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VRゲームで遊ぼう  作者: イントレット
サモンパートナーオンライン(VRMMO)
34/72

第一話 ゲーム開始

試験的に今までのゲームタイトルだけだったサブタイをやめてみます。

プレイしているゲームのタイトルを今までどおり章題にして、サブタイは普通の、その話の内容を示唆したものにすることにします。


あと、見切り発車です。ごめんなさい。

 寒さがますます厳しいこの頃。

 以前プレイログにも残したファルクールもすべての隠し要素を回収し終わり、R&Rもほぼ最強装備が揃ってたまに無双を楽しむだけとなってきたのでそろそろ新しいゲームでもやろうかなという気分になったところで突然ヘーテルからゲームのDLコードを渡された。


「やるわよ」

「仰せのままに」


 言われた言葉は短いものだったが日々の会話からお互いに以心伝心であるために俺は二つ返事で渡されたDLコードを使い即座にゲームのダウンロードを開始した。

 それから20分後にはダウンロード及び、インストールが完了したゲームのタイトルは『サモンパートナーオンライン』というもの。

 確か今日の夜7時からサービスが開始される新作VRMMORPGで、前評判もかなり良く、ゲーマーたちの間で結構話題にされることの多かった正統派のMMOだったはずだ。

 当然発売前から人気でソフトを入手するのにすごい苦労が……あるわけがない。

 VRゲーム溢れる昨今においてソフトはパッケージではなくダウンロードが主体だ。

 MMOの場合はたくさんの人が快適にプレイできるサーバーが必要となりその許容量に応じて制限されることも昔はあったようだが今の時代ではそれすらも問題はない。

 技術の進化というのは凄まじいもので、今では個人ですら10万人が接続しても問題ないサーバーを用意できるのだ。


 かつて小説の世界にのみ存在したVRMMOではやたらと手に入れるのが大変だったりソフトの数が少なかったりしたようだがVR技術が実現しVRゲームが溢れるこの時代においてはどんな人気タイトルも当然のように入手することができ、プレイすることができる。

 そんな当たり前を享受できることに感謝感謝。


 さて、サービス開始である7時までまだまだ時間があるがどうやら事前キャラクリエイトができるようなので早速起動しようと思う。

 っと、その前にヘーテルと共に行動することになるのだから彼女のプレイ方針を聞いておくことにしよう。


「生産系は当然として戦闘時はどうする?」

「支援と回復に専念させてもらうかな。ソロでも『パートナー』にアタッカーをやってもらえばいいし、アイテムによる攻撃も可能だしね」

「ま、予想通りだな」


 返ってきたのは大体予想通りのもので、戦闘時はヒーラーでプレイするらしい。

 パートナーというのはタイトルからもわかると思うがゲームで最初に召喚する存在のことだ。

 このゲームではプレイヤーは一体のパートナーを召喚し、パートナーと共に成長していくようになっているのである。

 どんなパートナーが召喚されるかはランダムだが、ある程度条件を絞り込むこともできるし召喚後の成長方針によっても能力が変わってくるので自分の趣向とは違うパートナーになって気落ちするってこともない。

 また、召喚するのはキャラクリエイトで最初にすることなので、先に書いたのとは逆に完全にランダムで召喚し、現れたパートナーに合わせて自身のキャラクターの能力を決めるといったプレイも可能なので様々なプレイスタイルで遊ぶことができる。


「んじゃ、ちょっくらキャラ作ってくる」

「お好きにどうぞ。私はその間あんたの顔でアートでも作っておくわ」

「やめい」


 ともあれ、ヘーテルのキャラの方針は聞いたので俺も早速自身のキャラとパートナーを作ることにする。

 そう思い彼女にこれからVRへ入ると断りを入れれば悪戯めいた微笑みを浮かべて不穏なことを言ってきた。

 ぜひやめていただきたい。

 そう思いつつ俺の意識は現実からVR世界へと移っていった。





《サモンパートナーオンラインへようこそ。キャラクターの事前作成を開始します》


 そんな声がしたので目を開けば白い壁に囲まれ床には大きな魔法陣が描かれた部屋の中だった。

 声は傍に浮かんでいる光の球からのようである。


《プレイヤーネームを設定してください》


 まず最初に設定するのは名前のようだ。

 まあ当然か。

 ウィンドウやキーボードは出てこないのでヒュージとするように思考を固めれば無事設定が完了した。

 どうやらこのゲームでは思考操作のみでウィンドウやタッチパネルによる操作は完全に廃されているようだ。

 なかなか思い切ったものだと思う。


《アバターの設定をしてください》


 今度は見た目の設定なのだがVRチップに保存されている測定データから現実のものを多少体格などを最適化された状態で再現されたものが用意されていて、変えられるのは髪型とか各部の色を変えられる程度のようだ。

