表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRゲームで遊ぼう  作者: イントレット
VRシミュレーションシリーズ
49/72

VRSS モンスターライフエディション 前編

こちらは前編です。

後編を20時半頃に投稿します。

 以前別のプレイログで触れたが、VRゲームでは現実と異なる姿、体格のアバターはあまり使わないほうがいいことになっている。


 あくまでも裏付けがあることではなくなるべくやめた方がいいという程度ものなのだが、万が一を恐れてか多くのゲームは現実そのままのアバターでプレイするようになっている。

 ちなみに最初に公開したプレイログであるレジェンドオブシルバはほとんどの人にとっては現実と全くことなるアバターを強制するゲームだ。

 なにせあれは主人公シルバに乗り移るような形で物語が進められるからな。


 当然俺にとっても現実の肉体と大きく異なる姿だったが最後までプレイしても認識の齟齬だとかはまったく感じなかった。

 そのことからもアバターの違いによる問題なんてのは気にしすぎだって分かるというものだろう。


 さて、なぜこう現実と異なるアバターについて長々と前置きを並べたのかといえば、それはもちろんこれからプレイするゲームが現実と異なるアバターを使用するものだからである。

 というよりはそれこそがこのゲームの本質かもしれない。

 タイトルは「VRSS モンスターライフエディション」――前回のプレイログで挙げた転生エディションと同じVRシミュレーションシリーズの一つである。


 こちらのモンスターライフ、通称モン生ではその名の通り、モンスターとなって生活するシミュレーションとなっているが、こちらは転生エディションとは違ってクリアやらエピローグがあったりすることはなく飽きるまでモンスターの生活を満喫できる。

 VRSSは結構種類があるのだがエディション毎にシステムが構成されているのである。


 むしろなぜ転生エディションはあの方式にしたのか謎である。

 あれはあれで面白いとは思うけど。


 ともあれ、こちらのモン生でプレイ前に設定できる項目は転生と比べると随分と少ない。

 設定できるのはどのモンスターで遊ぶか、どのような場所からスタートするか、どれくらいの難易度にするかの3つだけ。

 難易度はそのままの意味で、敵対種族のレベルが高めになったりする。

 またモンスターによって得手不得手な地形・環境というのが存在するので場所指定はわりと序盤の難易度に大きく関わってくるので結構大事な設定だ。


 とりあえず今回は、


 種族:スライム


 開始位置:洞窟(比較的安全)


 難易度:普通


 という設定でプレイすることにする。

 ではプレイスタートと行こう。





 プレイを開始すると数秒視界が暗転したかと思えば、次の瞬間には俺は洞窟の中にいた。

 明かりは一切無いのにそう断定できるのは、周囲の様子を感じることができるからだ。

 見えなくともなんとなく分かる。

 でも分かるのは周囲の地形などであって色とかはわからない。

 というか視覚そのものが無いっぽい。


 もう少し集中して周囲の地形等探るとモゾモゾと動く物体があちこちにある。

 その動きは非常に遅いが、なんとなく同族な気がするな。

 大きさは……っと、比較になるものがないから分からんな。

 まず自身がどんなものか確認しないと。


 そうして今更ながら自身へ意識を向ける。

 スライムなのだから当たり前だけど慣れ親しんだ手足の感覚がなかった。

 けど不思議と喪失感はない。

 なんとなくからだの動かしかたも分かる。

 まるでそれが当たり前というばかりに感覚に違和感はないな。


 ふむ……この感覚だと周囲で動くモノと俺はほとんど同じ大きさらしいな。

 やっぱり同族だろう。

 ちなみにスライムの詳しい造形はまんまるぽよんぽよんのナイスボディ……などではない。

 アメーバのような姿である。

 どろどろのねちゃねちゃである。

 ヘーテルにまとわりつきたい。


 さて、同族の彼らは何をしているのか改めてよく確認してみると、地面の苔を取り込んで消化しているようだ。

 ただただ触れるそばから取り込んでいるようだしフラフラとあっちこっちにランダムに動く姿から知能は感じられないな。

 ま、俺もひとまず辺りの苔を取り込みまくってみるとしよう。


 というわけでその後俺は同族にはない知能を活かして効率的に苔を取り込んでいった。

 気分は古い小型自動掃除機である。





 で、とりあえず五メートル四方で苔をきれいに取り込み消化しました。

 今の俺の姿は相変わらずどろっどろのねちゃねちゃだ。

 むしろぬちゃあ……である。

 ただし、大きさに変化がある。

 二回り大きくなりました。

 効率悪い同族と比べて1.5倍くらい大きい。

 より近づいて大きさを比較すれば結構な差がついていることが分かる……って、近づきすぎて接触してしまっ……げっ!?


