アンハッピーニューイヤー
1月1日。
それは新年始まりの日であり、一般に元日と呼ばれる日である。
これから迎える新しい一年を祝い、多くの幸せが訪れるように祈りを捧げるとても大切な節目の日である。
一年の計は元旦にありと言われるほどにこの始まりの日というのは重要な事なのだ。
そんなめでたい日にやってきたのが奴らだった。
奴らは突如現れると新年を祝う人々を襲い始めた。
奴らの行いによってあらゆる建物が破壊され、多くの人々が傷つけられ、地は荒れて、風は酷く汚れ果てた。
人々は絶望した。
新年を迎えためでたい日に訪れた奴らに今後一年の暗雲を見て絶望したのだ。
だが、そんな人々を神は見捨てなかった。
八百万の神々は人々の中から一人選び、力を与えた。
奴ら――百八煩悩ズを倒す毎に少しずつ、けれども確実に力を得る事のできる能力を与えたのだ。
それだけではない。
神々は百八煩悩ズの行動を制限し、その破壊衝動を全て力を与えられた者へ向けられるように仕向け、更には相対するのは弱いのから一匹ずつという制約も課した。
更に神々の加護は続く。
弱いものから相対したとしても、それで強くなった分よりもずっと強い相手が出てくることも予想できた神々は、能力を保ったまま過去の自分に乗り移る力を与えたのだ。
コレにより強大な敵も過去に戻って弱い敵を何度も倒して力をつけることで打倒することができるようになった。
そんな加護を与えた神々は尚も不満だった。
本来なら直接対処してしまいたい。
だが、それは理に反してしまう。
現状ですら理に反しかけていてコレ以上の加護は世界を壊しかねない。
そして神々は思いついた。
選ばれた人間が百八煩悩ズと戦うのはいわば試練である。
試練をくぐり抜けたものに褒美を与えるのは神々の理に反することはないはずだと。
その思いつきは見事に成功し、勇者が百八煩悩ズを倒す度に相手の強さに応じた分だけポイントが手に入るようにすることができた。
そしてそのポイントを使うことで様々な支援を与えられるようにしたのだ。
神々もそれに喜んでいたが、ふと与えたはずの加護が消失していることに気づく。
消失したのは敵を倒した時に力が得られるという点だ。
神々は調節を誤って百八煩悩ズを倒すときに発生するエネルギーの全てをポイントにするように設定してしまっていたのだ。
だが、これはそこまで問題はなかった。
なぜならポイントを使って強化することが可能であったからだ。
兎にも角にも、人類の百八煩悩ズへの反攻は始まりの時を迎えたのであった。
というわけで、今回プレイするのはこの「アンハッピーニューイヤー」というゲームだ。
どんなゲームかといえばひたすら敵を倒すゲームだ。
もうプロローグ時点で設定だとかストーリーだとか突っ込みどころ満載であるが、とりあえずプレイしてみるとしよう。
ゲームを開始するとそこは街中だった。
なにやら人々がそれなり離れた位置から俺を見守るように周囲を取り囲んでいる。
「ボンノー!」
と、そこへ現れたのはええと……なんだよくわからんくっそ適当なフォルムをした……えっと……と、とにかく変な奴だった。
『選ばれし者よ! 目の前の者は百八煩悩ズの幹部の一柱、一煩悩に従う百八人の腹心の一人が放った百八人の刺客の内の一人である! 末端の末端ではあるが奴もまた百八煩悩ズの一員! さあ、これを倒し力をつけ、ゆくゆくは百八煩悩ズの全てを討滅するのだ!』
突然空から聞こえてきた声は多分神様からの声ってものなんだろうが、いろいろと物申したい。
物申したいが言ったところでどうせまともな返答はもらえないのだからとりあえずわかりやすくまとめてみよう。
百八煩悩ズはその名の通り百八人の幹部によってなる組織?らしい。
そして幹部につき百八人の腹心がいるらしい。
その腹心毎に刺客を百八人放ってきているらしい。
うむ。
バカじゃねえの!!
