R&R 1
ハクスラというジャンルをご存知だろうか。
ハクスラ、正しくはハック・アンド・スラッシュ、これは元々はTRPGで使われていた用語で、敵を倒し経験値やアイテムを集め、さらなる強力な敵を倒していくという世界観やストーリーよりもただひたすらに戦闘を目的としたゲームのことである。
戦闘を目的としたと簡単に言うがこの辺りが実に曖昧で、単純にただ敵を倒していくことを主体としたゲーム全てを指したり、倒した敵が落とす、あるいはクリアした報酬によりアイテムを収集する要素のあるものゲームのことを指したりとよくわからないことになっている。
とりあえずハクスラの細かい線引については横においておき、当プレイログでは『敵を倒し、アイテムを得てキャラを強化して、より強い敵を倒す一連のサイクルを延々と続けるゲーム』のことをハクスラと呼ぶことにしたいと思う。
そんなわけで今回はハクスラゲーをプレイしていきます。
用意したのは『R&R』というタイトルのゲーム。このタイトルはRush&Rushを略したものだ。
ざっくりと内容を説明するならば『大量の雑魚敵を倒しながら進み、最後にボスを倒してクリアして報酬にランダムで装備を入手して、装備を強化してまた最初からプレイするという一連のサイクルをひたすら繰り返す』といった感じである。
タイトルは雑魚敵が大量に襲ってくるところから来ているわけだな。
では、早速プレイと行こう。
まずはキャラの作成だが、名前はヒュージ……は使用済みで登録不可だったのでヒュージMk-Ⅱに、姿は現実のそれから髪を赤黒色に変えるだけのいつものものにして次へ進む。
次に選ぶのはクラスだ。
とはいってもクラスは別にキャラ作成後も自由に切り替えられるようになっているのでそこまで悩む必要はない。
選べるクラスはサムライ、シールダー、ソーサラー、ガンマン、アーチャー、アサシン、ニンジャの7種類。
それぞれのクラスで扱える装備が異なり、攻撃手段も変わってくるというわけだ。
実際のプレイではこのクラスが被らない者同士でパーティを組んでステージを攻略していくというCo-opプレイとなるので予め友達と一緒にプレイする予定の場合は被らないように注意する必要がある。
俺もこのゲームをプレイするにあたって一緒にプレイする約束をしている友人たちがいるので、予め決めておいたクラスを選択する。
すなわちニンジャである。
いや、すなわちって言っても前後で全く繋がっていないがとにかくニンジャなのだ。
このニンジャというクラスは攻撃力も防御力もそこまで無いのだが他のクラスよりも身体能力に優れアクロバティックに動くことができるのが特徴のやや変則的なクラスである。
武器はメインスロットが忍刀などの近接武器でサブスロットが手裏剣類。
雑魚を倒して特殊ゲージを貯めることで使用可能な特殊技能スロットには忍術がセットされる。
防具スロットにセットされるのは忍者装束という基本布製の装備となるため紙装甲だが、動きを邪魔しない程度に装着されている篭手で敵の攻撃を防ぐことも一応可能ではある。
ちなみにどのクラスでも装備スロットはメイン武器、サブ武器、特殊技能、防具の4つであるため装備はそれなりに集めやすいものになっている。
これが種類が多いと、ある部位の装備が延々出なくて泣きを見るパターンも数多いのでまあこれくらい少なめが丁度いいのではないだろうか。
キャラも作り終わったので早速ゲームを開始すると光に包まれて何処かへと転送されていく。
そうして現れた場所はたくさんの紙が貼られたボードや受付と思わしき場所があり、片隅には酒などを飲めるような机と椅子が置かれたそれなりに広い建物の中だった。
ざっくりというならば冒険者ギルドみたいなところである。
周囲には数人の人がいるがどれもNPCのようで決められたパターンに従って動いているだけのようだ。
このゲームは一応マルチ対応のゲームではあるのだが、ステージを選び、そのステージを攻略する仲間を探すマッチング形式なのでそれも当然のことではある。
