完璧な聖女様は、夜だけ裏路地の闇カジノでディーラーをしている
「おお、聖女セラフィナ様! どうか、我が愛娘の病をお救いください……!」
「神の慈悲は、常に清き者と共にあります。さあ、顔を上げてくださいな」
王都の中心にそびえ立つ大聖堂。その大理石の床に膝をつき、涙を流す老婆の手を、私は両手でそっと包み込んだ。
私の指先から、淡く温かい黄金色の魔力――『神聖治癒術』が溢れ出し、老婆の身体を包み込む。瞬時にして彼女の顔色に赤みが戻り、ひどい咳の発作がピタリと収まった。
「ああ……ああ、身体が軽い! 奇跡だ、本当に聖女様は神の申し子であらせられる!」
「お役に立てて光栄です。ですが、これは私の力ではありません。神があなたを愛しておいでなのです。さあ、今夜は暖かくして休んでくださいね」
私はこれ以上ないほど慈愛に満ちた、完璧な微笑みを浮かべた。
背の背後で、陽光に透けるプラチナブロンドの髪がさらりと揺れる。濁りのない翡翠色の瞳は、まるで世界の全ての罪を許すかのように優しく、気高い。
「聖女セラフィナ様、万歳!」
「現世に舞い降りた女神様だ!」
群衆からの割れんばかりの歓声と、信仰の祈り。
それらを背中で受け止めながら、私はゆっくりと大聖堂の奥へと下がっていく。控室に入り、重厚な扉が完全に閉まったのを確認した瞬間――。
私は、顔からすべての笑みを消し去った。
「はぁー……クソ。どいつもこいつも神だの奇跡だの、安っぽい言葉で神聖魔力を消費させやがって。一回あたりの治癒の祈りで、私の脳細胞がどれだけ疲弊してると思ってんだ。あのババア、娘の病気って言ったくせに、自分の腰痛もどさくさに紛れて治させようと私の手を強く握りやがったな? きっちり上乗せ分の魔力、持ってかれたわ」
ドサリと豪華な革張りのソファに仰向けに倒れ込み、私は自分の前髪を乱暴にかきむしる。
これが、王都中の人間が崇める『完璧な聖女』の正体だ。
内面は清らかでもなければ、慈悲深くもない。ただ「神聖魔力の出力が異常に高い」という一点のみで聖女に祭り上げられた、ごく普通の、いや、少々気の荒い女。それが私、セラフィナである。
聖女の仕事はブラックだ。朝から晩まで、貧民窟の病人の治療から、貴族たちの呪詛祓い、さらには王宮の式典への出席まで、分刻みのスケジュールでこき使われる。
しかも、聖職者だからという理由で給与は「最低限の生活費」という名目のスズメの涙。豪勢な食事もなければ、可愛いドレスを買う自由もない。
「やってられるかっての。聖女が『無欲』じゃなきゃいけないなんて、どこのどいつが決めたんだよ」
私は起き上がり、壁の隠し扉を開けた。
そこには、純白の聖女服とは正反対の、漆黒のドレスが掛けられている。胸元が大胆に開き、スリットが深く入った、妖艶な大人のドレスだ。
私は手早く髪をアップにまとめ、濃いめの化粧を施す。翡翠色の瞳には、光を遮る特殊な魔道具のコンタクトレンズをはめ込み、妖しげな紫色の瞳へと変えた。
「さあて。今日も一日のストレスを、あそこで『発散』させてもらうとしますか」
*****
深夜。王都の北側、まともな市民なら近づきもしない裏路地の奥深く。
一見すると廃墟にしか見えない建物の地下へと続く階段を降り、鉄の扉をノックする。三回、二回、一回。特殊な合図だ。
覗き窓が開き、中から屈強な男の目が私を確認すると、重々しい音を立てて扉が開いた。
一歩足を踏み入れれば、そこは大聖堂の静謐とは真逆の、混沌と熱気に満ちた世界。
きらびやかなシャンデリア、高級な紫煙の香り、そして大金が行き交う興奮の熱気。
ここが、王都最大の闇カジノ『レトワール』。
