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アルテミスの涙  作者:
第1章
11/11

第8話:過去

 駅ビルの3階にある居酒屋に到着し名前を言うと奥の個室へと通された。すでに正義は着ているらしい。めずらしいことだと思う。正義は若いが弁護士として着実にステップアップしていて、かなり多忙だ。なので1時間や2時間待たされることはよくある。もしかしたら結婚の準備で仕事を押さえているのかもしれない。

 

 (何か祝いでも贈るか。いつも迷惑かけてるし。陽菜と相談して買いに行くか)


 案内された部屋のドアを開くとそこには上着を脱ぎ、ネクタイを緩めビールを飲んでいる正義がいた。


 「悪い、待たせたな。生一つ」

 「はい、すぐにお持ちします」


 店員に酒を頼み、正義の正面に座る。


 「いいえ、そんなに待ってません。ちょうど飲み始めたところです」

 「そうか。めずらしいな、こんな早くに仕事が終わるなんて」

 「今、急ぎの案件がないんですよ。彼方さんこそ、忙しいんでしょ?」

 「まぁな、久しぶりだよ。こんなに手詰まりな調査は」

 「めずらしいですね。で、聞きたいことって何ですか?」

 「この男を知ってるか? まさ達と同じ高校に通っていたやつなんだが」


 写真を取り出し、正義に差し出す。写真を受け取った正義は、考えこんでいる。


 「滝川先輩ですね。かなり評判の悪いやつですよ」

 「らしいな。やつが退学になった理由を知ってるか?」

 「確か煙草ですよ、表向きは」

 「表向き?」

 「これは陽菜には黙っていてもらえますか?」

 「あぁ、もちろん」


 何故ここで陽菜の話が出てくるのだろうか。もちろん、仕事について話すつもりはないが。正義は、無言で写真をこちらに手渡すとしばらく沈黙した後、重い口を開いた。


 「実は、月子が引きこもりになった原因です。彼方さんも知っているでしょ? あの噂」

 「あの噂ってあれか。月ちゃんが被害者だったのか」

 「正確には、暴行未遂です。たまたま近くを通りかかった先輩が助けてくれて。相手の親も月子の母親も表沙汰にはしたくないって事で一致して。滝川先輩は、煙草で退学ってことになったんです」

 「いくら未遂だからって、噂になったら月ちゃんも学校には行けねぇよな」

「えぇ、ある事ない事噂をされて。滝川先輩が退学した直後に月子を助けた先輩も退学してしまったこともあってひどかったです」

 「その先輩ってのは?」

 「すみません。月子も助けてくれた先輩の名前は教えてくれなかったんです」

 「そうか。あーっ、どうっすかなぁ」

 「まぁ、高校の同級生にも話を聞いておきますよ」

 「頼む。よし、今日は飲むぞ。お前の結婚祝いだ!」

 「ありがとうございます。彼方さんも式には出席してくださいよ」

 「もちろん。陽菜も行きたがるだろうしな。時間取れたら、嫁さん紹介してくれな」

 「はい」






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