青い羽根にまつわる収録されなかった短文(4)
さて。
前回の話の続きだが、実は僕とケイの会話の一部を割愛していたりする。
というのもまあ、例によって本文に組み込む訳にはいかない、荒唐無稽な内容だからである。
流れとしては、ケイが自分の家庭の事情を話し、スッキリし終えたところからの続きとなる。
ケイは、僕の胸元を指差した。
「それにこの旅、お主の青い羽根の件もあるしの」
「これか」
ジャンパーの内ポケットには、不思議な力を宿した青い羽根を忍ばせてあった。
「拾ったと言ったの?」
「ああ、ヒルマウントのパレードで。てっきり、あれに出てたチルミー役の人の羽から落ちたのかと思ってたんだけど、違うらしいよなあ」
「それじゃがの。ほぼ同時期、近い場所で青羽教の支部が襲撃に遭ったという話じゃ」
「バスの中で見たニュースだな」
「そして、その騒ぎに乗じて、ユアン・スウ教授や他拉致されていた学者達が逃げ出した。教授の話では、信者達がお迎えが来た祈りが届いたと大騒ぎしておった。それを見計らうように、謎の人物がその支部を壊した……なるほど、信者の言うお迎えとは何じゃ?」
「え……」
思い返してみると、確かに教授はそんな事を言っていた。
お迎え。
何を迎えた? いや、誰を、か。
「彼奴等の教えとは、神を迎える事であろ? 報道が規制しておったのかもしれぬが、そうではなくそのまんまの情報が流れておったとすれば、お迎えしたそれはどこに行ったのかのう?」
その、お迎えしたモノに関しては、ニュースでは流れていなかった。
つまり、その前に逃げ出した。
それは、おそらく空を飛べる。
その真下で、パレードが行われていたとして……。
「……よく分からないけど、偶然僕の頭上を、通り過ぎたって事?」
「主語が非常に曖昧じゃが、それなら一応の説明がつくであろ? そして昨日今日の出来事から鑑みるに、捨てるのは悪手じゃの」
「価値的にもね」
これが、その、本物だとしたら国宝級どころじゃない。
神器とか宝具とか、そんなクラスの代物だ。
「うむ。じっくり調べてみたいところじゃが、それは後回しじゃ。あと、それとは別に、こうなるとあと二人、出て来る覚悟はしておいた方がよかろ」
「それについては、深く考えたくない。僕はあくまでただの旅行者だ」
「ま、そこはそれでよいと思うがの。他者の思惑など、妾達の知った事ではない」
「だよな」
変に使命だの言われても、困る。
「何にしても、妾としては面白い。脳がバシバシ刺激されまくりなのじゃ」
「ああ、あれか、インスピレーション」
そういう意味では、ケイの旅の目的は順風満帆と言ってもいい。
「うむ。不老不死に加速能力、記憶移植を用いた転生術と来て、次に何が出てくるか楽しみなのじゃ。くくく、今宵は興奮して眠れぬかもしれぬ……」
「いや、そこはしっかり寝てくれ。明日、寝不足のままじゃ困る」
そして僕らは、喫茶・蒸気屋を出た。
以上。
次に白戸先生視点での、ケイのお父さんとの今後の打ち合わせ風景を以て、二日目は終了となる。