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VRゲームで遊ぼう  作者: イントレット
Unlimited Space Adventure(スペースコンバットシム)
23/72

Unlimited Space Adventure 2

 さて、通称『米』のプレイログ第二回目を始めていきますが、既にタイプ7戦闘宇宙艦ヒューパ、用意させていただきましたー!


 と言っても第一回終了時点で必要なSPは集まってたから今日プレイはじめた時に買っただけなんだけども。

 今更だがSPはSpase Pointの略で全宇宙共通通貨のことである。

 前回忘れていたので今回補足を入れておきました。


 それにしてもそんな簡単に宇宙船が買えるもんなのかと思うかもしれないが、小型艦は総じて安い。

 おまけに初期艦を下取りに出せばその分資金が増えるので買い替えのハードルはかなり低い。

 宇宙生物を効率よく2時間も狩れば十分なぐらいである。


 まあ、効率よく輸送依頼をこなせば1時間もかからないけどな。

 初期だと狩れる宇宙生物など雑魚でしか無いため資金を稼ぐという意味ではどうしても効率が悪いのだ。

 

 で、宇宙生物狩りでも2時間あれば十分なところを一日中狩り続けた俺の口座には十分以上のSPが入金されていた。

 当然ヒューパを普通に買ってもそれなり余る程だったので、折角だからフルスペック版を購入しました。

 


 さて、ひとまずこうして小型戦闘艦を手に入れたわけだし約束通りヘーテルへ連絡を入れることにする。


「ヘーテルに通信入れてくれ」

『通信、繋がりました』

「よっ! 小型戦闘艦手に入れたぞー」

『遅い! 小型戦闘艦なんてのんびり戦っても3時間かからないでしょうに何やってんの!?」

「一日中ずっと雑魚狩りまくってました」

『やっぱあんたって馬鹿なのね。序盤の戦闘なんかさして面白くもないだろうによくもまあ続けたものよ』

「いやあ、確かに雑魚ではあったが初期艦だとそこまで油断はできなかったぞ。ひたすら狩り続けてヘイトでも溜まったのか後半は常に複数に狙われる結果になったしな」

『なに脅威認定受けてるのよ。大型艦とかエリート機に乗っての雑魚掃討時にはよく見る光景だけど初期艦でそれって相当よ? っていうか初期艦でよく無事だったわね』


 通信を繋いで報告すれば怒られた。

 事情を説明したら今度は呆れられてしまう。

 いや、まあそうだよね。

 初期艦なんてホントあるだけマシでしか無い性能だしそこまで苦労なくもっとマシな性能の宇宙船に乗れるんだからとっとと乗り換えろってのはごもっともだ。

 

 最初は操作の習熟のためだったが途中から襲ってくる宇宙生物の数が増えてなんとなく楽しくなったんだよな。

 数は増えてもそこまで強くはないのは変わらずだったし、動きもゆったりで狙いつけるのも簡単だった。

 まあ、こっちも初期艦だからなかなかに動きが遅く敵を照準サイトに捉えるのに少し苦労したけど。

 ちなみに初期艦の武装は前方射撃固定型で、戦闘機ゲーにおける機銃と同じようにして狙いを定める必要がある代物だ。

 だからこそ機体そのものの旋回性能とかが割りと重要になってくるし敵を捉えるのにコツが必要だった。


「ま、問題はなかったよ」

『あっそ。まあいいわ、とにかく戦闘艦を手に入れたって言うけどどれにしたのよ』


 そう言うと呆れられ、同時に手に入れた戦闘艦について聞かれる。

 口で言うよりは見てもらったほうが速いってことで機体データをヘーテルへ送信した。


『フルスペック機!? ホントどれだけ雑魚狩ってたのよ。というかこの機体をフルスペックにしてもすぐ買い替えることになるのにもったいない』

「まあ、いいじゃないか。序盤のうちならそこまで大きな出費ってわけでもないだろう?」

『ん……それもそうね。そもそもフルスペック機ならそれなりの性能は得られるわけだし完全に損ってわけでもないのだし』


 機体データを見てヘーテルが驚きの声を上げるが所詮今は序盤も序盤。

 たった一日雑魚狩るだけで買える程度でしかないんだし問題はない。そう言えば彼女も納得して冷静を取り戻す。


『じゃ、とりあえず約束通りあんたを私のアライアンスへ入れてあげるわ』

「おう」


 別に頼んだつもりもないが彼女は約束を履行してくれるらしい。


『ヘーテル様からアライアンスへ招待されました』


 アナウンスと共にディスプレイに選択肢が現れる。

 NOっと。


『ん? ちょっと!』

「ワーマチガエテ違ウボタンオシチャッタナー」

『っ……! ああもう、仕返しか! あの時は私が悪うございましたー! だからちゃんと承諾しなさいよね!』

「あいあい」


 勧誘が断られたのを知らされたヘーテルがキッとこちらを睨んできたので棒読みで間違えたのだと告げる。

 俺の行動が、『転生』の時パーティを組もうとした時の仕返しだと彼女も気付いたのか少しムキッとしながら謝罪をいれ再び招待されたので今度こそYESを選び彼女の所属するアライアンスへ加入した。