 まあ、実のところ現実の姿と大きく異るアバターを作れるゲームのほうが圧倒的に少ないのだが。

 なんでも現実の姿と異なるアバターを使っていると齟齬が生じていろいろ問題があるのだとか。

 とはいえ人間にはない部位を再現したゲームもあるわけで、そのゲームのプレイヤーが現実で違和感を覚えているなんて報告は殆ど無いのだから根拠としては薄いのだが、念には念を入れておくことは決して無駄ではないだろう。


 ともあれ、そういった理由もあって昨今ではネットに顔を晒す行為に対して忌避感を持つものは驚くべきほどに少ない。

 今ではネットというのはVR空間に置き換えられているためにネットで顔を晒すのも街を出歩いて顔を晒すのも変わりないという認識が広まっているからだ。

 VR技術の存在しない大昔にはネットに顔を晒すのはとても危険だと言われていたらしいが時代は変わるってことなのだろう。


 そんな話は横においておきアバターを設定していく。

 まあ、普段の髪型を選択し色は赤みがかった茶髪にするだけでいいかな。


《アバターの設定が完了しました》


《召喚の儀を行います》


《魔法陣の中心に立ち、詠唱してください》


 アバターの設定が終わると今度はパートナーとなる存在を召喚することになる。

 アナウンスと同時に脳裏に詠唱すべき呪文が浮かぶ。

 とはいっても完全に決められた呪文というわけではなく呪文を構成する際のハウツーが示された感じだった。

 この呪文によって召喚されるパートナーがどのような能力を持ったものか指定できるようだ。


 それにしてもまさかオリジナル呪文の作成を求められるとはな。

 人によっては悶絶モノだ。

 俺はこういうのは開き直ってノリノリでやるタイプなので問題はない。

 どのようなパートナーを召喚するか固め、それにそって呪文を考える。


 ……よし。


「我が声に応え給え、我が求めに応じ給え。求めるは幻影。存在するものが存在せず、存在しないものが存在する虚ろの者。我が声に応え我が求めに応じ我が前にその姿を示せ、《サモンパートナー》」


 少し集中して作った呪文を詠唱する。

 思い浮かべるのは幻影や惑わしによって相手を翻弄する姿。

 詠唱の完了と同時に足元の魔法陣が一際輝くと同時に辺りに光の粒子が浮かび上がってきた。

 その粒子は俺の頭上へ集まり一つになっていく。

 そうしてバスケットボール大の光球となったかと思えばソレはすぐに花火のように散り、中から銀色の球体が現れた。

 その球体はなんというか流動的で、まるで水銀が球体となって浮いているかのようだ。

 また、じっと見ていると球体の輪郭がぼやけていくようで空間とその球体の境界が酷く曖昧に感じられる。


 どうやらこの球体こそが俺が召喚したパートナーであるようでミスティックコアという種族であるといった情報が脳裏に浮かんできた。

 コレに名をつけることで契約が完了するらしい。


「――よし。お前の名は『ミラージ』だ」


 語源はミラージュからの安直なものだが、目の前の球体はその名前に特に嫌がるわけでもなく受け入れてくれたのがなんとなく分かる。

 ミラージは言葉をしゃべることはおろか、何かしらの鳴き声すらも上げることができず、ジェスチャーすらも無いがそれでも不思議と何を思っているかが伝わってくる。

 これがパートナーということなのだろう。


《召喚の儀が完了しました》


《プレイヤーの初期能力を設定してください》


 パートナーを召喚したらいよいよ俺自身の初期能力の設定だ。

 アナウンスと同時に初期に選べるスキル一覧が脳裏に浮かんできた。

 一応HPやらSTRやらのステータスもあるようだが、そちらは自由に変えることはできずどうやらスキルの構成によってステータスが変動するようだ。

 そして初期に設定できるスキルの数は10個までで、同時に有効化できるスキルの数も10個のようだ。

 プレイ後に新たに入手できるスキルは一度控えスキルとして保持されそのスキルを有効化するにはソレまで有効化していたスキルと入れ替える必要があるらしい。

 入れ替えは街や安全地帯でコストなく入れ替えることができる他、同時に有効化できるスキル数も何らかのアイテムを使って増やすことが可能であるようだ。

 じゃあ初期スキル自体はそこまで考える必要がないのかと思うかもしれないが、初期に選んだ10個のスキルは補正がかかるようで、プレイ後に入手するスキルよりもスキルの熟練度が上昇しやすいようになっている。

 必然的にこの初期スキル設定がキャラのビルドを大きく左右すると言っても過言ではないだろう。

 

