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00 プロローグ

どうしてこんなことになっているんだろう。

確か今日はいつもどおり残業をして、コンビニに寄って適当にお弁当とビールを買って、へとへとで帰宅したはず。


なのに、どうしていまわたしの目の前には、ブロンドの髪の超が10個くらいつくような美女が煌びやかドレスに身を纏い、わたしを見て目をキラキラと輝かせているのだろう。


「嬉しい。やっと成功したのね」


美女は声までも美しかった。

鈴を転がしたような、というのは目の前の彼女のためにあるような言葉に思えた。


「あの、ここは一体…」


薄暗い部屋を見渡すとずらりと本棚が並んでいるのが見えた。

ここは、書庫か何か?


「うふふ。ここはリコリス。そしてわたくしはミレーネですわ。あなたのお名前は?」

「え、えっと、宮子です。更科宮子さらしなみやこ

「サラシナミヤコ。そう、ミヤコというのね」


ミレーネと名乗った美女はくすりと笑い、宮子の手を握ると意味深長な言葉を舌にのせた。



「そして今日からあなたがミレーネよ」





がばりと宮子は飛び起きた。

妙な夢を見たせいで心臓がまだドキドキしている。


仕事帰りに突然フラッシュのような光を浴びて目を開けると、見たこともない薄暗い部屋で、暗いなかでもよくわかる美女がいて、宮子の手を握り謎の言葉を残した。


そんな、夢。


疲れてるのかな、有給も全然とってないし、土曜日も出勤だし…。


ふう、と溜息を吐き、握りしめている布団が自分のものでないことに気付いた。

え、と思い辺りを見渡せば、やはり自分の部屋ではなかった。


ひとりで眠るには大きすぎるベッドも、シンプルだが見るからに高そうに見える家具も、宮子の部屋にはない。


まさか拉致されたとか、いやいやそんなバカな、だってそうだとしたら待遇がよすぎるじゃない。

うちは資産家とは縁をゆかりもない一般家庭だし、身代金を要求したって高が知れてる。

この身なりを見て金持ちと判断するなんてありえないと思う。

会社で大きなプロジェクトに関わっているわけでもない。


心当たりのなさに唸っていると、奥の扉が厳かな音を立てて開いた。


「おはようございます、ミレーネ様。お加減はいかがでしょうか」

「は?」


入って来たのはメイド服を着た高校生くらいの女の子だ。

お世辞ではなくとても美少女な彼女は、畏まった態度でぺこりと宮子に頭を下げる。

どうしよう、まだ夢から覚めてないみたい。


「あの、誰かと勘違いされてるんじゃありません?わたしの名前は宮子です。み、しか合ってないです」

「ええ。存じております」


彼女は深い溜息を吐き、深くお辞儀をした。


「本当に申し訳ございません」

「えっいやあの、名前を間違えることくらい誰にでもありますよ」


年下の、しかも初対面の女の子にこんな反応をされては対応に困ってしまう。

宮子にも後輩はいるが、恐縮や謝罪が出来ない子たちばかりだ。

やっぱりわたしが上司向きじゃないってことかしらと少し落ち込みながら、頭を上げるように頼むと、彼女はきれいな所作ですっと背筋を伸ばした。


「ミヤコ様。いいえ、ミレーネ様」

「ん?」

「誠に申し訳ございませんが、あなた様が今日からミレーネ様なのです」


状況が呑み込めないまま、夢と同じだわとぼんやり思う。

やはりこれはまだ夢の中なのだ。

だって、意味がわからない。



「ミレーネ様の言うことは絶対ですから」




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