獣は月に吼える
誰かを求めていました。
ずっと。
生まれた時から。
いいえ。
生まれる前。
“私”という存在ができる前から。
太古の昔。
この世界に、“人間”という存在ができる前から。
誰かを求めていました。
ずっと。
その誰かに、何かをもらいたくて。
その誰かに、何かをあげたくて。
でも、その誰かは現れない。
求めて、吼えました。
応える声を待ちました。
誰も応えませんでした。
私は啼きました。
身体を震わせ。
大粒の涙を流し。
どこまでも冷たい月を見上げて。
啼いて。啼いて。
啼き疲れて、眠って。
そして。
また待ち続けました。