 そんなスキルについての前置きもこれくらいにして、俺がどんな構成にするかだがここは魔法型で行こうと思う。

 思えば、過去にプレイしたものは基本的に物理で殴るかコソコソと隠れるかだった。

 ここらでVR技術とともにもたらされた魔法に触れていこう。

 そんなわけで魔法型にするならとるべきだろうと思えるスキルを吟味して選び、キャラ作成を終えた。






 そして時間は過ぎて夜7時。

 サービスが開始される10分前から俺とヘーテルはゲームを起動していたため、開始直後にスタート地点である街の一つへと飛ばされた。

 街の一つ、と言っているようにこのゲームでは初期スタート地点が複数あって、プレイヤーはランダムに選ばれた街からスタートすることになっている。

 ただ、それだとリアルの友人たちと一緒に遊べない為、VRチップのオープンIDを利用した事前パーティー登録なるシステムが存在し、そのシステムを利用することで事前パーティーを組んだ者同士は必ず同じスタート地点からスタートできるようになっていた。

 当然ながら俺とヘーテルはこのシステムによりパーティーを組んでいたので飛ばされた先は同じ場所だった。


「ようやくサービス開始か」

「まずは……どっか落ち着ける場所にでも行きましょ」


 中央に綺麗な噴水がある広場を見て呟いた俺の言葉に反応してか、ヘーテルがとりあえず場所を移動しようと提案してきた。

 その言葉に周囲に目を向ければ続々とプレイヤーが現れては我先にとかけ出す姿が目に映る。

 かといってみんながみんながそうではなく中にはのんびりと広場に留まる人がいて、いくらスタート地点が複数あるといえどもこの広場もすぐに人で埋まりそうなその様子に納得しヘーテルに頷くことで意思を伝えれば彼女も頷きを返して広場から離れるように歩き出す。

 俺は後ろからやや早足で彼女に追いつくと、そのまま流れるように少し屈み、右腕で彼女の肩を抱き後ろに引くと同時に左腕を膝裏のちょっと上辺りに当てて一気に持ち上げた。

 いわゆるお姫様抱っこである。


「っ! ……なにしてんの?」


 突然抱き抱えられたヘーテルは当然驚き、次いで眉間にしわを寄せてこちらを睨んできた。

 ただ頬が少し赤くなっている。

 かわいい。


「……ごめん。普通に癖でやっちまった」


 かわいいがいつまでも睨まれていては堪らないのですぐに弁明する。

 実際嘘ではなく現実ではことあるごとにこうしてヘーテルを抱き上げて補助しているのだ。

 ここ最近は一緒にVRゲームをプレイすることがなかったのでVR世界ではその必要がなかったことをすっかり忘れていた。


「……ばっかじゃないの? まあ、仕方ないから許してあげる。けどこの状況はなんとかしないとね」


 そう説明すればヘーテルは呆れつつも一応理解を示して許してくれたが、彼女が言うように状況はまずい。

 なんせ公衆の面前でお姫様抱っこしているのだ。

 癖で抱っこしてすぐに何やってんだと気づいて立ち止まってしまったのがさらに状況を悪くしている。

 周囲の視線が痛いです。


「さて、こうなったらもう仕方ないし、いっそ開き直りましょうか」

「開き直るって……!?」


 そうして周囲の視線に辟易し、もうささっとこの場を去ろうとしたところで恥らいの消えた自信満々ないつものヘーテルの声に反応して視線を移せば既に頬の赤みは引いていて口元には笑みが浮かんでいた。

 そして彼女の提案がどういうことなのか詳しく聞こうとしたところで両頬をがっちりと掴まれたかと思うと思いっきりキスされて驚きのあまり俺は固まった。


「さあ! まずは落ち着ける場所へと移るわよ! ちゃっちゃと私をエスコートなさい!」

「ちょっ……あいあい、分かったよ! 開き直ればいいんだろ!? くそ! 愛してるぞちくしょうめええ!」

「ハッハッハッハ! その調子よ! 私も愛してるわ!」


 それから彼女は馬鹿みたいに元気になって見惚れるような笑顔でさっさと移動しようと提言してきた。

 おまけにお姫様抱っこのままで降りる気もさらさらないのか俺の首にガッチリと腕を引っ掛けた状態でである。

 それはもう視線を集める。

 殺気すら感じる。

 それに動揺するのも一瞬のことで、俺は彼女が言うように開き直ることにした。

 開き直りすぎてちょっと馬鹿なことを言った気がするが彼女は気にするでもなく笑ってそれにノッてきた。

 殺気が2割増しになった。


 そうして俺はヘーテルをお姫様抱っこしたまま全力ダッシュでその場を後にしたのだった。

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