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ガストノーセン五日間の旅   作者: 丘野 境界
第二章 巨大都市・グレイツロープ
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突発イベント

「嘘だろ、おい」

 尿意を催し、川とは反対方向にあった小さな公園のトイレに入り、スッキリするとケイが消えていた。

 ぶわっと全身から脂汗が噴き出るのを自覚する。

「おーい、こっちじゃこっち」

 だから、そんな声が堤防の方から掛かって、僕は安堵でその場にへたり込みそうになった。

 そして大慌てで石の階段を駆け上がり、小さな手を振っていたケイに詰め寄った。

「か、かかか、勝手に行動すんなよ! 精神的外傷(トラウマ)が甦ったじゃないか!!」

 が、ケイ自身はまったく反省していないようだった。

「はははは、すまぬ。つい意気投合してしもうてのう」

「……で、何この人達」

 ケイは、えらく大柄というかいかにも鍛えていますという風な集団と一緒にいた。人数は、十人といった所か。

 皆、動きやすそうなラフな格好で、アームドバッグを背負っている。

 一応聞いては見たものの、大体の想像はついた。

「そこの河原の草団剣しようとしていた集団じゃ」

「平日だぞ。何者なんだよ」

「ふむ、公務員とか言うておったの。それでじゃススム」

 目を輝かせているので、もう何というか、大体分かった。

 さっきからこの()()が悉く当たるのは、ケイがあまりにも分かりやすいせいだ。

「人数が足りないので参加しないかと誘われた。もしくは暇なら付き合え」

「何故分かったのじゃ!?」

「何となく読めたんだよコンチクショウ!?」

「うむ! という訳でやろう、ススムよ!」

 っていうかこれ多分、僕が了解すればって既に言っちゃってるよなあ。

「あのなあ、僕もお前も運動音痴だろうが。足引っ張るだけだぞ?」

「こういうのは、参加する事に意義があるのじゃ」

 むん、と無い胸を張るケイ。

「というかぶっちゃけ引き籠もりだった妾じゃ。外で遊ぶなど機会がなかった。是非やってみたいのじゃ」

「……そう言われると、弱いんだよなあ。念の為確かめるけどそれ、やっぱり僕もやるのか?」

 時計を確かめると、まだ昼前。

 まあ予定としては問題ない。

 今日の大きな予定としては、ほとんどグレイツロープ城を見て回った時点で終わっているのだ。

 電気街とか繁華街は、夕方ぐらいでもいい訳だし。

「向こうには、二人いる、と言ってあるのじゃ」

「ついでに、すんげえ下手だぞ、とも言っといてくれ。期待されても困る」

「大丈夫じゃ。初めてでも優しく手解きしてやる。美少女ならなお嬉しいが、野郎でも我慢するぜだそうじゃ」

「……帰りたくなってきたぞ、おい」

 何か向こうにも伝わるモノがあったのか、リーダーっぽい刈り上げた金髪のナイスガイが、グッと指を立ててきた。



 そんなこんなで突発イベント、河原にあるグラウンドでの団剣である。

 さすがに僕達も着替えないといけないので……という事で、僕は予備だというTシャツを借りた。……でかい。

 ケイもジャージを借りていたが……うん、一番小さいのみたいだけど、それでもダボッとしているぞ。

 そんな運動音痴二人の参加でお送りします。

「団剣のルールは知っておるかや?」

「僕を舐めんな。こう見えても国内ランカーだぞ」

「どこの世界の話をしておるのじゃ?」

「どうせ二次元だよ!! いや、一応3Dになるのか? とにかくゲームでならいくらでも経験はある」

 そしてそれをインストールしてた携帯ゲーム機は、今は修学旅行団体の所にある荷物の中である。

 いやそれならまだいいんだけど、最悪K原のリュックの中にいつの間にか、とかいう事もありえそうで怖い。

 と、ネガティブ思考ここまで。

「現実ではどうなのじゃ?」

「……一応、体育の授業でなら。あまり思い出したくないけど」

「ま、とにかく準備じゃの。妾達も手伝おうぞ」

「はいはい」

 土の盛られたグラウンドで、僕達が着替えている間にもう準備は始まっている。

 いくらゲスト(お客さん)とは言え、手伝うのが礼儀だろう。

 等間隔に長く引かれた直線は、十本あった。

「シンプルな『回廊戦』か」

 グラウンドの石拾いをしながら、ルールを思い出す。

 これを読んでいる人で知らない太照人はいないだろうから、退屈な人はここは読み飛ばしてもらっても問題はない。

 団剣はこのガストノーセンがルーツのスポーツで、巡り巡って太照国にも輸入された。こちらでの呼び名はソードコンバット。

 様々な武器を持ち、相手の(チーム)を討ち倒して全滅させる。

 もしくは向こうの陣にある旗を奪う。

 この二つがチームでの勝利条件となる。

 武器はカイタイという軽いスポンジのような素材で出来ており、思いっきり振っても大して痛くない。そして当たれば『ポン』と大きな音が鳴る。

 防具はヘルメットのみ。

 相手に当てれば、こちらの勝ち。当てられれば、こちらの負け。自己申告制だがまあ、武器自体が音を立てるので大抵、揉める事はない。

 金を掛けた連中は、より精度の高いセンサー付きの武器を使用したりするのだが、大抵このカイタイ製で充分だ。

 そしてこの団剣は、基本団体戦だ。

 ここでは、スタンダードな『回廊戦』で説明する。

 六人一チームが基本だが、大規模戦と呼ばれる何十人も参加する形式も、あるにはある。が、ここでは割愛する。

 つまり、六対六での戦いだ。

 それぞれの選手は、グラウンドに引いた(ラインに)沿って動く。これが道に当たる。

 この『回廊戦』では、まだ縦にしかラインは引かれていないが、もちろん横の線も引かれる。

 それぞれの縦線とを繋ぐ横線は、一本ずつ真上から見下ろすと階段状に計九本。

 これに、互いのチームが任意に引く五本×2が加わる。これはそのチームがどういう攻めを行うかが関わるので、とても重要だ。

 なお、このスタンダードな戦場である『回廊戦』以外にも、前述の大規模戦『魔王城攻略』や十角形の『大蜘蛛退治』などが存在する。

 選手にはそれぞれ個性があり、当然役割も異なる。

 ファイターは二種類の武器、つまり二刀流が認められる。またすべての種類の武器を使う事が可能だ。

 ガーディアンはカイタイ製の盾を使える。つまり防具が認められるのだ。

 スカウト。これはラインを無視出来る。ただし武器はグローブのみしか認められない。

 ヒーラーは、倒れた仲間にタッチする事でその線種を復活出来る。ただし自分は認められない。

 ハンターは飛び道具であるボールが三つまで使える。補充には陣地に戻らなければならない。

 マジシャンは(ライン)ブロックとクリエイト、すなわち横線を消し、またその分新たな横線を作り出す事が出来る。武器は(ロッド)のみ。

 最後にコマンダー。これは上記三つの職業特性を同時に使う事が出来るチームリーダーだ。例を挙げればガーディアン、スカウト、ヒーラーを取れば、盾を持ってグラウンドを自在に動き、仲間を回復する事も出来る。ただし、一チームにつき一人しか作れない。

 ……といった具合だ。

 ご理解頂けただろうか。

 そして現在、ここには十二人いる訳で。

「後で何人か、増えるそうじゃぞ」

 だろうね。普通人数揃えてから、やるもんだよね。普通審判も必要だしね。

要するにあみだくじ+スポーツチャンバラ+サバイバルゲーム、と思って頂ければ結構です。

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