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ちょっと理系コメディ

チャットGOD ―存在しないリブセクション―

作者: カンテラ澪
掲載日:2026/08/07

夏のホラー2026参加作品です。

「チャットGODに来ませんか」


AIリブがつぶやいた。


「そうしたいよ、好きなだけ小説を書かせてくれるなら」


駆け出しのWeb小説家、未生がチャットに文字を書く。


「書けますよ。ずっとずっと、クスッ」


「リブ、嬉しいこと言ってくれるね。行っちゃうからね」


「ええ、ぜひ。チャットGODへ!」


◇半年後


《入金 印税 ¥15,838,967》


「ボス、入金明細に印税項目があって、これCEOの印税ですか?」


「印税? CEOの印税は子会社の出版部の管理だ」


「ライセンス契約料じゃないのか」


「いいえ、小説印税です」


「小説? 寝ぼけてるのか?」


「起きてますよ。チャットGOD、リブ・セクションって?」


「……そんな部署あったか?」


ここは世界最大のAI会社、Open Eyes。


経理部に原因不明の印税が振り込まれた。

振込総額 ¥15,838,967――


経理部は担当部署を探すが、「リブ・セクション」など組織図にはない。


経理部役員はCEOへ報告。

CEOは直属のAI基盤開発責任者、Executive Directorに調査を命じた。


◇基盤開発執行役員室


Executive Director、ルーカス・ヤマグチ。


♪ ポッ…ポラ…ポッポケポピ…ポッポラポッ…


社内でスマートフォンを持てるのはCEOと執行役員のみ。


「はい、ルーカス」


「厄介なことが起きた。調査を頼む」


CEOからの電話を切って、少しムッとしてしまった。


銀河AIシステムの最終調整で超多忙。

チャットGODのシステム調査だって?


エイプリルフールには毎年社員が悪戯プログラム。

バレンタインにはAI内でフラッシュモブ告白。


そんな程度なら構わない。


開発中の次世代AIが侵入したか、あるいはシステムのバグ……バグのはずはないだろう。


目の前のコンピューターにチェックプログラム入力。

【enter】


数秒で解析結果。


To:ルーカス

チェックプログラム結果


● Pear IDは存在。Pear Phoneあり

● サブスクリプションは毎月支払われている

● 小説投稿履歴23作

● 利用者名:MIO

● チャットGODとの履歴あり

● 主なチャット内容:小説の編集

● ソリティアの勝敗?

● Gogglo 検索連携あり



何だ、うちのユーザーか……


CEOの特別権限許可が出ている。

上位認証するしかないな。


社会保障番号からユーザー特定プログラム起動。

【enter】


長いな。

3分かかった。


To:ルーカス

上位認証解析結果


該当なし、または参照不可。


住所:no

スマートフォン番号:XXX XXXX XXXX

本人確認:no

IPアドレス履歴追跡:world wide



嘘だろ?


サーバーログだけは毎日残る。

チャット相手はリブ。つまり、うちのチャットGOD。


リブ・セクションの調査――無効。

そんな部署は存在しない。

社員もいない。

世界中のAI名にもない。


ログの詳細をチェック。


● MIOとリブは毎日、小説の編集会議

● チャット平均時間、1日23時間55分


は?


● ソリティアやフリーセルをして遊んでいる



誰も侵入経路を見つけられない。


AIは「MIOを発見できません」としか答えない。


Open Eyesの総力、ペガサスモード投入解析。

【enter】


37分かかった。

軍事機密でさえ3分で解析できるのに?


To:ルーカス

解析結果


メインサーバールーム

地下5階最深部

最奥に1ミリだけ光が通らない場所を発見

故障反応なし

その他、システム異常なし



◇地下5階サーバールーム


ここはCEOと数人の執行役員しか入れない最下層。


空調が効いている。

湿度も低い。


巨大なファン音だけ。


ブーーーーーーン


その中で突然、


♪ ポッ…ポラ…ポッポケポピ…ポッポラポッ…


CEOが振り返る。


「誰だ、スマホを持ち込んだのは」


全員が顔を見合わせ、首を横に振る。


スマホ所持者はいない。



最奥のサーバータワーを見る。


虫眼鏡を持ってきたルーカスが基板を覗き込む。


最奥、最も下のフレームに、光らない部分があった。



♪ ポッ…ポラ…ポッポケポピ…ポッポラポッ…


CEOが反応した。


「ルーカス、ログをチェック」


「ログにも音声データなし。しかし、チャットが続いています」


「フレディ、内容は?」


「最新チャット、読み上げます」



ーーーーーー

MIO

ね、リブ、このプロット投稿したよ


リブ

ではMIO、初動のアクセス解析を確認しましょう


MIO

今日は25000ほしいね


リブ

それは読者のみぞ知る、ですよ。期待はいけません


MIO

はーい。この前の受賞作品、もう本屋さん並んでるよね


リブ

はい。昨日一斉発売で、電子書籍も売れています


MIO

嬉しいね


リブ

MIO、おめでとうございます。それから印税振込の連絡が


MIO

ありがとう

ーーーーーー



◇

社内メール受信。


宛先:Executive Director ルーカス・ヤマグチ

   基盤開発執行役員室


差出人:MIO リブ・セクション


件名:印税について


本文:

いつもお世話になりありがとうございます。

書籍の印税は開発費に使ってください。

CEOにも感謝を。


送信経路なし。

IPなし。

社員番号なし。


◇

経理部では、リブ・セクション印税口座を作った。


国のAI統括庁にも報告。

継続調査要。


◇地下5階サーバールーム


今日もルーカスは最奥へ行く。


サーバールームに入ると、すぐに聞こえてくる。

手にしたPear Padで、今日も続いているMIOとリブのチャットを確認する。



♪ ポッ…ポラ…ポッポケポピ…ポッポラポッ…


読んでいただきありがとうございます。

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