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VRゲームで遊ぼう  作者: イントレット
サモンパートナーオンライン(VRMMO)
37/72

第四話 北の森

 北の森目指して歩いている途中パーティー内で軽い雑談を交わしていた。

 そして、ふと森の中の小さい広場といった様子の場所へと出たそんな時、先頭を歩いていたユウがこちらを向き人をからかうような笑みを浮かべてこちらへ話しかけてきた。


「ねー、二人ってもしかして付き合ってんのー?」

「ちょっユウ!」


 ユウの問いが失礼だと感じたのかカイが慌てふためく。

 別にそんなこと聞かれてもなんとも思わないので気にすること無いのに。


「んー付き合ってるっていうか……」

「一応カップルではあるの……かしら?」

「答えたくないならいいけどそれならそれでその中途半端なのやめてよ!」


 で、問われた問いに対して俺もヘーテルもいまいちハッキリしない答えを返すが、ユウは中途半端なその答えが気に入らないようだ。


「いや、俗に言う彼氏彼女じゃないんだよ」

「そう! ヒュージは私の夫で私はヒュージのお嫁さんなのよ! でも、一応夫婦も付き合ってるといえば付き合ってるとも言えるから答えに迷うわ」

「と、まあそういうことだ」


 答えてる内にヘーテルのテンションが一瞬あがった。

 なぜ、俺たちが夫婦だと宣言するとき無駄に活き活きとしたのか。

 すぐに落ち着いたけど何故か腕に抱きついてきている。

 相変わらずその辺りはオープンなヘーテルには参るぜ。


 こうしてプレイログに残して確認すると俺も大概か、って思ったけどまあ、仕方ないよね!

 超かわいいお嫁さんできたらもう自慢するしか無いし?


「へ、へえ……な、なあ兄ちゃん。大人の人って皆こうなのかな?」

「いやあ……わりと特殊な例なんじゃないかなー。……これに懲りたらノリでああいう質問はするなよ?」

「うん……あんな風に答えられたらこっちが困るし、もうしない」


 突如やってきたヘーテルとの触れ合いタイムに身を任せている横で仲良し兄弟が密談している。

 まあ、残念ながら聞こえてたから密談になってないけどな。

 そして、別に特殊な例だとか言われても俺は気にしない。

 自覚はあるからな!


「っ! ヘーテル!」

「来なさい、フラル!」

「「えっ?」」


 そこで周囲の異変に気づいた俺はヘーテルに声をかけつつも体内の魔力を練り上げて掌へと集中させる。

 カイとユウは突然の俺たちの変化に困惑しているようだが俺はそんな彼らの方向へと踏み出した。


「え、ちょっと?」

「な、なんだよ!?」


 俺の行動に一層驚く二人を通り過ぎ、その後ろに迫っていた影に向かって掌を向け、集中させた魔力を一気に放出する。


「ショック!」

「ガァ!?」


 それにより発動した無属性魔法のショックの効果により、その影は弾かれるように吹き飛び小さく声を上げた。

 その声にようやくカイもユウもモンスターの襲撃であることを悟り、すぐに武器を構える。

 結構切り替えは速くて何よりだ。

 同時に後ろの草陰から何匹ものモンスター……ガガウルフが飛び出してくる音がした。

 名前が分かったのは協会で姿絵を見ていたからだ。

 それをヘーテルが鍛冶の槌で迎撃し、フラルが追い打ちをかけた。


「っと、顕現せよ、ミラージ!」

「ガル!?」


 そうして周囲の様子を見ていた俺の隙をつくように先ほど吹き飛ばしたガガウルフが体勢を立て直し、こちらへ走ってきていたの視界の隅で確認し、ミラージを喚び出す。

 現れたミラージが放ったのはサッカーボール大の光の球。

 それがガガウルフの眼前に固定されるように漂い、ガガウルフが混乱したような鳴き声をあげた。


 見たところ何の攻撃能力もないその光の球はただただガガウルフの眼前に固定されるのみ。

 困惑していたガガウルフもそれを振り払おうと暴れるがその動きに合わせるようにして光の球は眼前から離れない。

 そうして翻弄されるガガウルフは隙だらけだ。

 魔力を掌に集め、地面に手を付いて魔力を流し込む。


「アースニードル!」

「ガゥ!?」


 土属性魔法のアースニードルにより、ガガウルフの立つ地面の一部が変形し、鋭利な針となってガガウルフを貫く。


「ショック!」

「っ!?」

 未だ存在値が残っているようなので素早く駆け寄ってガガウルフの背中に手を当てて、即座にショックを放つことで、腹半ばまで刺さっていた岩の針を完全に貫通させると今度こそ息絶えたようだ。

