レジェンドオブシルバ2
さて、とりあえずこの部屋の中の各所を調べてみないとね。
*100Gを入手しました。
*紙くずを入手しました。
*裸の女性が描かれた本を入手しました。
*壊れかけた盾を入手しました。
*5EXPを入手しました。
*銅の鍵を入手しました。
とりあえず目につく場所を調べてみて手に入ったのがこれだ。
完全に俺のではない他の人間の私物を盗んでいるわけだが手配されることもなければ、俺を起こしてくれたジャスティンも何も言ってくることはない。
ずっとスルーしてたけどこいつずっとそばにいるんだよな。
ちょっと話してみるか。
「おい」
「そろそろ訓練が始まる。もう大丈夫なら訓練所に行こうぜ」
「……これは何だ?」
「どうした?」
「……そこのベッドから鍵を入手したけど問題ないか?」
「夢なんて気にするなよ」
ダメだ。
定型文をランダムに発するだけだこいつ。
村人かよ!
だがまあVRゲーム初の国産RPG。
優れたAIがポッと出てくるわけもないのだからそれも当然といえば当然か。
最近のVRゲームだと結構自然な会話をすることができるぐらいAI技術は向上しているが、その技術って実はすごいんだなってことを実感できる。
わざわざ古いゲームを選んで遊んでいるのだから文句を言ってもしょうがないしな。
でもまあ、折角だし確かめずにはいられないってことで俺は最初に起きた時に手にとった剣を鞘から抜く。
では、ちょっとあれかもしれないが検証させてくれジャスティンよ!
ジャスティンと向き合って剣を上段に構える。
「フッ!」
そして小さく息を吐きながら鋭く振った。
その刃は間違いなく首へと向かっていたがジャスティンは微動だにしない。
そしてその刃が彼の首を斬ってしまうかと思ったその次の瞬間。
刃は彼の首をすり抜けた。
「夢なんて気にするなよ」
そして剣を振りぬいた直後の反応がこの定型文である。
どうやら動き自体は結構自由に動けるようだがその動作がNPCなどに影響を与えるかどうかはまた別の問題らしい。
そもそも触れられないのか? と思い今度は剣を収めて触れてみるがすり抜けるなんてことはなくちゃんと触ることができた。
もちろんジャスティンは突然触ってきた俺に違和感を覚えることはない。
触れた場所は鎧だが、その触感はかなりリアルに再現されていた。
……ふむ。
ちょっと女性NPCを探そうかな。
っと、いかんいかん。
あまり横道に逸れるのもいかんだろう。
とりあえず今浮かんだことは最重要確認事項として頭の隅においておくとしてひとまずは部屋を出ることにしよう。
扉は一つだけだったので迷わずそれを開けて部屋から出れば、当然のごとく廊下に出た。
どうやら先程までの部屋は建物の中でも端の部屋だったらしく右側は行き止まりだったのでさっさと左へと足を進める。
当然途中にあった扉は全部開けようと試し、開いたらその部屋の中のアイテムは回収していった。
やっぱり咎められることはない。
どうやらこのゲームでは普通に勇者できるらしい。
ほどなくして武器倉庫と書かれた部屋を見つけるが鍵がかかっていたが、初めの部屋で手に入れた鍵を使用すれば見事開いたので中を探索する。
*ロングソードを入手しました。
*ショートボウを入手しました。
*木の矢×30を入手しました。
*HPポーションを入手しました。
*MPポーションを入手しました。
*鉄くずを入手しました。
状況的に考えて俺、つまり主人公は何らかの軍、組織に所属する一兵士だろう。その一兵士が武器庫に潜り込み物資を自分のものにする。
到底許されていい行動ではないはずだがやはり咎められることはない。このゲームでは物色は正当な行為であるとはっきりと確信した。
そういえばログに書き忘れていたが手に入れたアイテムの確認や使用、あるいは装備の確認や変更は「メニュー」と言って現れるホロウィンドウからインベトリやら装備やらを選択すればいい。
この頃はまた思考操作という操作方法は普及していないのでこういう形なのだ。
もっともこのウィンドウ形式もそれはそれで便利なので今日のゲームでもこの形式をとっているものは多いので特に違和感を覚えることもない。
そのメニューから装備を見ていたら初期のショートソードよりもロングソードのほうが性能が良かったので装備を変える。
このワンタッチで装備が切り替わるのは最近のゲームでもよくあるものだがせっかくのVRゲームが台無しだと感じる人もいる。
実際、ネット上では常に「装備ぐらいは簡単なほうがいい」という人たちと「せっかくの仮想世界なんだから装備するのも自分で装着したほうがよりリアル感がでる」という人たちとの間で争いが絶えない。
俺個人の意見としてはどっちでもいい、である。
そのゲームがとった形式に順応するだけのことだ。
まあ、そんなことはどうでもいい。
隅から隅まで物色して探索できる部屋はなくなり、残す扉は外へ出るためのものと思われる少し大きな扉のみだ。
やり残したこともないのでさっさと外へ出ることにしよう。
その前にセーブしておこう。