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VRゲームで遊ぼう  作者: イントレット
ReBIRTH-Lost life,New life-(MMORPG)
14/72

ReBIRTH-Lost life,New life- 2

「Grrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrraa!!!」

「最初のチュートリアルがドラゴンっておかしいだろうが!!」


 振り向いてその姿を確認したことがトリガーとなったのか、情報ウィンドウの表示がトリガーとなったのかは知らないが、真竜は爆音の如き咆哮を放った。

 文句を言いつつ俺はとりあえず離れようとバックステップをするが……。


「へ?」


 背中に軽く当たる壁の感覚とともに、いつの間にか真竜が遠くに居た。

 いや、俺が一瞬でここまで移動したのか。

 なるほど、これがスピードマスターによる力。

 誰にも反応ができない……確かにそうだ。

 俺自身が反応できてねえ。ってアホか。


 そして反応できなかったのは相手も同じようで急に目の前から消えた俺を探しているようだった。

 だが、それも僅かな間のことで奴はすぐに俺を見つけ、その金色に輝く瞳で睨んできた。

 それから深く息を吸い込む動作を見せ――ってやばい!?

 慌てて真竜の首元に退避しようとして踏み出す。


 正直それでうまく首元へ移動できる保証もなかったが、気づけば真竜の太く長い首が目の前に現れて無事移動できたことを悟る。

 そして真竜はそのまま先ほどまで俺が居た場所へと予想通りにブレスを放った。


「……っ」


 その光景に思わず唾を飲む。

 そのブレスは火炎放射のようなものではなく極太のビーム状のもので、発射した次の瞬間にはここからそれなりに離れた、俺がさっきまでいたこのエリアの端までたどり着き、結界へ直撃していた。

