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ガストノーセン五日間の旅   作者: 丘野 境界
第一章 始まりの地・ヒルマウント
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龍の逸話と宝玉に関する仮説

「うむ。髪の質といい、顔や全身の骨格といい、肉つきといい、よく似ておる」

 絵画を見上げ、ケイはユフ王を評する。

「どういう区別の付け方をしてるんだ、君は」

「むむ、そう思うのは妾だけか?」

「いや、まあ、そう言われると……」

 確かに、絵の彼女と隣にいるペンドラゴンさんはよく似ている。

 が、いくら何でも千五百年前の英雄がすぐ傍でニコニコしているとか、最近流行りのゲームじゃあるまいし、そりゃないだろう。

 それに、絵だしなあ。国王陛下の肖像画を描くとか、絵師だって美化するんじゃないか……とか思うんだけど。

 いや待て、そうすると美化した絵とペンドラゴンさんはタメを張るって事か?

「国王陛下に似ているとは、なかなかに光栄ですね」

「今、市内ではユフ王とその仲間とか、前の皇帝らの扮装パレードが行なわれているそうじゃぞ。お主が着替えれば、皆ビックリすると思うのじゃ」

「……ええ、まあ、そりゃすごくビックリされると思いますけどね」

 ペンドラゴンさんは、何とも言えない笑みを浮かべていた。

 パレードで見た甲冑を、ペンドラゴンさんに当てはめてみる。

 なるほど、とてもよく似合いそうだ。

 姿勢もいいし、何だか武道の心得がありそうなんだよな、この人。


 なんて話をしながら歩いていると、目の前に長い通路が広がった。

 通路の真ん中に長方形のジオラマが続き、壁には歴史の年表や地図などが飾られていた。もちろん、文章はほとんど読めないが、ジオラマの意味は分かる。

 ところどころに、ユフ王を模した人形が立てられ、狼頭の人形やローブ姿の人形、龍の人形も設置されている。

「ここからは、ユフ王の旅の道程ですね。三人の仲間についてもちょっと触れてます」

 壁を見ると、王の他、三人の仲間の絵が飾られていた。

「狼頭将軍クルーガー、劣等魔術師ニワ・カイチ、(ドラゴン)のルパート……龍?」

「はい?」

 ペンドラゴンさんが首を傾げる。

 そう、僕はパレードの時から、この違和感が気になっていた。

「ルパートは、龍なんですか? 有翼人じゃなくて」

「はぁ、そうですけど……それが、どうかしたんですか?」

「太照では、ルパートは龍ではなく有翼人と伝わっておるのじゃよ。子供でも知っておるお伽噺じゃが、どうやら本場では少し違うようじゃの」

 どうやら、僕の記憶違いじゃなかったようだ。

 ケイと顔を見合わせ、頷き合う。

 大した問題じゃないのかも知れないが、どうしてこんな事になっているのかとなると、それは気になる。

「というか、太照(こっち)がおかしいんだろうな。本場であるガストノーセンの伝説が正しいに決まっておる」

「そうですね。どうしてそういう事になったのか、何となく検討はつきますけど……あはは、まったく……見栄っ張りな種族だなぁ。恥の上塗りじゃないか」

「うん?」

 クスクス、とペンドラゴンさんは苦笑した。

「相馬さんの話だと、ルパートの故郷であるラヴィットにも向かうんですよね?」

「ええ、まあ予算には若干不安がありますけど……多分、何とかなります」

「なら、その時のお楽しみですね。ここで明かすのは勿体ないです」

「宝玉に関しても、資料があるの。実物はないのかや?」

 先に進んだ壁には、丸い宝玉とそれに関する文章が……ああ、読めませんとも!

 ただ、実物の有無に関しては、推測する事が出来る。

「んー、この博物館は基本、村で過ごしてた時期のユフ王に関する資料が主なんだよな。剣と同じであるとしてもレプリカ。展示されているとすれば、シティムじゃないか?」

「鋭いですね」

 どうやら、当たりのようだ。

 一方ケイはまだ悩みがあるのか、うーんと首を傾げていた。

「しかし、この宝玉というのは何なのかや。王には不老不死を与えたが、他の仲間は別に不老不死ではなかったのであろ?」

「そうですね。それぞれ違う性質を持っていた……というか、宝玉は同じだった可能性もありますね」

「うん?」

 ペンドラゴンさんが、何だかよく分からない事を言った。

「……む? 宝玉側ではなく、持つ人間の側によって性質が変わるという事かや」

「そちらは、ありえませんか?」

「じゃとすれば、元々ユフ王は不老不死で……あ、いや……宝玉は、むしろ対象の持っている異能の起動因子(トリガー)? それならば、辻褄は合うが……」

 ケイは自分の頭の中で解決しているのか、僕には何が何だかサッパリ分からない。

「ごめん、何かえらく難しい話、してない?」

「さほどではないが、根拠も何もない与太話ではあるの。妾は歴史には詳しくないが、学説として今の話はあるのかの?」

「さあ? 僕も歴史学者じゃないですから。ただ、ありかなしかで言えば……」

 ペンドラゴンさんとケイが、ニヤリと笑い合う。

「ありじゃの。その方が面白い」

「で、この宝玉は何なのさ」

 最終的な結論を僕が求めると、うむ、とケイは深々と頷いた。

「不思議な玉じゃ」

「結局何も、分かってないじゃないか!?」

 ちなみに宝玉の由来に関しては、シティムの大博物館にあるとペンドラゴンさんが言っていたので、しっかりメモしておく事にした。


 通路を進む。

 グレイツロープのジオラマに、赤い頭巾の魔女ズッキーニの人形が飾られている。

「皇帝直属の幹部・六禍選。物語には出て来るけど、詳しくは知らないんだよなあ」

「妾もじゃ」

「太照では、どのように伝わっているんですか?」

「いや、単純に宝玉に導かれて集まった四人の勇士を阻む、皇帝直属の六幹部って話でさ、バッタバッタと薙ぎ倒したっていうお話。強いって設定はあるんだけどね」

「具体的にどう倒したとかは、ないのう。いや、おそらくちゃんと読めばあるのじゃろうが……妾達のソースは基本、絵本じゃ」

「だよなあ。昔、映画にはなったらしいけど、観てないんだよ」

「ここは、映画の都ウーヴァルトですんごい予算を組んでじゃの、何部作かの一大絵巻とかやって欲しいの。大ヒットするのじゃ」

「需要はありそうだけど、すごい時間掛かりそうだな」

「CG編集の機器ぐらいなら妾が調達してやるのじゃ」

「何者だ、君は」

 そんな僕達を見て、ペンドラゴンさんが先を促した。

「じゃあ、六禍選について、せっかくですからちょっと紹介してみましょうか」


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