「って、お前が代表なのか」

『何よ。最初から私のアライアンスだって言ってたでしょうに』

「いや普通、所属してるだけって思うだろ」


 早速加入したアライアンスのメンバーリストを見れば代表の欄にヘーテルの名があった。

 まさか彼女が作ったアライアンスだとは驚きである。

 メンバーが彼女と俺だけって言うオチもなく、俺や彼女を含めて70人程所属しているようだ。


「それなりに多いな」

『まあね。とはいっても60人くらいはアライアンスに入ってると受けられる限定依頼のためか、私のアライアンスが限定で供給してる装備を割引購入するために入っているだけだったりするけどね』

「ふーん。じゃあ残りの10人……俺たちを除いた8人は?」

『いわゆる幹部連中ね。内3人は私のリア友で5人は限定装備を気に入りすぎて精力的にアライアンスに貢献してくれるようになった人たちよ』


 多いと思ったが、実態は入っているだけのメンバーが多く、実質的なメンバーとしては俺やヘーテルを含め10人しかいないらしい。

 それにしてもこのアライアンスで限定で供給してる装備か。


「もしかしてそれってヘーテルが作ってるのか?」

『ご名答。流石に宇宙船を全部一からってわけには行かないけど武装ぐらいならなんとかなったからね』

「武装ぐらいって、割りととんでもないよな?」

『別にゲームなんだからある程度システムに則れば現実での理論とか理解してなくても案外なんとかなるものよ』


 軽く言ってるけどやってることは相当高いレベルな気がする。

 相変わらず彼女の生産能力は凄まじいようだ。

 その装備を割引で買うためにアライアンスに加入するプレイヤーが60人もいるばかりか、気に入りすぎて幹部になってる人もいるのだから性能についても疑う余地もないだろう。


 今更ながらこのゲームをプレイすることにしたきっかけは彼女に誘われたからだ。

 そのときに聞いたのだが、このゲームこそ彼女がメインでプレイするゲームらしい。

 だからいろいろやらかしているのだろうとは思っていたが想像以上であった。


『装備の話で思い出したんだけと、ちょうど最近完成した武器があるのよね』

「へえ」

『しかも既存の武装スロットを消費しない特別なやつ』


 そりゃまたすごい、とは思うが俺は何やら嫌な予感がして沈黙を選んだ。


『ただ、性能試験がまだでね。そんなわけでその武器をあんたにあげるかわりに性能試験してもらうからよろしく。アライアンスからの依頼として回すから経験値とかもお得よ』


 だが、残念。

 こちらに拒否権は一切無かったのである。

 まあ、そういう面白そうなのは望むところではあるのだが。


 ちなみに彼女の言葉からも分かるようにこのゲームにもキャラクターレベルというのは存在していて実は俺もすでに3レベルほど上がっている。

 レベルが上がると強化ポイントが1貰え、それを消費することでキャラを強化することができるが俺は全てG耐久強化というものに振り当てた。

 これは急な加減速によるGによる影響を抑えることができるというものでその分だけ無理な動きができるようになるのだ。

 機体スペックを全て引き出すには必須の能力と言えるだろう。

 で、経験値は敵を倒したり依頼を達成したり交易したりすることで得られるが、その際得られる経験値の量は大体稼いだ金額に比例するのだ。

 じゃあ、アライアンス限定依頼はと言えばその経験値に特別ボーナスが上乗せされるようになっているのでキャラ育成を効率よく進めるならアライアンスへの加入はほとんど必須と言えるだろう。

 ちなみにこの限定依頼を受けるためだけのアライアンスというのも存在するのでぼっち戦士も安心してほしい。


 まあ、解説はさておき今は彼女からの提案、もとい決定事項を受けた俺はひとまず装備を受け取るためにヘーテルのいるステーションへと行かねばならない。

 が、いくらフルスペックといえども所詮小型の戦闘艦でしか無いために彼女のいる星系までいくのは少々骨が折れそうである。


「ってことで少し遅くなりそうだが大丈夫か?」

『ああ、大丈夫。そっちから連絡来た時に運び屋(ポーター)に話を通しておいたから。もうそろそろ到着するはずよ』

「は?」

『警告。周囲宙域に大規模な空間転移門(ワームホール)の発生を確認。大質量を持つ大型艦がワープしてくるものと思われます。衝突しないよう注意してください』

『お、来たようね。じゃあ後は直接あってからってことで』


 だから遅くなることをヘーテルに伝えたのだが、どうやら既にその辺りの手はずは済んでいるらしい。

 そして彼女の言葉が合図だったかのようにAIが周辺宙域に空間転移門(ワームホール)が発生したと報告してきた。


 小型戦闘艦を購入した後ある程度操作を慣れるためにステーションなどからは離れた何もない宙域にいるのでわざわざこんな場所へワープしてくるということは、その艦こそが彼女が言っていた運び屋(ポーター)なのだろう。