 それにより結界は大きく揺らぎ、激しくスパークした。

 さらにはブレスは空中上を通っていたというのにその軌道上の地面は溶けて抉れ、抉れたその底には溶けた地面がマグマとなって集まり熱を放っているのが分かる。


 どうも今のをブレスを懐に潜り込んで回避されたことに気づいてないのか真竜はブレスを放った先を睨み付けている。

 色々考えるのにちょうどいいからそのまま俺に気づかないでいてくれと祈っておこう。

 それにしてもアレに当たったらひとたまりも無いだろうな……だが、それはまあ当たればの話


 どうやら能力を使った動きの中俺自身がそれを認識できなくても何らかの補正が働くのか想定した場所に、想定した体勢で移動できるようだから回避については問題ない。

 あとはなんとかダメージを与えられれば勝機はある。

 そのダメージだが感覚的に速く動けること以外は現実のそれと大して変わっていない気がするので普通に攻撃しても無駄だろう。

 もっともゲームだし感覚そのままだけど力は上がってるなんてこともあるかもしれないが多分無い。

 だって注記に防具は衣服のみで、武器は重さ2以上は装備できないって絶対肉体的には貧弱でしょこれ。

 だったら初めから力によるダメージは諦めるとして可能性があるとすればやはり能力を使った高速移動中の攻撃。

 スピード特化キャラでプレイされることは想定されているだろうからダメージに速度ボーナスがあるのではないかとおもう。


 あとは高速移動中に攻撃できるのかだが、なんとなく可能だと思える。

 たしかに瞬間移動のごとき動きは自身でも認識できていないが事前に想定した通りに動いてるようだしこうして落ち着いて見ればなんとなくどう動いたのかわかる。

 言うなればこれはコマンド選択式な動きといったところか。

 あらかじめこう動くと決めてその設定通りに動く。

 その設定にどれだけ柔軟性を与えられるかは多分自分次第だろう。

 ひとまずは考えをまとめ終わり無意識に下を向けていた顔を上げれば真竜の姿が見当たらなかった。


「っ!?」


 考えに集中しすぎたと焦り、真竜を探そうとするがふと感じた感覚に従って探すよりもとにかく横へと回避するように意識してみれば一瞬で景色が変わる。

 それから周囲を確認すればなぜか先程まで自分がいた場所だと認識できる地面を先に見たブレスと同じものが縦に(・・)突き刺さるように貫いた。


「いつの間に?」


 ブレスの軌跡から上空へと目を向ければ悠々と旋回飛行している真竜の姿があり、思わず言葉が漏れた。

 俺はさっきまであいつの死角である懐にいたはずだ。

 その距離は近く、いくら考え込んでいたとしてもあの巨体が空へ飛び立ったことに気付けないなんてあり得ない。そこまで俺は抜けてないはずだ。

 どうして気づけなかったのか。その答えを上空で飛んでいた真竜自身が示した。

 突如何かに飲み込まれるかのようにその姿を消したのだ。


「っ!?」


 それを見てどこに消えたのかと考えることなく横方向へと飛び退けば先程までいた空間を真竜の牙が噛み砕き、そのまま猛烈な勢いで地面を滑る真竜の姿を確認できた。

 地面を滑りながらも首を動かしてこちらを見つけた真竜は再び姿を消すが概ねどう言うことなのかわかってきたため慌てることなく回避する。


 すると目の前にこちらに背を向けた形で真竜が現れると同時に正面を爪で薙ぐのが見えた。

 どうやらこの真竜、転移かそれに近い能力を有するらしいな。

 そのあたりはさすが「次元の狭間の守り手」なだけある。


 しかし姿を消してから現れるまでにいくらかタイムラグがありそれを考慮すれば俺の能力の方がずっと速い。

 確認してからでも回避は余裕のようだし。

 だからといって油断できるわけではないが、気持ち的に余裕が出てきた。


 「さて、避けてるだけじゃ終わらないよな」


 わざと真竜の正面、それなりに離れた位置へと移動しながら呟く。

 これは真竜がブレスを使ってくれないかという思惑があったからだ。

 だが真竜はどういうわけかブレスを放つでもなく、転移するでもなく、爪を高々と振り上げた。

 どう頑張っても届くはずがないというのに構わず爪を振り落ろそうとするその動きに嫌な予感がして、爪が降り下ろされるその瞬間に横へと大きめに回避した。


 「なっ!? ……マジかよ」


 そして先程まで自分がいた場所、というよりは真竜が降り下ろした爪の軌道の延長上の空間が断裂し、蜃気楼のごとくその先の景色が歪んだのを見て冷や汗が流れた。

 それを見て察せないほど鈍いわけじゃない。

 ようするに真竜は空間を切り裂いたということだろう。

 いや、ここは次元の狭間だし、切り裂かれたのは次元だろうか。

 実際、歪んだ景色の先にはなにやらこの空間とは別の景色が混じっているし。

 どちらにせよとんでもない攻撃だ。

 なにせ、振り下ろしてから空間が断裂するまでにタイムラグがなかった。


 真竜に近いところから斬られていくわけでなく、遠いところも近いところも爪が振り下ろされるのと同時に断裂していたのだ。

 いや、もしかしたらそれなりに時間差はあったのかもしれないがそれを認識できないのであれば無いも同然。

 そしてそれが意味するところは今のこの距離はまずいということだ。


 なにせ、離れていようと相手からしたら目の前にいる存在を相手にするのと変わらない攻撃をすることができるということなのだから。

 でもって必ずしも大振りする必要も無いかもしれないし、連続で放つことはできないなんていう制限があるとも限らない。

 高速移動で事前に避けることは可能だろうが、それも相手の動きをよく見ていればの話。

 高速移動後は俺だって状況を認識しないとけないのにその時を狙われたら流石に危ないだろう。

 ならば。


「やられる前に、やるしかないっ!」


 気合を入れて、一声。

 同時に地を蹴って踏み出す。

 もう様子見や観察もしていられない。

 隠し玉があるかもしれないがそれすら出させず、倒すしか無い。


 高速移動時の攻撃でダメージが与えられるのかは未確認。

 そもそも高速移動時に攻撃ができるのか。

 できる気はしているが、それだって非常に感覚的であり希望的観測に過ぎないのかもしれない。

 だけどそんな不安は全部胸の奥に押し込んで、代わりにどう行動するかをイメージした。

 一瞬で迫り、真竜の下側へと潜り込み、手当たり次第に斬り刻み、駆け抜ける姿を。


 そしてそのイメージと同時に動き出した瞬間。

 視界はわずかな間暗転し、そしてまた開けた。


「っ……ぐぅ!?」


 すぐさま状況を確認しようとするよりも先に激しい頭痛を感じて呻く。

 と、同時に先ほど自分が取った行動の全てが瞬間的にフィードバックされ、その情報量に押しつぶされそうになり、意識は自身の内側へと集中した。


 だが、それも僅かな間のことで頭痛は治まり次第に外側へと意識を向けれるようになった。

 なんとか周囲を見渡せる程度には回復したところで、慌てて真竜の姿を探し――見つけた。


「無傷……?」


 ありえない。

 フィードバックされた情報ではダガーによる斬撃は確かに真竜を斬り裂いていた。

 真竜の巨体からすればダガー程度の傷が一つあったところで問題は無いのかもしれないが移動中に行った斬撃の数は万を遥かに上回る。

 それだけ斬られてなお無傷でいられるはずがない。


 もしくは先程の情報は俺の願望でしかないとでも言うのか。

 思わず歯ぎしりしそうになったところで真竜が動く。


 既にこちらの動きにも慣れたというのか特にこちらを探す動作も無く俺の方へと顔を向けた真竜は――


「グァ……」

「えっ?」


 ――小さなうめき声を上げ、身体の下側から大量の血を吹き出して地に倒れ伏せたのだった。





 真竜が倒れたというのに俺はその場を動けずにいた。

 本当に倒せたのか、いまいち確信できなかったからだ。

 だが、それも束の間のことだった。



 チュートリアルクリア

 次元の狭間の守り手を撃破しました。

 クリア報酬として真竜の牙を入手しました。

 翼に一切ダメージを与えずにクリアした報酬として次元の翼を入手しました。

 あなたは異世界へ渡ることを認められました。

 異世界へ転生しますか?

