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VRゲームで遊ぼう  作者: イントレット
レジェンドオブシルバ(シングルRPG)
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レジェンドオブシルバ1

 かつて多くのゲーマーが求めた、その世界に意識を潜り込ませる形の仮想現実ヴァーチャルリアリティシステム、俗にいうダイブ型VR技術。そのVR技術が軍事や医療など様々な分野で広まっていきその波はついにゲーム業界へと到達し、多くのゲーマーが喜びに興奮したのも今は昔のことだ。

 すでにVRゲームは、否、VR技術はこれまでのPCにかわる新たなスタンダードとしての地位を確立し、あらゆるものに取り入れられるようになっている。

 だから今では人々は数多くあるVRゲームを自分の好みに合わせて選び遊ぶことができるのだ。


 そんな素晴らしき時代に生まれた俺は今、大学卒業仕立ての22歳といったところだが、ある理由から幸運にも四六時中遊んでいても尽きないお金を持っている。

 金なんて関係なく成したい何かがある、なんてこともなかったので俺は職に就かなかった。故に時間は腐るほどある。

 そんなわけで俺はゲームで遊び、ついでにそのプレイログを残すことで時間を潰そうと思う。


 記念すべき最初のVRゲームのタイトルは「レジェンドオブシルバ」というRPGである。

 このゲームはそれなりに古いゲーム、というよりもVRゲームが現れてから初めての国産RPGである。

 VRゲームでRPGというと何故かVRMMOが思い浮かぶがこれは純然たるシングルプレイRPGだ。


 まあ、こんな前置きはどうでもいいだろうからさっさとプレイすることにしよう。

 なお当プレイログにはある程度のネタバレが含まれる。

 未プレイの方はその辺りご理解していただきたく思う。






 そうしてゲームを起動してすぐに視界が開けた。


 村と思われるモノが燃えていた。

 轟々と燃え上がる赤い炎に熱された空気が肌を焼き付ける。


 俺はその光景を黙って見ていることしかできなかった。

 朝までは元気だった家族が、いつも良くしてくれるおばさんが、ちょっと下品だけど楽しい話をしてくれたおじさんがその炎に燃やされていく光景を見ていることしかできなかった。

 そんな光景を見て悲しさも怒りも感じる前にただただ呆然とするしかなかった。


 ……そういうことになっている。


 

「なんで……こんなことに……」


 俺の口から俺のじゃない声が漏れる。

 体は相変わらず動かせず視線は燃える家々に固定されている。


 とりあえずこの状況はあれだ。

 オープニングだとか導入だとかそういうのだろう。

 うん、まあ村が燃えてたら動転するか今のように呆然と固まるしかないとは思う。

 さっきからそういうモノローグが目の前の光景とは別に流れてきてるしここからこの少年の物語は始まるのだろう。


 この少年のとかいうけど一応感覚的には俺こそがその少年だ。

 何を言ってるのかよくわからないと思うがなんというか今の俺はこの少年に憑依している状態とでも言うべき状態だ。

 憑依してるけど体の支配権は俺に無くイベントに決められたポーズを取らされ続けている。


 はっきり言って苦痛だ。

 感覚で言えば自分の体だと感じられるのに全く自分のいうことを聞かない。

 気持ち悪い。


 なぜ、世界に直接入り込んだかのように自由に動けるのが売りのVR技術を使ってこんな仕様にしたのかなんて思ったりもしたけど、まあイベントで体が自由に動かせないってのはこの際いいだろう。

 この状況で下手に自由に動けるとふざけた行動して雰囲気ぶち壊しにもできるわけだしな。


 そもそも最初だけの仕様という可能性もあるわけだし。


 そうしてモノローグが終わると視界は暗転する。


「おい! 大丈夫か!?」


 暗転すると同時にそんな声がかけられてきて体がゆすられる。

 どうやら先程までの光景は夢ということらしい。

 閉じた記憶のない目を徐々に開いて目を覚まし顔を上げれば鎧を着た青年、ジャスティンの姿がそこにいた。

 名前が分かったのは頭の上にドンと名前が表示されているからだ。


「あ、ああ。ちょっと夢見てたわ」

「……また村の夢か」

「ああ。まだまだ忘れられそうにないな」


 そう言って俺の顔が強制的に苦笑を浮かべる。


 ……まだこの仕様である。


「……忘れる必要はないさ。その怒りを奴らにぶつけてやろうぜ」

「ああ!」

「っと、そうだそろそろいつもの訓練が始まるってこと伝えに来たんだった。もう大丈夫ならさっさと行こうぜ」

「おっと、もうそんな時間か。サンキューな」


 そう言って寝床から立ち上がりそばにおいてあった鎧を装備し、剣を手に持つ。

 ここでようやく体を自由に動かせるようになった。

 ここに至るまで俺の自由は一切なかった。会話だって勝手に口が動いてそう発していたに過ぎない。

 体感型ゲームだというのにこれはどうかと思う。


 まあうだうだいっても仕方がない。

 まずは現状確認だ。

 首を回し周囲を見る。雰囲気から察するに兵舎かな。

 

 とりあえず近くにあった棚を開けてみる。


 *薬草を入手しました。


 開けたと同時にそんなアナウンスが入った。

 なるほど勇者できるのね。

 いや、初期開始地点の物資を得られたからといって勇者できるって決めつけるのは気が早いか。

 他の場所でやったら盗難として手配されるかもしれないしな。


 ちなみに勇者するとは、図々しく人の家に上がり込みタンスなどを漁って物資を盗む所業のことだ。

 古くからRPGでは他人のタンスの中身は主人公の物なのだと相場が決まっている。

 ゲームによってはこの行動が普通に犯罪として咎められ手配されたりもするが果たしてこのゲームはどうだろうか。

 それはおいおい確かめていくとしよう。

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