表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRゲームで遊ぼう  作者: イントレット
レジェンドオブシルバ(シングルRPG)
3/72

レジェンドオブシルバ3

 そして扉を開けようとすると突然体が動かなくなり扉の向こうでやたらが騒がしくなる。

 短い自由だったな。


「なんだ?」


 その喧騒にジャスティンも気づいたのか警戒を強める。

 俺、というか主人公シルバとジャスティンはしばし見つめ合うと互いに頷き、二人して剣を抜いたのを確認してから扉を開ける。

 そうして開かれた扉の先では多くの魔物と戦う兵士たちの姿があった。


「魔物!? なんでこんなところに!?」

「くそっ! 俺達も加勢するぞ!」


 シルバはその光景に驚きの声を上げるがジャスティンはすぐに状況を判断し加勢しようと提案する。

 どうやらジャスティンのほうが兵士としての練度は高いようだ。

 シルバもその言葉に頷いて駆け出した。


 ああ、それにしても主観的に見ているはずなのにどうにも映像を見せられてる気分になる。

 ムービー時はキャラとの同調をきってくれればマシになるんだが、こういう所の処理も試行錯誤の連続だったのだろうな。

 ともかくこの流れはチュートリアル戦闘に違いない。

 このVRゲーム初の戦闘になるのだから集中していこう。


 そして予想通り駈け出したシルバの目の前に狼型の魔物が2体現れた。

 都合よくジャスティンとシルバそれぞれに分かれて向かってくるので一体ずつ相手することになったらしい。

 そして体の自由が戻った。


 狼……デッドウルフはさっきまでの勢いはどうしたのか少し先で立ち止まり威嚇するように唸る。

 とりあえずまだ序盤。

 死んでもすぐにやり直せるのだから気負うこともないということで俺はさっと駈け出してデッドウルフへと接近する。


 そうしようと思ったのだが一歩を踏み出す直前に体が硬直した。


 *チュートリアルを開始します。


 ぬえっ!

 今か!

 このタイミングでチュートリアル開始して動き止めさせるのか!


 *チュートリアル1 通常攻撃

 *特に意識すること無く普通に武器を扱うことで通常攻撃となります。


 バカにしてんの!?

 プレイヤーをバカにしてんのか!?


 ……いや、落ち着け。

 このゲームが発売されたのは相当前であり、初めての国産VRRPGだ。

 必要以上に丁寧なのは仕方ないことなんだ。


 よし、落ち着いた。俺、冷静。

 とりあえずデッドウルフへと近づいていく。

 

「グルルルルル」


 そう唸るばかりで目の前まで近づいてもデッドウルフは襲いかかってこない。

 このチュートリアル時に動かない敵という光景も画面越しにゲームをプレイしていた頃にはよく見た光景なのだろう。だが、実際にそのゲームの世界にいるというのにこれでは興ざめもいいところだと思う。


「どこまで行けるか……っ!」


 この際割り切ってどれだけのことができるか確かめようとデッドウルフに手を伸ばす。

 それは恐る恐るといった感じでとても攻撃をしようという動きではない。

 そしてついにデッドウルフの頭にポンと手が触れた。

 ここまで来ても襲い掛かってくる様子はない。


 そして俺は少しだけ感動していた。

 なんとちゃんとモフモフとした触感があるのだ。

 いや、若干硬質な毛質だからモフモフってほどでもないんだが程々に柔らかく触っていて気持ちいい。


「おーよしよしよしよし!」


 調子に乗って強めに撫で回すがデッドウルフは威嚇するように唸るだけで逃げようとも襲おうともしてこない。

 撫でられて気持ちよさそうな表情も見せないというのは残念ではあるがそれでもこの感覚はとてもいい。

 癒される。

 めっちゃ威嚇されてるけどそんなの気にしない。

 ほんの少し前までの苛立ちが溶けていくように消えていく。

 素晴らしい。

 これでこそVRゲーム。

 まあ、本当にモフモフを追求した究極のモフモフシミュレーション「VRモフモフ王国」と比べたら月とすっぽんぐらいの差があるけどさ。

 あれは素晴らしモフモフだった。

 あれを作った人はわかってるね。


 さて、そんなモフモフセラピーのおかげで穏やかな気持ちで俺はデッドウルフと向き合い剣を構える。

 兎にも角にもチュートリアルを進めなくてはならない。

 はっきり言うと目の前のモフモフを俺は殺さなければならないのだ。

 だってそうしないと話が進まないしね。


 ちなみにジャスティンも少し離れたところでずっとデッドウルフと戦っている。

 ジャスティンが攻撃しデッドウルフがそれを躱す。 デッドウルフが攻撃しジャスティンがそれを躱す。それを何度も何度も繰り返しているのだ。

 まるで背景のごとく。というか実際背景扱いなんだろう。


 それを見て少し気持ちがささくれるが努めて抑え、俺は剣をデッドウルフへと振り下ろした。


「ガゥ!?」


 剣は見事デッドウルフへと命中したがデッドウルフは衝撃で仰け反るだけでまだ存命だ。

 首を斬り落とす軌道で、実際に刃が首を通ったというのにな。

 急所狙いというものは存在しないようだ。


 それでもちゃんと通常攻撃扱いとなっているようで視界の右端に表示されていた*通常攻撃0/5という表示が1/5という表示に切り替わっていた。

 このままさっさと終わらせようとして体が動かないことに気づく。

 正確には剣を振れないのだ。

 歩きまわったりすることはできるのだが剣だけ振れない……というよりも攻撃ができない。

 なんとか出来る行動はないのかと試していると目の前に斜めになるように構えることはできた。

 その瞬間デッドウルフが飛びかかってきたかと思えば先ほど構えた剣がそれを防ぎ衝撃を感じ取る。


 *防御について

 *今のように攻撃した後は相手に攻撃権が移ります。相手の攻撃は防御するか回避をすることでダメージを受けずに済みます。


 そして同時にこんなアナウンスが表示された。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