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レトロ少女(真奈視点)

彼氏視点とは反対で少し暗めです

「誕生日プレゼントは何が欲しい?」


 彰浩君が笑顔で言うから意地悪したくなった。こんな彼女に嫌気がさせば、彼は私から離れて行くだろう。


「ナノックス一年分」


 間違っちゃいない。今一番欲しいのはナノックス。こんなこと言う私のことなんて呆れてしまえばいい。それでも彰浩君は良いよと言ってくれた。

 本当に欲しかったから。でも普通よりは高くて買いにくい洗剤のことを思い出して、嬉しくて彼の元まですっ飛んで手までぎゅっと掴んでしまった。これくらいは別に、恥ずかしくもなんともない――

 

***


「真奈、彰浩君とデートするの?」

「う、うん」 

「やったね! 彰浩君やさしいじゃん♪」


 友達の久美が喜んでくれるけど、彼を好きな女子生徒らは違う気持ちだと思う。今まで別れてと、何度悪意をぶつけられたか。私にばっかり言うので、ストレスが溜まって彰浩君をガン無視し続けたことがある。

 その度に彼を傷付けて、私が気を向けるまで根気よく粘っていた。折れざるを得なかったのよ。それくらい彼は必死にアピールしてたから。

 カレカノになったのも、お試し期間だと彼には言ってある。それまでに決定的な行き違いみたいなものを起こさないと、この関係は解消されない。


「誕生日か……真奈、あんたとうとう初めてを捧げるの?」

「ぶっ!」


 久美に違うと反論するけど、彼女は思いきってあげるのも良いよ? と言われた。ちょっと待て。どうして私の誕生日に、彰浩君に捧げるの。逆だよ逆……て、これまた違うし。


「女は度胸だよ! ほら、彰浩君がこっち見てる!」

「え」


 背の高い彰浩君は凄く目立つ。それに加えて茶色の髪の毛がごく自然で、太陽に反射すると綺麗に見えるのだ。女の私より綺麗に見えることが少し腹立たしくもあり、ぷいと顔を逸らすと、焦ったような反応をしてくる。

 わんこな彼が可哀想だと久美に言われて手を振り返してやったら、落ち込んでいる様子から一転、また元気いっぱい手を振り返してくれた。


「……彰浩君のバーカ」


 私を純粋な子みたいな目で見ないでよ。

 そんな綺麗な存在なんかじゃない。

 あなたより薄暗く、根暗な昭和女なんだから。


***


「一年分は多すぎてカートには乗らないな。ネットで注文するか」

「彰浩くん、一年分じゃなくても良いから。気持ちだけで充分だよ」


 やっぱり彰浩君はバカじゃないか。

 私の言うことを間に受けて、本当に一年分買おうとするなんて。しかもネットだったら、大量に家に届くじゃない。郵便物で届いたのを見られたら、おばあちゃんに置く場所が無いって怒られる。


『朝の九時からタイムサービスを始めます。タマゴ九十九円~~』

「タマゴ欲しい! お願い、彰浩くん~~!」

「あ、え?」


 これ見ていっそ、引いてしまえば良い。

 こんな所帯じみた私のことなんて忘れて、他の女の子でも誘えって付き合えば。何か一言でも文句があれば、私はそれをネタに酷い言葉を連ねて突き離してやれるのに。


「終わったな、一苦労だったぜ……」


 あくまで自分のことであり、私を乏しめるような言葉は聞けやしない。でもまだ次がある。


「まだよ、彰浩くん」


 真骨頂のレジ前に彼は後ずさりした。そろそろかしら。私と居るとろくなことがないと蔑むはず――だけどおかしい。人ごみに揉みくちゃにされつつも、私をしっかり誘導して彼自身が犠牲となっているではないか。痛くはないの? 苦しくないの? 私を守ろうなんて思わなかったら、二人で痛みを共有できたのに……?