 YES / NO



 唐突に目の前に情報ウィンドウが表示される。

 ああ、どうやら本当に倒せたようだ。

 そしてなにやらアイテムも貰えたらしい。

 牙はそのまま牙で加工すれば武器になるらしい。

 もう一つのなんか入手方法が特殊っぽい翼も材料かなと思ったのだが、素材アイテムではなく装備アイテムでもなくまさかの消費アイテムだった。

 選択肢が浮かんでいるこの状態でも使えるようなので思い切って使ってみる。

 すると、三角形の一辺をかなり長くしたかのような半透明の翼が背中から少し離れた位置に発生した。

 ……この説明、伝わらんな?

 でもホント、そんな感じなので仕方ない。


 それにしても、これ。

 翼って言うからには空を飛べるんだよな?

 どうやったら飛べるのだろうか……まあ、それは後でいいか。


 ひとまず目の前に浮かんでいる選択肢を選ばないとだな。

 もちろんキャラを作りなおす気も無いのでYESだ。

 これが小説ならモノホンの異世界にレッツゴーするパターンだ。

 まあ、そんなことになるわけがないだろうから気にせずポチッとYESを選択すれば光に包まれ何処かへと転送されていった。






 そうして転移した先は見知らぬ平原だった。

 右を見れば20mはあるのではないかという巨人がいてプレイヤーと極大の魔法の打ち合いをしてその衝撃波で激しい風を周囲に巻き起こしていた。

 左を見ればやはり巨人が居て、こちらの巨人はその巨体からは信じられないほどの速さで拳を地面に叩きつけるようにしてラッシュを繰り出し、そのラッシュを真っ向から同じくラッシュでプレイヤーが相殺していたが、そうして散ったエネルギーが周囲の地面へと向かい周囲一帯に地震を起こしていた。

 なんという光景。

 なんてでたらめなこの世界。

 っていうか……。


「これ、異世界転生じゃなくて異世界転移じゃね?」


 赤ん坊時代なかったんだけど。

 あ、でも設定的には一度死んでるし転生……なのか?

 んーどうなんだろうか。

 まあ、いいや。


 とりあえず視界を左上に固定して、VR表記が出ることとログアウトも可能なことを確認したら正面で主張している半透明の結界に覆われた街へ行くとしよう。

 そういえば真竜倒した時に得た翼の詳細見てないな。

 今のうちに確認しておくか。



〈次元の翼〉

 次元の守り手を倒して得た翼。

 翼の展開はオンオフ可能であり、展開していると最大30分の間、自由飛行できる。

 飛行速度はプレイヤーの速度依存。

 展開してから30分後には強制的に解除され、一度床などに足をつけないかぎり再展開不可。

 ただし一瞬でも足をつければ即座に展開は可能。



 ふむふむ。

 多少制限はあるようだがなかなか便利なもののようだ。

 30分以上飛んでいたら強制解除で落下するのだろうがそれも30分毎に着地すればいいだけだしな。

 で、肝心の飛び方は?

 展開してたら自由飛行できるってあるけどそれじゃ全然わからないんだけど。

 今展開しているけどどうやって飛ぶのかさっぱりわからん。


 説明なくてもわかるということなのだろうか。

 うーん。

 ひとまず集中して身体とかの感覚を確かめる。

 手足の動き、呼吸したときの動き、風に揺れる髪の感覚……ん?


 ふと変な感覚があった。

 身体のどこでもない場所で何かがフワフワと漂っているようなそんな感覚だ。

 おそらくこの何かが飛ぶために必要なのだろうと思うがこれをどうするのだろうか、と考えたところでふと周囲が暗くなる。

 違う。

 何か巨大なものに陽が遮られて影に覆われたのだ。


「っ!?」


 慌てて前方へと回避して反転すると、巨大な腕が地に深々と突き刺さる瞬間を目撃した。

 その衝撃で地面が砕け、破片が飛び散る。

 いや、破片というにはあまりにも大きいそれは岩というべきだろう。


 そんな無数の岩が襲いかかってきた。

 大きく回って先ほど攻撃してきた存在の背後へと移動。

 見上げるほど大きな背中が見える。


 それはさっきから周囲にも居た巨人だった。

 全く、周囲でプレイヤーが戦っているんだから俺だっていつエンカウントするか分かったもんじゃないってのになんでこんなところで考え込んでいたのか。

 そんな自分に腹が立つが何よりもまずは目の前の巨人だ。

 一体どれほど強いのか、チュートリアルでドラゴンを出してくるこのゲームだ。

 全く油断はできない。

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