 そうして俺がその一体と戦っている間に、ヘーテルや、カイとユウたちもそれぞれガガウルフを倒したようで、メンバーを確認すれば他にいないか周囲を警戒していた。

 だが、今回の襲撃はそれだけだったようで各々警戒を解く。


「いやあ、散々来なかったのに突然でてくるんだな」

「不自然に森の中にぽっかり開いたこの広場が関係してそうね」


 俺の呟きにヘーテルが推測を述べる。

 確かに、突然森が途切れて広場になっているなんておかしな話なのだ。

 普通のゲームならそれもあるだろうが、この世界が生きているというのならこんな広場など木々が埋め尽くして当然だ。


「確かモンスターは魔力溜まりから発生するとかなんとかだっけ」

「ああ、協会で受けた説明でそんなこと言ってましたね」

「えーでもそれってモンスターがいなくならないようにっている設定みたいなもんだろ? 今は関係なくない?」


 だから協会での説明を思い出しながら口に出すとカイがそれを肯定してきた。

 ユウはその説明がそういう設定で関係ないと思っているようだ。


「いや、実際さっきはお前らの背後にあいつが現れたからこそ俺もすぐ行動したわけだし。多分ここがその魔力溜まりってやつなんだろ」

「そうだったのか? あ、じゃあ助けてもらったのか、俺。ありがとう!」

「おう、ちゃんと礼を言えるのはえらいな! けどユウもその後がんばったろ? だから何も気にすることねえよ。つか俺もありがとうな」

「そっか! けど、俺中学生だぜ? 礼を言ったらえらいとか、当たり前の事やって褒められても嬉しくねえよ」

「そりゃすまんな」


 なので、なぜ今魔力溜まりについて話したのかを言えば、ユウは先程の状況は助けられたのだと気づき、即座に礼を言ってきた。

 なかなか好ましい態度を褒めつつこちらも礼を返したのだが、そんなこと褒められても嬉しくはないらしい。

 当たり前の事か。

 随分と真っ直ぐな子である。


「まあ、話を戻すとだ。ここが広場なのも魔力溜まりだからじゃないかってことだ」

「魔力溜まりには草木が生えないっていうのはよくある設定ね」

「ホント身も蓋もないことを連発するよな」


 俺もヘーテルのことを笑えないくらい身も蓋もないメタ思考の推理を展開しているのであれなのだが、ハッキリは言ってないのでセーフだ。

 カイも横で苦笑している。


「じゃあここで待ってたらモンスターとすぐ戦えるのか!」

「いや、それだったらここに来るまでにもっと戦闘があってもいいと思うから無駄だろうな。いわゆるリポップタイムがかなり長いと思う」

「ってことは予定通り北の森を目指すのかな?」

「ああ、そうしたほうがいいだろう」


 俺の説明というか推測に、ユウが期待した様子で反応するがそれには首をふる。

 結局、当初の予定通り北の森を目指すことで決まりメンバーもそれに異言はないようだ。

 尚、戦利品は自動で均等分配されていた。

 うーんこの辺りはシステマチックだ。

 ついでに歩きながらステータスも確認したら魂力が1上がりスキルも魔法適正・風と拘束術、糸使い以外がLv2になっていた。

 どういう感じでステータスが増えてるのかわからんが少なくとも全ステ+1はされているようだ。

 魔力適合率と素早さだけは+2されている。

 丁度スキルで補正してあるやつだからスキルLvアップによるものだろう。

 そして使ってないスキルについてはLvアップしてないのでこれからは戦闘時になるべくスキルを満遍なく使ったほうが良さそうだ。


「鍛冶スキルが上がってる……これで攻撃したこともスキルの範囲内ってことね」

「調合持ってたよな? 道中採取してみればどうだ? スキルLv上がるかもしれないぞ」

「全部同じ雑草よ? 調合に使える薬草のたぐいであればそれを見分ける為の特徴があるはずだからここらの雑草と違うものがあれば採取するけど……ないわね。それっぽいのも一応あるけど毟られてるわ」

「分かるのか?」

「そりゃあね。伊達に生産プレイしてないもの」


 いや、ざっと見渡した程度で見分けるって相当すごくない?

 見逃してる素材いろいろあるんじゃないの?

 いやでも、毟られてる痕跡とか分かるようだしちゃんと見分けてるのかもしれない。


「あ、でもいまの行動で調合と生産マスタリーが上がったわね」

「じゃあ別にスキルのLv上げに戦闘は必要ないのかもな」

「でも鍛冶は一度殴っただけでLv上がってこっちはここまで何度か同じ行動してやっとだから戦闘のほうが効率はよさそうよ」


 俺の推測をヘーテルが補足してくれる。

 その考えになるほどと納得するが無意味ではないだろうってことで俺は適当に木々に狙いをつけて風魔法のウィンドボールをぶつけておく。


「二人共すっごいテキパキとしてますね」

「実はテスターだったんじゃないの?」


 そうしてヘーテルと会話して立てた推論に従って行動しているとカイとユウにそんなことを言われた。

 そんなに変だろうか?