「…………ごめんね、彰浩くん」

「な、なんてことない。気にするなよ」


 ぽつりと呟いた言葉は、しっかり彰浩くんの耳に届いていた。彼は痛みなど皆無だと微笑んでくれる。だれが、彼をこんな目に遭わせてるのか分かってるの? 他の誰でもない、私じゃない――


***


「彰浩くん、今日私の家にこない?」

「えっ! えぇっ!」


 スーパーに来てくれた彼を労うつもりで家に誘う。決して邪な気持ちを彼に抱いてわけじゃない。最終手段でもある我が家を見て、彰浩君の反応を見るつもりだ。


「嫌なら良いの「いいい、行くよ! 行きたい!」」


 この喜び用も、我が家に着くまでだ。かつての友達に見せた感想は「古すぎて傾きそう」だった。その子とは距離を置き、今ではクラスも違って疎遠となっている。

 彰浩君も同じ反応を示すだろう。彼との仲もこれきりだ。良かったじゃないかと、自転車を押して進むには足が動きにくい帰り道となってしまった。今なら、心に深い傷も付かずに別れられるから。


***


「ここが我が家。どうぞ、彰浩くん」

「……」


 やっぱりね。誰が見ても顔ポカーンな感じするって分かってるのよ。彰浩君とはこれまでね、お別れしようという目線を向ける。けれど彼からは何も言葉を引き出せなかった。惜しいかもしれない、でもあとひと押しだ。


「お邪魔します……うおっ」

「お隣の子どもが走り回ってるのね。ここは薄い壁だから、けっこう聴こえちゃうかも。ゆっくり座ってて。麦茶出すから」

「あ、ありがとう」


 台所に行って内心焦る。

 なぜ彼は蔑む目線一つも向けないのか。おかしい、今までの人達の反応とは全く違う。素を出さないように細心の注意を払っているのか。このままではいけないと思う反面、嬉しい気持ちがせめぎ合う。私はどうしたらいいの。このままなら、カレカノお試し期間を過ぎてしまうではないか。


「彰浩君、どうぞ」

「ありがとう――っ?」


 私の姿に驚いているけど、エプロン姿がそんなに似合わないのか。そんなに似合わないならすぐにお帰り頂いても構わないのに。


「はい、ティッシュ」

「え、どうしたんだ、いきなり」

「鼻から血が出てるよ? 拭かないと」


 ゴシゴシゴシ


「ふごごっ」


 バカバカ、と力を込めて鼻血を拭くと、彼は痛がっている。少しはせいせいした。ふん、早く正体を現しなさいよ。私を好きなのは嘘ですってね。 

 そうこうしているうちに、玄関のドアが開いた。やばい、この状態をおばあちゃん達に見せると心配される。


「今どきの若者には珍しいね。礼儀正しいじゃないか。昔のわしそっくりで!」


 おじいちゃんはチャラ男には煩いのよ。それなのに彰浩君てば、初対面なのに好印象もらってる。


「まぁ、おじいさん。ほら、近くでわらび餅買ってきたの。真奈と彰浩くんもお食べなさい」

「ありがとう、おばあちゃん。彰浩君も食べよ」

「ありがとうございます」


 私のために買ってきてくれたわらび餅……お客さんでもある彰浩君を無視して一人で食べるわけにはいかない。しょうがない、彼にもおすそ分けとうことで、フォークを持って手渡した。

 彰浩君と私は、口の周りにきなこをいっぱい付けて笑い合う。このとき、私は半ば諦めた。彼を採点して試すのはもう無理だ。おばあちゃんやおじいちゃんに気に入られた時点で、私の負けである。


***



「また、いっしょに買い物しようね」

「あぁ。いつでも言ってくれ。真奈と一緒ならどこでも行くよ。ナノックスでも洗剤でも買いに行くよ」


 社交辞令なのに彼は甘めの言葉で私を誑かす。どうしてこんなに彼との温度差が出来てしまったんだろう。自分が情けなくてこんなに嫌気がさしてるのに、彼は諦めずにぶつかってくれる。私は、信じても良いのだろうか。

 

「……きたいの」

「ん?」

「次は柔軟剤が欲しいの! だから、その……」


 しょうがないから、彰浩君の隣でいてあげる。

 我がままとか聞いてもらうんだから。イヤとか言ったら減点していくからね。

 



レトロな部分が出せず無念…ただの恋愛小説になっちゃった(テヘペロ)

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