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VRゲームで遊ぼう  作者: イントレット
Unlimited Space Adventure(スペースコンバットシム)
22/72

Unlimited Space Adventure 1

 宇宙。

 そこはどこまでも広がる神秘の世界。

 人々は未知なるその世界に憧れ、その世界に何があるのか興味を持った。

 星を観察し、月へと到達。

 さらには更に遠くの火星への有人渡航を実現した。


 そして時は流れて数千年。

 人類はその生存領域を宇宙全土へと拡げていた。

 だが人は過ちを、歴史を繰り返す。

 人類は限りなく広大な宇宙に進出しても尚、他者の領域を羨み、妬み、憎み、争いを繰り返していた。


 そんな戦乱渦巻く宇宙の何処かの小惑星帯。

 そこに一機の個人用宇宙艦があった。

 まるで何かと争ったかのようにボロボロではあったが、致死環境を航行する宇宙船は想像以上に頑丈であるため航行には問題は無い。

 そんな宇宙船の中に一人の人間がいた。

 何かのショックで気を失い今しがた目を覚ましたばかりの記憶喪失の人間が、いた。

 



 

 ってことでスペースコンバットシミュレーションゲーム、つまり宇宙ゲーやります。

 タイトルは『Unlimited Space Adventure』で通称『米』。

 冒頭に入れたのはこのゲームのプロローグ的なやつだがストーリーとか無いので気にしなくていい。

 ってことでゲームを始めるぞ。


 視界が一瞬暗転。

 目をゆっくりと開ければ視界が少し霞んでいる。

 まるで寝起きのようだ。

 何度か瞬きをして目を覚ますように軽く頭を振ると次第に視界がクリアになる。


 そうして目に写ったのは操縦盤や計器類の類。

 どうやら宇宙船の操縦席のようだ。

 ま、プロローグの続きからスタートしてるんだろうから当たり前か。


 とりあえず現在は生命維持に必要な機能が最低限動いてるだけで他のシステムは止まっているようだ。

 正面パネルにそんな感じの情報を告げる表示がある。


 ひとまずはシステムの再起動するか。


「……どうやって再起動すればいいんだ?」

『ザザ……ザー……ザッ……―スターから―要――確認しま―た。これより―――テムを再――し――……』


 どうやら補助AIが搭載されているらしい。

 呟いた言葉に反応して宇宙船のシステムが再起動されて……いかない。

 そもそもこの音声は宇宙船からのものじゃない。

 じゃあどこから? と探せば自身の左手の甲に菱型の何かが埋め込まれていてその何かが点滅している。


『――再起動完了。ユーザーデータの読み取りに失敗。再度読み取り――失敗。規定によりこれまでのユーザーデータを削除、再登録します。名前を入力してください』

「ふむ、ここでプレイヤー名を決めれるのか。じゃあ『ヒュージ』と」


 現れたウィンドウから名前を入力。

 今回の名前は実は本名から文字っている。

 っていうか今後は新しくゲームで名前登録するときは全部ヒュージにするか。

 こうしてプレイログとして残すのに毎回名前変わってちゃこれ更新してるの誰だよってなるし。

 今更すぎるがまあそういうことで。


『マスターの登録が完了。以後のデータ破損を防ぐため一部情報をユニバーサルクラウドへバックアップ。――状況を確認……現在はタイプ7・汎用小型宇宙艦メビウスに搭乗中……所有者はマスターであることを確認。機体コンピュータと同期を開始……艦内システムに異常を感知、艦内システムを再起動します。――武器管制システムに障害、復旧不可。シールド装置やや不安定。ワープドライブ装置に一部故障、星系間ワープ不可。その他のシステムは異常無し。機体の修理が必要――周辺宙域にタイプ7を艦載できる大型艦の姿無し。自力航行により移動する必要有。ナビゲーションシステム起動。現在座標確認……星系マップの入手……完了。星系内で修理ができるステーションを検索。機体修理可能なステーションを発見しました。目的地に設定しますか?』


