そして中心に立ったところで魔法陣が輝き、同時にウィンドウが表示された。
行き先を指定してください。
次の階層/地上
ウィンドウにはそう表示されていた。
どうやらこの魔方陣が階層を移動する手段になるらしい。
覚えておこう。
俺は数秒魔法陣やこの部屋の造りを見てからウィンドウに視線を戻し、迷うこと無く地上を選択。
すると強い光に飲み込まれたかと思えば俺はダンジョンの入口前に立っていた。
よかった地上という名のどっかのダンジョンに転送されるなんてことはなかったようだ。
ではさっさか街へ戻りましょう。
マップから街を選択してレッツファストトラベルだ。