 彼女もマイク越しにそれを聞いていたからか会話を切り上げて通信を切った。


「おっと、出てきたな」


 それから程なくして空間転移門(ワームホール)から宇宙船が姿を表した。

 それは全長1キロメートルほどの角ばったフォルムをした大型艦だった。


「おおーでっけえなあ。でっけえなあっていうかちょっとでかすぎじゃね?」


 それを見て迫力はあるとは思うのだが、小型の戦闘艦を運ぶのには少々大げさ過ぎる気がする。

 確か小型艦を輸送できるやつでももっと小さいタイプの輸送艦はいっぱいあったはずだが。

 と、そんなことを考えていると現れた艦からの通信が入る。


『あーどうも、タイプ3大型輸送艦ベクター艦長のトミーです。えっとヘーテルさんから頼まれて来た運び屋(ポーター)なんですがヒュージさんで間違いないです?』

「はい、間違いないですよ」

『了解です。じゃあ、ドッキングナビデータを送りますので、ルートに従ってこの艦にドッキングしてください』


 通信画面に表示されたのは男の人であった。

 ただ、口調や声から受ける印象はとても柔らかく美青年風だというのに実際には熊のような濃いヒゲに覆われた筋肉質の男性で、ぶっちゃけでいえばおっさんだった。

 例え髭が無くてもそれは変わらないだろうと思える。

 ちなみにこのゲームではアバターは基本的に現実のもので変えられるのは髪型とか色とか髭とかそういう部分だけなので、美青年があえておっさんアバターを使っているわけではなく本当におっさんが美青年風な声を発しているのだ。

 世界って残酷だな。


 まあ、そんなことはどうでもいいので送られてきたナビデータを元に俺は機体を動かして輸送艦ベクターへとドッキングする。

 その際に限界まで最高速度で突っ込み、直前でぎりぎり止まれるようにして宇宙船を動かしてみた。

 戦闘用の艦だからか機動面は汎用機のメビウスよりずっと強化されていてこういった強行ドッキングもかなり簡単に感じたが、トミーさんからすれば相当な操作技術に見えたようで素晴らしいとお褒めの言葉を頂いた。


「それにしてもタイプ3とか、タイプ7の小型艦1機だけ運ぶのにはかなり大げさですね」

「ええ、まあ確かにそうなんですが、ヘーテルさんからの頼みですし何より『桜花』でタイプ7を輸送できる艦を持ってて動けたのは僕だけでしたから」

「あ、トミーさんもメンバーだったんですか。改めてどうも、新しく加入したヒュージです」

「こちらこそよろしくです。それとゲームなんだから別に畏まったしゃべり方をする必要はないよ。もっとフレンドリーにいこう。私はこれが素だからこれ以上フレンドリーにはできないけどね」


 ドッキング後、ヒューパからベクターへと移りそこでトミーさんと直に対面し話をしていた。

 タイプ3の大型艦ともなると再度ワープするまでのチャージ時間がそれなりにかかるのでその暇つぶしだ。

 タイプ7の小型艦1機に大げさだなと思っていたが、人員の中で動けるのがトミーさんだけだったからという理由だったようだ。

 同時にトミーさんもヘーテルの作ったアライアンスのメンバーであることが判明する。

 今更だが、『桜花』というのがヘーテルが作り俺も加入したアライアンスの名称だ。

 改めて同じメンバーとして挨拶すればトミーさんも笑って応じてくれた。

 どうやら人付き合いに関して厳しいこともないようなのでお言葉に甘えて普段通りに接するとしよう。


「じゃあ、遠慮無く。それにしてもトミーさんはあれですね。いろいろギャップがすごいよね」

「そこが私のチャーミングポイントさ。ちなみにこの髭も自前だからリアルではやっぱり驚かれることが多いんだ」


 てなわけでずっと気になってた風貌と声とのギャップについて触れてみればトミーさんは苦笑しながらも気にした様子はなくちょっとした冗談を返してくれた。

 なかなか楽しい人のようだ。


 その後は会話を続けているとワープドライブのチャージ時間が終わり、俺たちはヘーテルの待つ『桜花』本部を目指してこの宙域から姿を消したのだった。

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