ステージ選択はどうやらボードに貼られた紙を取ることでできるようなので一番下にあった紙を手に取る。
内容を見るにゲーム的には最初にいくべきステージであるらしい。
ただ、手にとっても特に何かが起きるということもなかったのでひとまずそれっぽい受付へと持っていく。
「これ、頼みます」
そういって紙を出したのがが受付の人は特にそれに反応を返すわけでもなく、その代わりに目の前にウィンドウが現れた。
そこに書かれていたのは『ステージ1 堕ちた港町』というステージ名と難易度などの各種設定。
ここまでシステマチックに進められるとなると本当に敵をただひたすら倒していくことを主体としているゲームのようだ。
昨今のVRゲームの中では珍しいタイプと言える。
ともかく難易度はノーマル、ホストとして受託しマッチングはプライベート、つまり招待した人だけが参加可能な設定にしてステージ選択を完了した。
するとウィンドウに招待ボタンが現れたのでそちらを選択し、3人分のオープンIDを入力して招待した。
少し待って数分後、約束していた友人たちが建物の入口の扉を開けて入ってきた。
「待たせたッス」
「むしろ吾輩は待たされたのである」
「マタセタ」
そう言って俺の前まで来たその3人は皆男であり、俺の大学時代の友達である。
最初に発言した語尾に「ッス」をつけることが多いどことなく軽い雰囲気の男はラッピー。
もちろんこの名は彼のハンドルネームであって本名ではない。
軽い雰囲気を発するが、その雰囲気とは裏腹にすごい誠実かつ堅実な男で、クラスはシールダーだ。
次に吾輩などと言いつつも見た目は高校生ぐらいにしか見えない男の名はタキモト。
こちらはそのまま本名か、と思うかもしれないが彼の本名とはこれっぽっちも関係のない名称だったりする。
ちなみに本人の口調は最初は、幼気な容姿がコンプレックスでなんとか威厳を保とうとして始めたものらしいが、今では完全に吾輩口調が身についてしまっている。
本人はもう容姿にコンプレックスを抱くこと無く、容姿と口調のギャップで周囲を楽しませるムードメーカーで、クラスはアーチャーだった。
最後のカタコトな話し方をしてきたのはマイケル。
彼の名はそのまま本名だが、その辺り彼は気にしない。
名前からも想像つくと思うが彼は生粋のアメリカ人で、日本にやってきてそのまま永住することにしたアクティビティな青年だ。
カタコトなのはその関係……ではなく実際はすげえ流暢に日本語を話すことができる。
そもそも俺達の体内に埋め込まれているVRチップには完全同時翻訳システムというのが存在するので彼が日本に来て間もなかろうと本来はカタコトで話すことなんてありえない。
それを分かっていてあえてカタコトで話すのは、彼がお調子者だからだ。
そんなお調子者である彼はなんというか予想通りという感じでクラスはサムライである。
この3人は大学からの親友と言ってもいい仲の友人で、俺が幸運から大金を手にしても全く態度を変えないでくれた最高の友人たちだ。
今回はこの3人とこのゲームをプレイしていこうと思う。
最初は彼女だしってことでヘーテルを誘ったのだが、
「そのゲーム、生産要素は?」
「ない」
「じゃ、パス」
と、簡単なやり取りの末却下され、俺も断られたからといってしつこく誘うといったこともなかった。
この辺り俺もヘーテルもドライなもので本当に彼氏彼女の関係なのだろうかと疑問に思われるかもだが、間違いなく彼氏彼女だ。
ゲームとは関係ないが彼女とは既にリアルで顔を合わせており、その結果彼女は俺が持つ資産に一切の興味を示さないことを確信できたため俺は一切の迷いなく彼女を愛することができるようになった。
同時に心の何処かで疑ってた自分を恥じ、憂鬱になったが、そんな俺を彼女は優しく包み込んでくれた。
詳しい話は……まあ、内緒ってことで。
「こうして集まるのはそれなりに久々だが、お前ら腕は鈍ってないよな?」
「当たり前っす」
「それは吾輩に対する愚弄であるか?」
「ソレ、コッチのセリフ」
ともかく今はこいつらとゲームを楽しむ時!