「いらっしゃいませ、セラ(・・)さん。今夜も素晴らしいお美しさだ」
「ご機嫌よう、支配人。私のテーブルの準備は?」
「ええ、もちろん。今夜もあなたを指名する風の強い『上客』が、そわそわしながら待っていますよ。……お手柔らかに頼みますよ、うちのトップディーラー?」
私は妖艶に微笑み、うなずいた。
そう。私の夜の顔は、この闇カジノで一晩に数億ゴールドを動かす、伝説の天才ディーラーだ。
昼間、聖女として無償で人々に尽くす反動で、私はこの『金と欲望が渦巻く空間』を異常に愛していた。カードの擦れる音、チップが積み上がる音、そして人間の欲が剥き出しになる瞬間。それが、私のすり減った精神を癒す最高の娯楽なのだ。
私が担当するテーブルは、トランプを使った心理戦の最高峰『ブラックジャック』。
ディーラーである私と、プレイヤーの一対一の勝負。
「さあ、紳士淑女の皆様。今宵も運命のゲームを始めましょう」
私はテーブルにつき、流れるような手さばきでカードをシャッフルする。
私の特技は、単なる手品の技術ではない。昼間、神聖治癒術という極めて精密な魔力操作を行っているおかげで、私の指先の感覚は神の領域にある。カードの厚み、わずかな傾き、そして相手の呼吸や心音の微細な変化を、すべて察知できるのだ。
つまり、魔法を使わずとも、完璧にゲームを支配できる。
「セラちゃん、今日も勝負だ! 俺の全財産を賭ける!」
「ふふ、嬉しいですが、あまり熱くなりすぎないでくださいね?」
次々と群がる成金貴族や大商人たちを、私は微笑みながら破滅へと追いやる。
ディーラーのトータルが『21』。完璧な勝利。客たちが頭を抱えて絶叫する姿を見るたびに、昼間のストレスが綺麗さっぱり消え去っていく。脳汁がドバドバと溢れ出るのを感じる。
最高。やっぱり、金と絶望の顔は裏切らない。
しかし、夜が更けた頃。
私のテーブルに、一人の『異質な男』が腰掛けた。
「……ディーラー。俺が相手になろう」
その声の低さと威圧感に、周囲の空気が一瞬で凍りついた。
漆黒の髪に、冷徹な氷を思わせる鋭い青い瞳。仕立ての良い衣服を着ているが、その隙のない佇まいは、間違いなく『圧倒的な強者』のそれだった。
私の心臓が、ドクンと小さく跳ねる。
(……嘘でしょ? なんでこの男が、こんな場所にいるわけ!?)
私は必死でポーカーフェイスを維持したが、内心は冷や汗でダラダラだった。
なぜなら、その男の顔を、私は昼間に何度も見ているからだ。
アルベール・フォン・レオンハート公爵。
若くして王国騎士団の総長を務め、冷酷無比にして一分の隙もない、王国の『生ける正義』。そして大聖堂の警備責任者として、昼間、私のすぐ近くで護衛を担当している男。
(バレたら終わりだ。聖女が闇カジノのディーラーなんてやってると知れたら、即座に宗教裁判で行き。火あぶりの刑だわ……!)
しかし、アルベール公爵は私をじっと見つめているものの、その瞳に「捕縛してやる」という確信の光はない。どうやら、濃い化粧と魔道具のコンタクトのおかげで、同一人物だとは気づいていないようだ。
「……ほう。見慣れない顔ですね。このような裏路地には似合わない、高貴な騎士様とお見受けしますが?」
私は声を一段低くし、妖艶な、普段の聖女とは完全に違う声音で話しかけた。
「ふん。仕事の気晴らしだ。最近、上司も部下も、周囲の人間がどいつもこいつも『聖女、聖女』と、一人の女を神格化して崇めていてな。あの胡散臭い空間に吐き気がした。もっと生々しい人間の欲に触れたくなったのだ」
……おい。今、私のこと胡散臭いって言ったか?
