1/1
あのときりんごを拾って後悔した魔女
夜の7時。
駅のホームは帰宅する人たちでいっぱいだ。
そんななか
あたし北条 輝羅は
部活疲れで
電車がくるのを待っていた。
平和に朝が始まって
平和に一日が終わるのかと
年寄りくさいことを毎日思うようになった。
そんなこと考えるのは
今日で終わりだということを知らずに…。
あたしは、
ウォークマンを聴きながら
携帯を使っていた。
下を向くような感じで画面に集中していたら
足元に、
りんごが転がってくるのが見えた。
(こんなところにりんご…?)
りんごを拾って、転がってきた方向を見ていたら
若い男が、買い物袋を引っくり返し転んでいた。
絶対恥ずかしいだろうなと思いながら、
あたしはりんごをその男に差し出して、
「あのー…、大丈夫ですか??」
なんて声をかけてみた。
その男は起き上がり、差し出したりんごをつかみ
「いてて…あ。ありがと」
なんて言われて
男はほかの食材を拾いだした。
もう大丈夫だろうと思い、
タイミングよく電車が来た。
あたしは、
なにも思わず電車に乗った。