 登録してすぐに補助AIが状況を確認し、問題を洗い出していく。

 テキパキと話が進められてあっという間に目先の目標が立てられ、これから向かうべき場所を調べあげてくれた。

 なかなか高性能なAIだ。

 当然目的地に設定だ。


「設定してくれ」

『了解。目的地をU-704宙域公団管轄第6TRステーションへと登録。自動操縦機能を使用しますか?』

「あー……いや、せっかくだ。チュートリアル代わりにマニュアルでやるさ」

『了解。操縦方法をマニュアルに指定。マスターの要望により操作方法を画面に表示します』


 所有の際に操縦方法は熟知している必要があるらしい。

 それにしても予想以上に高性能だな。

 ちょっとした言葉から即座に俺が求めてるものを理解してくれる。


 ってかこれ、チュートリアルとか言わなければ操作方法すら教えてもらえなかったのではないか。

 多分少し弄ってどう動かせばいいんだ、とか言ったら同じように表示されるんだろうけど。


「ふんふん、これが前進で逆にすればバック。こっちのレバーが垂直と水平移動。あとはこっちで機体のロールか。やっぱなかなかややこしいな」

『アシスト機能を使いますか?』

「いや、使わない。最終的にマニュアルで操作できたほうが戦闘でも有利だろうしな」


 宇宙ならではの真空・無重力環境下なら戦闘機のように速度不足による墜落などは考えなくていい。

 その分だけ宇宙船はより自由に機体の向きを制御することができ、それを利用して縦横無尽に動ければそれだけ戦闘では優位に立てるはずだ。


 それにしても本当に気の利くAIだ。

 この短い間に何度そう思ったか。

 などとどうでもいいことを考えつつも宇宙船の操作を何度も一通り繰り返して練習する。


「まあ……ひとまずは動かせるようになったな」


 そうしておおよそ30分くらい練習してそれなりにスムーズに加減速したり上下左右のスラスターを使って小惑星の周りを一定感覚を保ってぐるりと一周できるぐらいには慣れた。

 と言ってもゆっくりと動いてようやくだからさらなる習熟が必要である。


 では、まあナビに従ってステーションへ向かうかと思ったところでふと思い出す。

 このゲームを始めたら連絡入れると約束していたんだった。

 まあ、多少遅れても気にする相手でも無いから問題はないが、思い出した以上は連絡を入れるとしよう。


「あー……確か特定の相手に対して通信する手段ってあるよな?」

『対象のオープンIDを知っていれば可能です』


 確か、プレイヤー同士の待ち合わせを効率的にするための通信手段があったはずだと思いだして確認すれば、オープンIDを利用した連絡手段が使えることが分かった。 

 オープンIDはゲームに設定されているものではなくVRチップメニューから個人で設定できるIDで、要するにメールアドレスみたいなものだ。

 このIDを教え合えば、特定ゲームで知り合った友人と別のゲームでも円滑に連絡を入れたりすることが可能で、大体のゲームでこの機能は有効化されている。

 ただ、中にはこのオープンIDを利用した連絡を意図的に無効化しているゲームもある。

 無効化するのはよりその世界に没頭するためだとか、ゲーム内で知り合いチームを作っていったほうがフェアだからとか、談合防止だとか理由は様々である。


「じゃあ『■■■■』に通信を」

『了解。通信を繋げます……繋がりました』

『誰?』


 そんなわけで予め覚えていた友人のオープンIDを伝え通信を入れるように頼めば数秒で通信が繋がり、正面ディスプレイに少し怪訝な表情を浮かべた人物の映像が映され、同時に警戒した様子で誰なのかと尋ねられる。