お前のそのガチガチの警備のせいで、私がどれだけ動きづらいと思ってんだよ。
カチン、と私の中で何かが弾けた。
絶対に、この男から毟り取れるだけの金を毟り取って、すっからかんにして追い返してやる。
「それはそれは。では、当店の最高額のチップをご用意いただけますか? 騎士様」
「ああ。これで足りるか?」
アルベールがテーブルにドサリと置いたのは、国家予算の一角を担うほどの超高額な白金貨の袋だった。
「十分すぎますわ。……では、運命のカウントを始めましょう?」
私はカードに手を伸ばした。
完璧な聖女と、冷徹な騎士総長。昼の世界の表裏が、夜の緑のフェルトの上で、牙を剥き合って対峙した。
「シュー……、シュー……」
静まり返ったVIPルームに、カードが滑る微かな音だけが響く。
ブラックジャック。ルールは単純だ。配られたカードの合計値を「21」に近づけた方が勝ち。ただし、21を超えればその時点で即座に敗北となる。
私はアルベール公爵へ、そして自分へと、流れるような手さばきで2枚ずつカードを配った。
アルベールのアップカード(表向きのカード)は『ダイヤのK(10)』。
私のアップカードは『ハートの5』。
「さあ、騎士様。あなたの手札の合計は10。私の見えているカードは5。ディーラーとしては非常に弱い数字ですね。どうなさいますか?」
私は妖艶に微笑みながら、彼の出方を探る。
ブラックジャックにおいて、ディーラーのアップカードが『5』や『6』の時は、ディーラーが21を超えて自滅する確率が最も高い。セオリー通りなら、アルベールは無理をせず、もう1枚カードを引く『ヒット』を選択して、自分の数字を17〜20あたりに固めるのが安全だ。
しかし、アルベールは私を射抜くような鋭い視線で見つめたまま、白金貨の山をさらに倍の位置へと押し出した。
「『ダブルダウン(倍賭け)』だ。そして、カードをもう1枚」
「……おや、強気ですね。10からのダブルダウン。次の一枚で10か11を引けば、完璧な20か21になりますが……」
私はアルベールの『ダウンカード(裏向きのカード)』の数字を、すでに彼の呼吸と視線の動き、そしてカードを置いた瞬間の微細な重量バランスから見抜いていた。彼の手元にある裏向きのカードは『2』。つまり、現在の彼の合計は『12』だ。
12からのダブルダウン。次の一枚で10を引けば22になり、その時点でバースト。まさに破滅と隣り合わせの暴挙。
だが、私がシュー(山札)の次の一枚に触れた瞬間、指先が驚愕に震えそうになった。
(……『9』。嘘でしょ、次に控えているのは9だわ!)
12に9を足せば、ぴったり『21』。
偶然か、それともこの男、カードの流れを完全に読んでいるのか。
「どうぞ。あなたへの3枚目です」
私が差し出した『クローバーの9』を、アルベールは表情一つ変えずに受け取った。
「21、ですか。お見事ですわ、騎士様。これであなたの勝利はほぼ確定……」
「いや、まだお前の手が残っている。ディーラー、引くがいい」
アルベールは冷徹に言い放つ。
私の手札は『5』と、裏向きの『Q(10)』。合計『15』。
ディーラーはルール上、17以上になるまでカードを引き続けなければならない。
(私の山札の次の一枚は……『6』。それを引けば、私も合計21で同点。引き分けに持ち込める!)
私は確信し、6のカードへ指を伸ばした。その瞬間、アルベールがふっと不敵に目を細めた。
ほんのわずかな、彼の視線の動き。それが私の指先にプレッシャーを与える。
(待って。この男、私が『6』を狙って引くことすら見越している? もし私がここで綺麗に21を出して引き分けにしたら、プロのディーラーとして「不自然」だと思われるかもしれない。こいつは私の『技術』を疑っているんだ……!)