ってことで大丈夫かと声をかければなんとも頼もしい返事が返ってきた。
その声を受け早速ウィンドウからステージスタートのボタンをタップしていよいよ本格的なゲームプレイの開始である。
このステージの開始地点は路地裏のような場所だった。
流石に開始地点に敵の姿があるってことはなかったので一安心。
「後ろは瓦礫で塞がれてるッスね。頑張れば……あ、だめッス。透明の壁があるッス」
「じゃあ普通に前か」
ひとまずラッピーが後方の確認してくれたので進むべき方向が分かった。
全員初見プレイなのでこの辺り手探りプレイだ。
そういえば装備すらまともに確認してないわ。
「ありえないッス」
「それはステージ選択前で確認しておくべきことである」
「オウ、アンビリーバボー! ユーはバカデスカー?」
それを3人に告げて確認しようとしたら酷いいわれようだった。
特にマイケルのわざとらしいっていうかわざとやってるカタコトで言われるとすげえ腹立つ。
でも実際確認は初めにすべきことだったので言い返すこともできず、文句を飲み込んで初期の装備を確認する。
忍刀は……これといって特徴の無い普通のものだ。
手裏剣は無限に投げられるようだが攻撃力はかなり低く貫通性能もない。
特殊技能にセットされているのは火遁・爆裂玉。
これはどうやら数個の爆弾を辺りにばら撒くものらしい。
意外にもトンデモ忍術ではないようだけど、爆弾って火遁か?
忍装束は、まんまザ・忍者といった感じの普通のものであるため特に調べる必要もなかった。
確認も終わったので待ってもらっていた3人に軽く詫びを入れて、いよいよ先へと進む。
少し進むとすぐに広場へとでたが、怪しげに光る無数の赤い目がこちらを向き、襲いかかってきた。
敵の姿は人型ではあるが赤い目以外は真っ黒で少しぼやけたその様子はまるで影のようだ。
しかしそんな異形はこのゲームにおいて雑魚でしかないようで忍刀を当てれば頻繁に怯んでくれるため倒すこと自体はそこまで苦労しない。
だが、問題はその数でありとてもじゃないがその全てを一人で凌ぐことは無理。
ってことで、俺たちはそれぞれカバーできるように注意しつつ、手分けして敵を迎撃していく。
「ホント、多いッスね!」
「こう、多いとおちおち弓も射てないのである!」
巨大な盾で敵の攻撃を受け止めたラッピーが軽い口調で文句をいいながら、今度は盾を横に振って無数の異形をなぎ払う。
ラッピーの零した言葉に反応してか、メイン武器であるはずの弓は背に収めて代わりに短剣を両手に一本ずつ握って応戦していたタキモトが不満を零す。
だが、その戦闘に不安定さはなく、二本の短剣が流れるように敵の首元を斬り裂いていた。
「チェァアーーーー! キィヤーーーーーーーー! 弱い! 弱すぎる! この程度では! 血が! 血が全く足りぬぞォォォ!」
文句を言いつつも冷静なラッピーやタキモトと違って赤い甲冑を身にまとい刀を振るうマイケルはカタコト演技も取っ払ってバーサーカーと化している。
あれはロールプレイじゃなくてガチのやつだ。
怖いっつの。
そんなバーサーカーなマイケルをフォローするようにラッピーが動いてる。
態度は軽いってのにタンクとしては堅実で周りに気が回る本当に頼りになるやつである。
「フンッ!」
当然俺だって頑張っている。
無数の敵から繰り出される攻撃を躱しつつ回し蹴りで複数の敵をなぎ払う。
バラけたところで頭部へと手裏剣を投げ、再び接近してきた敵の首を忍刀で斬り落とす。
尚も集まってくる敵を今度はサマーソルトで蹴り飛ばしつつ後方へ下がり、距離が開いたことを利用して幾つもの手裏剣を投げ敵を倒す。
一発の威力が低い手裏剣も数を増やせば敵を倒せるし、敵に頭部に当てれば更に速く倒せる。
ちなみに俺は早々に包囲網を抜けて外から敵を倒している。
どうやって包囲網を脱したかといえば答えは単純で、敵の頭を踏み台にしたのだ。
この辺りの動作はニンジャクラスのアクロバット補正によるところが大きい。
こうして俺が遊撃に回ることで他の3人に向かう敵の数も減るため支援にもなる。
そうこうしているうちに無数の敵も気づけば大きく数を減らしとりあえず一度目のラッシュが終了した。
「しばらく見ないうちに友達が変態になってたッス」
「吾輩、ドン引きである」
「キモーイデース」
一区切りついて互いの損耗を確かめたところでなんかボロクソに言われた。
とりあえずマイケルに本気目の張り手を繰り出しつつ、俺たちはさらに先へと進んでいくのだった。