「よっヘーテル! ちょっと遅れたが『オンタマ』だ」

『ああ、オンタマね。ヒュージなんて聞き覚えの無い名前だったから不審に思ったじゃないの』

「まあ、あの名前はホントノリでつけただけだからな。今後はヒュージで通していくんでよろしく」

『そう。ならこれからはヒュージって呼ばないとね。で、随分連絡遅かったけどやっぱ操作の練習?』

「ああ。とりあえず動くぶんには問題は無くなったからこれからようやくステーションへ向かうところだ」


 ひとまず軽く挨拶して分かるように知り合った時の名前を告げる。

 その言葉に納得したようで彼女の表情は一気に和らぎその後は笑顔で言葉を交わしていった。

 元々連絡を入れる約束をしていたのに遅くなったことを彼女は気にすることもなくいとも簡単に遅れた理由を当ててきたので俺は肯定しつつ現状を報告した。


『まだステーションには向かってなかったのね。なら私からプレゼントってことでこれあげる』

『――マスターの口座に5,000SP入金されました』


 一つ頷いた彼女がプレゼントと言いつつ何か操作する動作を見せた。

 するとAIが口座に入金があったことを知らせてきた。


「いいのか?」

『はした金よ。それに初期の持ち金だと微妙に修理費用足りないからね。だから普通はリスクの低い輸送依頼とか受けたりして工面するんだけどあんたそういうの嫌いでしょ?』

「おっしゃるとおりで。んじゃありがたくもらっておくわ」


 輸送系の任務ってどのゲームでも好きじゃない。

 その辺り彼女も察してくれていたようでありがたいことである。


『で、しばらくはあんたはソロ活動よね?』

「ああ、まともな宇宙船が手に入らないとやりたいこともやれないしこの時点で編隊組む利点は薄いからな」

『んじゃひとまず小型の戦闘用宇宙船を手に入れたらまた連絡ちょうだい。私のアライアンスに入れてあげる。っていうか勝手に他のアライアンスに所属したら許さないから』

「なぜに」

『あんたと一緒のほうが楽しいじゃない。じゃ、ひとまず戦闘艦を手に入れるまで頑張りなさいな。バイビー』


 それから一つ確認され素直に答えたらどういうわけか戦闘艦を手に入れたら彼女のアライアンスへ加入させられることになった。

 別にそんな約束はしていなかったのになぜかと思ったのだが、彼女は何でもないかのように理由を告げると軽いエールの言葉を残して一方的に通信が切られてしまった。


 全く、一緒だと楽しいだとか簡単に言いやがって。

 ピュアな俺は少しだけドキッとしてしまったじゃないか。


 実際はピュアでもなければドキッともしていないが。

 お金持ってるとね、人は汚れていくものなのだ。

 そうして社交辞令とか建前とかノリというものを覚えていくのである。


 ま、んなことはいいからステーションへと向かう。

 と言ってもナビ通りに進むだけ。

 敵もいなけりゃこちらへ向かってくる隕石があるわけでもないのだから手こずることもない。

 しかも星系内ワープは可能だったのでワープドライブを起動すればあっという間にステーションの傍まで到着だ。


 映画でよくあるワープ時の光が伸びるようなあの光景は素晴らしかった。

 映画のあのシーンをこうして実際に体験できるようになるとは本当にいい時代になったものである。


「よっし、ステーションにドッキング申請を頼む」

『メビウスから公団へ、第6TRステーションへのドッキングの許可を要請』

『こちらステーション。機体の検査を開始……犯罪歴及び違法物の所持の無いことを確認した。ドッキングを許可する。97番ポートへ着艦せよ』

「どーもー」


 ドッキングの許可をもらったのでディスプレイに表示された案内を確認しつつ移動し97番ポートを発見。

 それなりの速度で97番ポートの着艦面直上ギリギリまで迫ると機体を急停止させ同時に姿勢を着艦面と平行になるように操作。


 その状態で数秒待機すると着艦面から牽引ビームが射出され後は勝手に着艦させられていく。

 これでドッキングは完了だ。


 その後はステーション内にあるシップセンターへと向かい、そこで機体の修理を頼んだ。

 修理を頼み支払いを済ませたら即座に修理は完了する。

 この辺りは酷くゲーム的ではあるが修理で延々時間を取られても面倒でしか無いのでこれでいいと思う。


 兎にも角にもこれでようやくスタート地点だ。

 武装はもちろんワープドライブも修理され星系間ワープも可能になったので行動範囲も相当広くできる。

 もっとも現在の機体のワープドライブでは5光年の距離が限界だったりするが。


 とりあえず戦う事はできるようになったが、武器は性能の低いレーザーブラスターが二つあるだけなのでまずは弱めの宇宙生物を倒して金を稼ごう。

 え、宇宙生物がなにかって?

 普通にそのままだよ。


 宇宙に突如現れ生命体に反応しビームとか撃ってくる物騒な連中で、狩るとその脅威度に応じて報酬がもらえるのだ。

 まあぶっちゃけこの宇宙生物は世界観とかじゃなくてゲームとして必要な脅威をシンプルに表現したものだったりする。


 ほら、海賊が単独で行動してるとかいろいろおかしいじゃない?

 かといって集団で出てこられても初期の貧弱な機体でどうしろって話になるからそれを解消するために宇宙生物が生まれたわけだ。

 そんな経緯で誕生したものだから生物と言ってもほとんど宇宙船みたいな造形をしていて宇宙船みたいな攻撃をしてくる。


 あと、この宇宙生物だがプレイヤーの機体とか宙域とか座標とかに応じて強さとか大きさとかが変わってくる。

 いまの初期機体かつ初期宙域とかなら最弱か、ほんのちょっぴり最弱よりも強いやつ程度の宇宙生物しか現れない。

 ひとまずはその弱めの宇宙生物を狩ってお金を集め、小型の戦闘艦を買うことを目標にすることにしよう。


 そんなわけでこの後は宇宙生物多発宙域へと向かい宇宙生物を狩りまくった。

 俺と同時期に始めたのだろうプレイヤーも同じような考えからかそれなりに多くいたが、それ以上に宇宙生物は湧いて出てくるので獲物の取り合いになることもなく、ひたすら狩りをして少しずつ宇宙船の操作を身体に覚え込ませて一回目のプレイは終了である。

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