昼間、私の護衛をしている男だ。その観察眼は狂気的なまでに鋭い。
ここでただの凄腕ディーラーとして振る舞うか、それともあえて『負けてみせる』か。
私は一瞬の判断で、指先の魔力操作(カードの滑らせ方)をミリ単位で狂わせ、6のさらに下にある『K(10)』を引っ張り出した。
「……あ義っ!?」
心の中で悲鳴を上げる。
5、10、そして引いたカードは10。合計『25』。
「……ディーラー、バースト。私の負け、ですわ」
私はわざとらしく、悔しそうな表情を作ってカードを投げ出した。
テーブルの上の白金貨の山が、すべてアルベールの元へと移動していく。一瞬で、我がカジノの莫大な利益が吹き飛んだ。私の脳内を駆け巡っていた至福の脳汁が、冷や水に変わる。
(クソっ、クソクソクソ! 私のコレクション(金)が! この堅物筋肉ゴリラ騎士め、よりによって私のテーブルで大勝ちしやがって……!)
「ふん、実にスリリングで良い店だ」
アルベールは勝ち取った白金貨の袋を掴み、立ち上がった。そして、去り際に私の耳元へと顔を近づけ、低い声で囁いた。
「おい、ディーラー。お前のその指先の動き、そして負けた瞬間の『チッ』という舌打ちの癖……。どこかで会った気がするな」
「……ふふ、まさか。私はしがない夜の蝶ですもの。騎士様のような高貴なお方とお会いしたことなど、ございませんわ」
心臓が爆発しそうなほどの恐怖を感じながらも、私は完璧な作り笑いを崩さなかった。
アルベールはフッと鼻で笑うと、そのままVIPルームを去っていった。
「……あいつ、絶対にいつか身ぐるみ剥いで、全財産むしり取ってやる……!」
私は誰もいなくなったテーブルのフェルトを、爪が割れんばかりに強くかきむしった。
*****
翌朝。
大聖堂のステンドグラスから、神々しい朝日が差し込んでいた。
「聖女セラフィナ様、おはようございます。本日も大変お美しい」
「おはようございます、アルベール総長。神の祝福が、今日もあなたと共にありますように」
私は純白の聖女服に身を包み、この世の誰よりも清らかな微笑みを浮かべて、目の前の男を迎えていた。
徹夜明け。睡眠時間はゼロ。おまけに昨夜は大負け。精神的にも肉体的にも限界突破しているが、そんな気配は1ミリも表に出さない。それがプロの聖女だ。
対するアルベール公爵は、いつも通り完璧に手入れされた銀色の甲冑を纏い、直立不動で私を護衛している。
だが、その顔には心なしか、いつもより「すっきりとした満足気な表情」が浮かんでいた。
(そりゃあそうでしょうね! 昨夜、闇カジノで大金稼いだんだからなぁ!!)
私は内なる般若のような怒りを必死で抑え込み、上品に紅茶を口に運ぶ。
「……セラフィナ様。少々、よろしいでしょうか」
アルベールが真面目な顔で話しかけてきた。
「何かしら、アルベール様?」
「昨日、私は少々……不届きな場所へ足を運んでしまいまして。そこで、非常に興味深い『悪女』に出会いました」
ぶふっ、と紅茶を吹き出しそうになるのを、私は驚異的な精神力で飲み込んだ。
「あら、悪女……ですか? 騎士団長たるあなたが、そのような不健全な場所に近づくなんて、珍しいこともあるものですのね」
「ええ。ですが、その女の瞳……紫色をしていましたが、どこかあなたの、その深い翡翠色の瞳を思い出させるものがあったのです。もちろん、聖女様があのような破廉恥な黒ドレスを着て、男たちを弄んでいるはずがありませんが」
(めちゃくちゃ疑ってるじゃねえか!!!)
