きになるあのこ
この作品は『はらいてぇ』『かみがない』の続編です。読んでいない方は、そちらを先に読むことをお薦めします。あと、下品です(笑)
下校途中。俺はかなりへこんでいる。
なぜかって?…フッ……気になるあの子にハーフヒップ(半ケツ)を見られたからさ!
…あの子とは良いところまで行った。夕暮れの公園で不自然な沈黙もあった……。バレンタインデーに手作りチョコも貰った。
そして今日。
そう、ホワイトデー。
色々考えたさ!
あの子は何が好きか?やっぱり可愛いもの?いや、ネックレスとか?いや!気持ちがこもっていればいいんだ!
そしてセーターを買った。
長めの。長めっていうのがポイントだ。もしかしたら
「これ、長いから一緒に巻けるねっ!」
みたいなシチュエーションにも臨機応変に対応できる。
で、当日。
女子トイレでハーフヒップ(半ケツ)。
これ犯罪でしょ?
いや、これ犯罪でしょ?
夕暮れに、一人で歩く、帰り道。
フッ…哀しい詩だな……。
叫ぶ気力さえない。何十回目かのため息をつくと、白い息が舞い、そして消えていく。
俺の足は自然と思い出の公園に向かっていた。
夕日に照らされた、赤一面の幻想的な風景。
中央のベンチ。そこは、気になるあの子と日が沈みきるまで語り明かした思い出の場所だ。
そう、もう思い出なんだ。
そう思いながら、中央のベンチに目を向ける。
気になるあの子が、そこに座っていた。
俺は頭で考えるより早く、足が動いていた。
「アノコちゃん!(名前適当)」
俺の声に、アノコちゃんは俯いていた顔を上げる。
「鈴木君…」
とにかく、このチャンスを逃してはいけない!
「と…隣、いいかな?」
彼女は少し口元を緩め、小さく頷いた。
隣に腰掛けるが、何を話していいのかわからない。
まず、さっきのハーフヒップ事件か?アレの事を説明して、わかってもらえなければ話にならない。
補足だが、プリティヒップからメニーメニー事件は、彼女の耳には届いていない。目撃者が友人だったのが不幸中の幸いだった。友人はこの事件を口外していない。
友人、感謝する。
でも、元を正せば、こいつがどついたからアレしてしまったのか。
友人、絞首する?
まあ、事件の弁明の後、少し世間話をして、場の空気が盛り上がった所で、自然の流れで話題をバレンタインデーに持っていく。
そして、少し間を作り、やさしくプレゼント。
カンペキだ。あとは彼女の気持ち次第。
しかし、実践しなくては机上の論理。やるしかない…やるしかないんだ……!
グルルル……
あれ?今、お腹から死神のうなり声が聞こえたような……。
いや、気のせいだ。
それよりも……
「アノコちゃん。」
「ん…?」
「さっきの事だけ………」
そう言ったところで、彼女が俺の口をふさぐ。
「言わなくていいよ。鈴木君があれだけの事をしたんだもん。きっと何か深いワケがあるんでしょ?」
…天使。天使だ……!
「そうなんだよ!あれには不快なワケがあったんです!」
俺が興奮して立ち上がりながら喋ると、彼女はいつものように、クスクスと笑った。
……第一関門クリア!
次は世間話を……
グリュリュリュ……
あれ?やばいかも……
これは確実に核兵器を産み落とす前の下準備の音だ。
しかし、この雰囲気で
「おいらちょっくらウンチッチしてくるわ!」
なんて言えるか?否、できるわけがない。
くっ、想定外だった…。ココは我慢するしか……。
「この前、掃除機がつまっちゃったんだ!それでね………」
洋式がつまった…?ティッシュでも流したのだろうか。
「ヒデってすごいよね〜!あのキックの威力!どうやったら………」
ビデってすごい…?ヒップに対する威力…?違法改造でもしたのか?
「ビスケットの歌って知ってる?ポケットの中にはビスケットが一つ♪ポケットを叩くとビスケットが割れた♪………」
ウォシュレットのボタン…?
ポケットの中にはウォシュレット一つってどんだけ用心深いんだ!しかも叩いたら割れたの!?
……だめだ!全部そっちの話に聞こえてしまう!
グリュリュリュン…!
まずい…限界だ……!
バレンタインデーの話をして早くプレゼントを渡してしまおう……。
「そ…そういえば、アノコちゃんのチョコ、お…オ…おいしかったよ。」
うっ!なんだかチョコって聞くと、アレを想像してしまう……。
「本当に!?ありがとう!そういえば、友達のみっちゃんも手作りだったな。」
「へ、へぇー。」
「トリュフっていうの?丸いやつ。」
ああ、便秘気味の時にでてくるやつか。
「あの丸さは、職人芸だよ〜。」
そんなに丸かったの!?ていうか見たの!?
「一個食べてみたらすごい甘かったよ〜。」
食べちゃダメ!お腹こわすよ!
「あ、でも凄い硬かったよ。」
うん。それは便秘気味だからね。みっちゃんも久しぶりのお通じだったんじゃない。
キューグリュリュ……
…ダメだ!もうダメだ!
「鈴木君、大丈夫?すごい汗……。」
「アノコちゃん!バレンタインデーのお返しがあるんだ!」
「えっ?ホントに…?」
アノコちゃんは口元に両手をやり、かなり驚いている。
間なんて関係ない!早くプレゼントを!
俺はバックに手を突っ込み、プレゼントを探す。しかし教科書に紛れて中々見当たらない。
早く!早く!早くゥゥゥ!
…ぅ…?……ぁ……
核兵器誕生の爆音(自己規制)
俺はバックから、セーターの入っている綺麗な包みを取り出した。
「あ、これ、セーターね。あとチョコも。形は悪いけどさ。」
「いやぁぁぁぁっ!!」
彼女は叫び声を上げると、公園を振り向く事無く走り去っていった。
俺はその後、公園のトイレで用を足した。
またしても紙が無く、俺はセーターで尻を拭いた。
だから長めっていったんだよ。長めを買って正解だな。うん。
……うん……。
3部作、堂々完結!(?)鈴木君らしい最後でしたね。全部読んでくださった読者さん。感謝です!まだ全部見ていない読者さん。それでも感謝です!くだらない稚拙な作品に付き合っていただき、ありがとうごさいました!