ふざけた設定に苛立ちを覚えた俺は目の前に現れたなんか変なフォルムの形容しがたい変なのへとその怒りをぶつけた。
「ボンノォォォ……」
その変なのは拳一発で変な鳴き声をあげて粒子となって消えてった。
視界隅に「+1P!」という数字が確認できる。
が、すぐに次の変なのが現れた。
どうやら別に何か場面が変わるとかはないようだ。
それを確認した俺は再び拳を叩きこんだが、今度は倒すのに2回殴る必要があった。
少しだけ敵が強くなったようである。
そうして繰り返していると倒すたびに敵を倒すのに必要な攻撃の回数は増え、一度に手に入るポイントの量も増えていった。
ポイントが50P溜まったところでポイント消費するための小さなウィンドウが現れた。
選べるのは一番上の「武器入手」しかなかったのでそれを選択すると、手元に剣が現れて、それで攻撃すると先程まで10回は殴らないと倒せなかった相手が5回で倒せるようになった。
攻撃力が2倍ってか。
尚、これまでに食らったダメージは無い。
どうも敵はこちらが5回攻撃する度に反撃してくるようなのだがその攻撃が酷くゆっくりしたもので回避することは容易だったからだ。
まあ、序盤だからそれも当然だとは思う。
そんなこんなで俺はその後も敵を倒しポイントを集め自己強化し更に敵を倒していった。
どれほどの時が経っただろうか。
既に百八煩悩ズの幹部級を一体倒し、今は二人目の幹部に従う百八人の腹心の内の半分を撃破したところだ。
既に俺の攻撃力は数値で言えば100万ぐらいのダメージを与えられるまでに成長し、なんか周囲を取り囲んでいる人々が一定間隔で結構なダメージのレーザーを放ってくれる感じになっている。
そんな状態で俺はなんというか酷く消耗していた。
消耗というか虚しくなっていた。
ひたすら何の面白みもない戦闘を繰り広げ攻撃力にまかせて敵を倒す。
なかなか倒せない敵が出てきたらやや弱い敵をひたすら倒しポイントを集め、自身を強化したり周囲からの攻撃支援を強化したりする。
それをひたすら繰り返しているのだ。
分かる人にはこのゲームがどんなゲームなのかもうわかっているだろう。
このゲームはいわゆるクリッカーゲームなのだ。
大昔に流行ったクッキーを無限に作る的なアレなゲームなのだ。
そしてこれはVRゲームである。
かつて昔の人がマウスと呼ばれる入力機器を連打してプレイしていたアレを自らの身体を動かすVRゲームで再現してしまったゲームがこの「アンハッピーニューイヤー」なのである。
ハッキリ言って苦痛だ。
というか、まとめていて一層辛くなってきたのでさっさとプレイ終了しよう。
さて、このクリッカーゲームというのはかつての時代においてはなにやらカルト的な人気を博していたようだし実際、多くの人が楽しんでプレイしていたようである。
だが、VRゲームにするにはこれ以上ないほどに不適切な代物だろう。
確かに少しずつ少しずつダメージなり入手金額なりの何らかの数字が上昇していくのはある種の面白さがあるかもしれない。
だが、VRゲームでこれをやった場合に感じるのは虚無だ。
「穴を掘り、掘った穴を埋める」という作業を繰り返すような拷問の末に得られるものと酷似したものだ。
いや、少なくとも穴を掘り、掘った穴を埋める作業を繰り返せばとりあえず筋力はつくのだから、それを踏まえればこのゲームはもっとひどい何かを得られる。
あるいは何も得られない。
そんな代物だ。
元日だからとこんなゲームを開発し、配布しやがった奴を恨むぞ。
これで無料じゃなければありとあらゆる手段を用いて――表現規制――やるところだ!
そんなわけで評価点を点けるとするなら10点満点中2点だ。
全く、新年早々クソみたいなゲームをプレイしてしまったな。
そう心で呟いたつもりがどうやら声に漏れていたようだ。
「あんた、始めっからそれがクソゲーだって分かっててプレイしたでしょ」
と手痛い言葉を、年越しも一緒に迎えたヘーテルから頂いてしまった。
ごもっともである。
だが、クソゲーと分かっていても時としてプレイせねばならない時が男にはあるのだ。
そして分かっていてもプレイした後はなんかいろいろ辛いのだ。
辛いから俺はヘーテルを招き寄せてギュッと抱きしめることで心を癒やすのであった。
では、最後に一つ挨拶をして今回のプレイログは締めくくるとしよう。
明けましておめでとう!
今年も俺が垂れ流すくだらないプレイログをよろしくお願いします!