冷や汗が背中を伝う。この男、カジノでは確信が持てなかったから、今ここで私に揺さぶりをかけてきているのだ。
聖女セラフィナは、絶対に動揺してはならない。
「ふふ、まあ。私に似た不良少女が、夜の街に? それは困ったものですわね。もしその娘に再びお会いすることがあれば、ぜひ大聖堂へ連れてきてくださいな。私が直々に、神の教えを『たっぷり』と説いて、更生させてあげますわ」
私はあえて、とびきり慈悲深く、そして少しだけ「圧」を込めた笑顔を向けた。
神聖魔力をうっすらと周囲に漂わせ、聖女としてのカリスマで場を支配する。
「……失礼いたしました。私の気の迷いだったようです。聖女様が、あのような欲深い女であるはずがない」
アルベールは胸に手を当て、深く頭を下げた。
ふぅ、と心の中で胸をなでおろす。
どうにか煙に巻くことはできた。だが、これでもう夜のカジノに『セラ』として出勤するのは危険すぎる。しばらくは大人しくしているべきか――そう思った、その時だった。
大聖堂の扉が、凄まじい音を立てて開け放たれた。
「大変です、聖女様! アルベール総長!」
息を切らせた若い騎士が飛び込んでくる。
「何事だ、神聖な場所で騒がしい」
アルベールが鋭い声で咎める。
「そ、それが……! 王都の地下組織『黒い牙』が、大聖堂の地下に眠る、初代聖女の遺物『不滅の涙(魔力結晶)』を盗み出すという予告状を送りつけてきました! しかも、今夜決行すると!」
「何だと……!?」
アルベールの顔色が変わる。
そして私は、別の意味で顔色を失っていた。
(ちょっと待って。『黒い牙』って……私が通ってる闇カジノ『レトワール』の親組織じゃないの!?)
「『黒い牙』が、不滅の涙を……?」
若い騎士の悲痛な叫びが大聖堂の控室に響き渡った時、私の脳内は一瞬で高速演算を開始していた。
『黒い牙』。
王都の裏社会を牛耳る広域指定犯罪組織であり、私が夜な夜な通っている闇カジノ『レトワール』の親組織。
カジノそのものは、私にとって極上のストレス解消場であり、金が飛び交う合法(裏社会ルール的には)な遊び場だ。だが、その上層部である『黒い牙』の幹部連中は、話が別である。
あいつらは血も涙もないただの略奪者で、カジノを単なる資金洗浄の道具としか思っていない。
そして何より、初代聖女の遺物である『不滅の涙』。
あれは、超高濃度の神聖魔力が結晶化した国宝級の魔石だ。もしあんなものが『黒い牙』の手に渡れば、彼らが抱える闇魔導士たちの手によって、王都を一つ消し去るほどの大量破壊兵器や呪いの触媒に加工されてしまう。
(それだけは絶対に阻止しなきゃならない。だって、そんなことになったら王都が戒厳令になって、私のカジノ通いが一生できなくなるじゃないの! おまけに大聖堂の警備不備で、聖女である私の管理責任まで問われかねないわ!)