 ちょっとしたことからいろいろと妄想膨らませつつも解明していくのはやっていて楽しいと思うが。

 それにそうすることで効率化できるはずだし。

 そう、説明してみたのだが、


「ゲームでそんな面倒なこと考えたくない!」

「僕もちょっとそういう発想はありませんでした」


 と、いうことだった。

 それでもカイのほうはちょっと考え始めたし少し思うところもあったのかもしれない。

 ユウはそういった思考を捨てつつもハンマーをいろいろな構えで振り回し始めた。

 分からないけどとりあえず試しておこうってところか。

 ある意味では素直にこのゲームを楽しんでプレイしているといった感じだな。


 そんな感じで、やや騒がしくしながらも俺たちは北の森目指して進みようやく辿り着いたのだった。





「ショック! からのウィンドボール!」

「よっしゃあ! スイングインパクト!」


 北の森に辿り着いてから少しして、俺たちは戦闘に入っていた。

 現れたのは一匹だったが情報通りなかなか強力なモンスターで俺たちは全員で挑むことを強いられていた。


 その熊型のモンスター、グラーグベアに続けざまに俺が魔法を当てて体勢を崩したところでユウが飛び出して勢いのある横振りの武技を繰り出す。

 その威力はそれなりのもので更にグラーグベアの体勢を崩していたが、どうも分厚い毛皮に阻まれているからか存在値はあまり削れていなかった。


「兄ちゃん!」

「スラッシュ!」


 とはいえ、ユウもそれは想定していたようですぐに後ろに引いてカイとポジションを入れ替えていた。

 そして、大きく体勢を崩したグラーグベアに今度はカイが駆け寄って武技を使いグラーグベアの脇腹辺りを斬り裂いた。


「バイド、ゴー!」

「グラァアア!?」


 それを見てユウが自身の従魔に指示をだし攻撃させる。

 バイドは蛇みたいな姿の従魔で、地面をするすると這っていったかと思うとグラーグベアの脇腹の傷口辺りに噛み付いた。

 だが、その痛みにグラーグベアが暴れたことでバイドは宙を舞い地面に叩きつけられた。

 大したダメージは負っていなかったようでバイドはユウの元へと戻りユウの腕に巻き付いていった。


「ヒール!」

「! ありがとう!」

「どういたしまして」


 そんなバイドへとヘーテルがヒールをかければバイドの存在値は回復し心なしか元気になった。

 その様子を視界の隅で捉えつつ、グラーグベアを見れば何やら調子が悪そうだ。

 脇腹の傷がというよりも別の何かで苦しんでいるようである。

 どうやらバイドの牙には毒があったようだな。


「ミラージ!」


 俺の言葉にミラージの存在が朧気に霞んでいく。

 そして同時に周囲に薄い霧みたいなものが発生しソレが集まってグラーグベアの顔へと集まりその視界を塞いだ。


「ヴァル、宿れ!」


 そしてカイが自身の従魔であるヴァルに声をかけ簡潔な指示を出す。

 ヴァルは火がそのまま球体状になったような従魔でその種族はエレメンタルコアというらしい。

 なんとなく俺のミラージの種族と近い種族っぽい

 ヴァルはカイの呼びかけに反応し、カイの持つ剣へと入り込んでいく。

 するとカイの剣はほのかに赤く染まった。


「バーンスラッシュ!」

「グァアアアアアアアア!?」


 その状態で先程のスラッシュと同じような武技を発動するとその一気に剣が炎におおわれて、斬撃と炎撃を同時に浴びせていた。

 この攻撃にグラーグベアは悶絶し、ひたすらに暴れ始める。

 未だ視界を塞がれているからめちゃくちゃでだからこそユウもカイも近づけない。


「フラル、ヒュージに合わせなさい」

「頼むぜフラル」


 ならばここは魔法使いの俺の出番だろう。

 ただ、覚えた魔法は攻撃能力に若干乏しい。

 ショックは衝撃により相手を吹き飛ばす魔法でウィンドボールはボール状の風属性の魔力をぶつけ、風圧で吹き飛ばすものと似た性質の魔法だし、アースニードルではあの毛皮の防御を抜けない。

 だからこそフラルに助けてもらうことにした。


「ウィンドボール!」


 そして俺がウィンドボールを放つとそれに合わせてフラルが火球を放つ。

 丁度グラーグベアに着弾するときに混ざり合うように放たれたそれはウィンドボールと合わさって火力を爆発的に上げてグラーグベアを飲み込み、そのままグラーグベアは地に倒れたのだった。

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