 このやろう躊躇なくマイボディを取り込んで来やがったな!

 そっちがその気ならこちらもてめえが集めた養分根こそぎ奪ってやるぜ!

 ということで取り込み開始じゃい!


 我が身が削られていくのが分かるがそれ以上の速さで同族の身を取り込んでいるのが分かる。

 どうやら大きくなった分だけ速く消化できるようだ。


 結局同族との食い合いにあっさり勝利。

 同族を完全に取り込んでやりました。

 完全に取り込んだことで同族に食われて削られた部分は即座に回復し大きさも一回り大きくなった。

 苔食うよりも効率いいな?


 周りにはまだ多くの同族の姿がある。






 ……ニタァ







 なんということでしょう、周囲から同族が消えてしまった。

 どういうわけか俺の体はかなり肥大化している。

 これは何者かに駆逐された同族たちが力を貸してくれているに違いない。

 ありがとう同族たち。

 お前らのことは忘れない。


 んなことどうでもいいから苔食べようっと。

 まだまだ周囲には苔がいっぱいあるからな。


 しかし同族たちが消えた今、この空間はやや広いな。

 大きくなったとはいえなかなか時間がかかりそうだ。

 他の場所へ移動してもいいのだろうけどなんとなくこの空間の苔をきれいさっぱり取り込んでしまいたい。


 何かしら効率を上げる方法はないか?

 思い出せ……スライムと言えばなんだ?

 服だけ溶かしたり、身体を操り触手にしたり、性感帯を鋭敏にしたりだ!


 違う!

 増殖とか分裂だろう!


 できるだろうか?

 考えるよりもとりあえず実行しよう。

 こう……真ん中で自分の身体を分けるように……おっいい感じだ。


 やってみれば案外うまくいって俺の体は二つに分かれた。

 片方が消えるってこともないし分裂した片方が知能のない同族になるってこともなかった。

 感覚的には俺の体が二つ同時にあってそれぞれ自由に動かせる感じだ。

 摩訶不思議である。


 ともかく無事分裂はできたし自由に動かせることもわかったのでさらに分裂して最終的には五つに分かれた。

 そしてそれぞれ壁の端で間隔を空けつつ一列になり一斉に己の字を描くように動き、この空間の苔を取り込み始めた。

 全個体が同じ動きになるので制御もかなり楽だ。







 しばらくしてからぬちゃあ……っと俺は分体と合体した。

 辺りにあった苔はきれいさっぱりなくなって岩壁が剥き出しになっている。

 マイボディは、成熟したゾウガメほどの大きさになった。

 大きくなっただけでなく体の粘性も一際強くなったようである。

 擬音で表すならねたぁ~って感じだ。


 さて苔も無くなったしそろそろこの空間を後にして移動しよう。

 何かほどよいモンスターでもいないかな。

 苔とかよりもモンスター取り込んだほうが成長しやすそうだし。

 ゆくゆくは世界を食らいつくしてやるのが取りあえずの野望である。


 まあ、無理か。

 可能かもしれんけど相応の時間はかかるだろうからノーサンキューだ。

 時間はいっぱいあるけれどだからといって無駄に消費する必要も無い。

 手広く、浅く、たまーに深く。

 そんな感じでこれからも生きていこう。


 にしても遅い。

 何がって俺の移動速度が。

 やっぱこうねたぁっとした粘着質なボディが駄目だな。

 ある程度移動に影響ないように制御もできるけどそれでも地面に少し張り付いてしまう。

 造形がドロドロとしているというのも接地面積を増やして移動を遅くしている要因だろう。


 さすが不定形粘性生物スライムといったところか。

 よし粘着質なのはこれ以上どうにもならんし、形をなんとかしてみよう。

 こう……中心に身体を集める感じでググッと力を込めて見る。


 ――よし、少しずつ集まってドロドロしたボディが少しずつまん丸としてきたぞ。

 これで俺も不気味なねちゃねちゃボディスライムからデフォルメされてかわいい愛され系スライムの仲間入りか。

 ついでに圧縮してしまえ。

 ゾウガメボディはやや大きい。

 やはりバスケットボールくらいが可愛らしいだろうな!


 そうして出来上がったのは深緑の楕円形のなんかすっげえねちゃねちゃとしているんだろうなと思える不気味な物体だった。

 深緑とか言ったけどほぼ黒である。

 色わからないはずだろうって?


 普通にスライムの感覚で把握したらそうなのだが、自身の姿くらいは実はウィンドウから確認できた。

 ま、ゲームだしそれぐらいはできていいだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