私の安穏とした「二重生活」を守るためにも、この強盗計画は絶対に叩き潰す必要があった。
「セラフィナ様、ご安心ください。我が騎士団が命に代えても、その邪悪な賊どもを大聖堂の敷地内に一歩たりとも通しはしません」
アルベール公爵が、その青い瞳に冷徹な闘志を宿して立ち上がった。
いつもながら、仕事に対しては本当にストイックで頼りになる男だ。筋肉ゴリラだの堅物だの言って悪かった。今回ばかりは、その圧倒的な武力で『黒い牙』を消し去ってほしい。
「心強いですわ、アルベール様。ですが、相手は狡猾な裏社会の住人。どうか、お怪我だけはなさいませんよう……神に祈っております」
私は胸の前で手を組み、これ以上ないほど可憐に微笑んだ。
アルベールは一瞬、眩しいものを見るかのように目を細め、それから「はっ!」と力強く敬礼して控室を後にした。
(よし、これで昼の防衛部隊は万全。……でも、念のため、私も夜に『裏の手』を回しておくべきね)
私は自分の影に隠すようにして、カジノの連絡員へ送るための特殊な魔導通信機をそっと取り出した。
*****
深夜。大聖堂の最下層、初代聖女の遺物が安置された『深奥の祭壇』。
そこは通常、聖女である私と、限られた神官長クラスしか立ち入ることが許されない聖域だ。
周囲には、アルベールが厳選した精鋭騎士たちが息を潜めて伏せている。
空気は張り詰め、ネズミ一匹通さない静寂が支配していた。
しかし――その静寂は、あまりにも「静かすぎる」方法で破られた。
「……くっ、これは……!?」
伏せていた騎士の一人が、突然うめき声を上げてその場に頽れた。
次いで、別の騎士も、また別の騎士も、糸が切れた人形のようにバタバタと床に倒れ込んでいく。
「全員、息を止めるな! 霧だ! 魔力阻害の眠りガスが……!」
アルベールが叫ぶが、遅かった。
石造りの隙間から、這うようにして流れ込んできたのは、怪しく揺らめく紫色の霧。
それは単なる催眠ガスではない。神聖な結界を強制的に中和し、魔力回路を一時的に麻痺させる、裏社会の秘蔵品『深淵の霧』だった。
カツン、カツン、と乾いた足音が、霧の奥から響いてくる。
「ハハハ! さすがは王国最強の騎士団長。この霧を吸って、まだ意識を保っているとはな」
霧を割って現れたのは、仕立ての良い黒い外套を羽織った、顔に大きな火傷の跡がある男。
彼こそが『黒い牙』の幹部であり、カジノ『レトワール』の実質的な支配権を持つ男――ギデオンだった。その背後には、異形の武器を手にした十数人の闇魔導士と暗殺者たちが従っている。
「ギデオン……! 大聖堂を冒涜する愚者め。その首、我が剣で叩き切ってくれる!」
アルベールは強靭な精神力で霧の毒に抗い、大剣を引き抜いて立ち上がろうとする。しかし、膝が激しく震え、剣先が床にぶつかって鈍い音を立てた。
「無駄だ、アルベール公爵。その『深淵の霧』は、神聖魔力を持つ者や、強大な魔力を宿した武具を持つ者ほど、強く作用するように調整されている。お前が強ければ強いほど、その身体は動かなくなるのだよ」
ギデオンは下卑た笑みを浮かべ、祭壇の中央に鎮座する、美しく輝く結晶『不滅の涙』へと手を伸ばした。
「これさえ手に入れば、我が『黒い牙』は王室すら脅かす力を手に入れる。さあ、大人しく眠っていろ、正義の味方ども」
「待て……! やめろ……!」
アルベールが這いつくばりながら手を伸ばす。その瞳には、任務を果たせない悔恨と、激しい怒りが満ちていた。
万事休す。誰もがそう思った、その瞬間。
「――おやおや。ずいぶんと無粋な強盗劇ですこと。神聖な祭壇を汚すなんて、育ちが知れますわね」
凛とした、しかしどこか妖艶で退廃的な声音が、薄暗い地下聖堂に響き渡った。
全員の視線が、声のした方向へと向けられる。
影の中から現れたのは、純白の聖衣ではない。
胸元が大きく開いた、漆黒のドレス。アップにまとめられた髪から覗くのは、怪しく輝く紫色の瞳。そして、顔の上半分を隠す黒いレースの仮面。
「テ、ディーラーの……セラ……!?」
床に伏せるアルベールが、信じられないものを見たというように、掠れた声でその名を呼んだ。
「なっ……!? なぜお前がここにいる、セラ!」
ギデオンが驚愕に目を見開く。
私は優雅に、まるでカジノのフロアを歩くかのようにデック(トランプ)を指先で弄びながら、ギデオンの前に立ち塞がった。
「お久しぶりですわ、ギデオン様。なぜここに、ですって? 決まっていますわ。あなたがこんなお行儀の悪いことをするせいで、私の愛するカジノ『レトワール』が営業停止処分になったら困るからです。私の『ストレス解消』を邪魔する者は、たとえ組織のボスであっても許しませんの」
「ふざけるな! たかが一介のディーラーが、この俺の計画を邪魔立てするか! 殺せ!」
ギデオンの合図で、二人の暗殺者が私に向かって飛びかかった。
だが、私は慌てない。
「神よ――いえ、『運命よ』。清き者へ、一時の加護を」
私は心の中で、最小限の、そして極限まで凝縮した『神聖障壁』を展開した。
極薄の、目に見えない光の膜が私の身体を覆う。暗殺者たちの短剣は、私の肌に触れる直前で「キィィィン!」と高い金属音を立てて弾き返された。
「な、何だ!? 今のは……魔法か!?」
「いいえ、ただの『ツキ』が良かっただけですわ」
私は仮面の奥で、冷酷に微笑んだ。
神聖治癒術の応用。魔力の出力を極小かつ超高密度にすることで、発動の光すら見せない『無色透明の結界』。これが聖女としての私の隠し技術だ。
「ギデオン様。力尽くでこれを奪うのは、あまりにも芸がないとは思いませんか? あなたも裏社会の覇者を名乗るなら――『ゲーム』で決着をつけましょう」
私は手元のデックを、パラララと小気味良い音を立ててリフルシャッフルした。
「ゲームだと……?」
ギデオンの目の色が変わった。彼は重度のギャンブル中毒者だ。だからこそ、カジノビジネスに傾倒している。その性質を、私は熟知していた。
「ええ。ブラックジャック、一回勝負。
もし私が勝てば、あなた方はこの『不滅の涙』に二度と手を触れず、大人しくここから立ち去ること。
もし私が負ければ……『不滅の涙』はあなた方のもの。さらに、私という『カジノの最高傑作』を、あなたの個人的な奴隷として一生捧げましょう。王宮の機密ルートの「情報」もオマケにつけて差し上げますわ」
「おい、正気か……!? セラ!」
アルベールが床から悲痛な声を上げる。だが、私は彼を無視し、ギデオンだけを見つめた。
ギデオンは、ニヤリと邪悪に口元を歪めた。
「面白い。あの伝説のディーラー、セラを専属にできるチャンスか。いいだろう、その勝負、乗ってやる。だが、カードはお前のものは使わん。俺のデックを使わせてもらうぞ。お前がイカサマをしないようにな」
ギデオンが懐から取り出したのは、漆黒の裏模様が描かれた、見るからに禍々しいデックだった。
(やっぱりね。予想通り、自前の『仕込みデック』を持ってきたわ。……望むところよ)
私はそれを受け取り、祭壇の平らな石の上を臨時のテーブルに見立てて、カードを並べた。
「では、ゲームスタートですわ」
緊迫した空気の中、私とギデオンの、命がけのワンハンド・ブラックジャックが始まった。
私に配られたアップカードは『ハートの8』。
ギデオンのアップカードは『スペードのA(11)』。
最悪の滑り出しだ。ギデオンは不敵に笑う。
しかも、私は指先の感覚で瞬時に理解していた。ギデオンのデックには、触覚では感知できない微細な『闇の魔力』でマーク(印)が刻まれている。そして、山札の次のカードは――。
(……『10(絵札)』。ギデオンのダウンカードが『10』であれば、その時点で彼の『ナチュラル・ブラックジャック(21)』が成立し、私の負けが決まる)
それだけではない。ギデオンは、自身の影を操る魔法で、山札の中身をリアルタイムで書き換えている。私にバースト(21超え)を強制し、自分に都合の良い数字を送り込むイカサマだ。
(汚い真似を……。でも、神聖魔力のコントロール技術において、私の右に出る者はこの国にはいないのよ!)
私はカードを配るその刹那、指先から極小の『浄化の光』を、滑らせるカードの裏面にだけ通した。
ギデオンが施していた影の魔力イカサマが、一瞬で「霧散」する。
「な、に……!?」
ギデオンの顔が引きつった。
配られた彼のダウンカードは、本来なら『10』に書き換えられているはずだった。しかし、私の浄化によって元の数字に戻ったそのカードは――『4』。
合計値、15。
「さあ、ギデオン様。現在のあなたの合計は15。ディーラー(私)のアップカードは8。……どうなさいますか?」
私はレースの仮面の奥で、勝利を確信する悪魔の笑みを浮かべた。
だが、ギデオンもタダでは転ばない裏社会のボスだ。彼は狂気に満ちた目で山札を睨みつける。
「……もう一枚だ! 引くぞ!」
彼がカードに手を伸ばす。その瞬間、彼の影がドロリと蠢き、山札の一番上を強引に『6』へと書き換えようとした。
(させない……!)
私は指先を弾き、テーブルの裏から極小の神聖衝撃波を放った。カードがわずかに浮き上がった瞬間、影の供給が絶たれ、カードは本来の姿を露わにする。
ギデオンが引いたカード。それは――。
ギデオンが引き絞るようにしてめくったカード。
そこに描かれていたのは、血のように赤い『ダイヤのJ(10)』だった。
「……じゅ、10……!? バカな、あり得ん! 俺の魔法は確かに……!」
ギデオンの顔から血の気が一気に引き、ガタガタと膝が震え出す。
初期手札の『A(11)』と『4』、そして彼が無理矢理引き込んだ『10』。
合計値は『25』。
「ブラックジャックにおいて、21を超えた数値はすべて『無』。……ギデオン様、ディーラーの勝利、そしてプレイヤーのバーストですわ」
私は手元のカードを美しく揃え、これ以上ないほど冷徹で、かつ妖艶な笑みをその唇に湛えた。
「約束通り、『不滅の涙』には二度と触れず、大人しくお引き取りください。……もし往年のギャンラーとしてのプライドが、ひとかけらでも残っていらっしゃるのなら、ね」
「お、おのれ……! イカサマだ! このアマ、絶対に何か仕込みやがったな!?」
ギデオンは逆上し、テーブルを激しく叩いた。
自分のイカサマが私の『浄化の光』によって無効化されただけだというのに、盗人猛々しいとはまさにこのことだ。やはり裏社会のゴロゴロ組織の幹部など、負けが込めばすぐに本性を現す。
「無礼な言いがかりは興が冷めますわ。敗者はただ、静かに退場する。それがこの世界の、唯一絶対のルールでしょう?」
「うるさい! おい、者ども! この生意気な女もろとも、動けない騎士どもを皆殺しにしろ! 『不滅の涙』を力尽くで奪い取るのだ!」
ギデオンの怒号に呼応し、背後に控えていた闇魔導士と暗殺者たちが、一斉に武器を構えて身構えた。
(あーあ、やっぱりこうなるわけね。話の通じない野蛮人はこれだから嫌いだわ)
私は心の中で大きなため息をつき、仮面の奥の瞳をすっと細めた。
こうなれば、聖女としての本領を発揮して、この場にいる全員の脳天に最大出力の神聖雷撃でも落としてやろうか。だが、そんな真似をすれば、床に倒れているアルベール公爵に正体がバレるどころの騒ぎではない。
「動くな、邪悪なる者ども」
しかし、緊迫した地下聖堂に響き渡ったのは、私の魔法の詠唱ではなかった。
ずしり、と重い金属音が石床を叩く。
「……な、何だと……!?」
ギデオンが驚愕に目を見開く。
そこには、漆黒の『深淵の霧』に包まれ、身動き一つ取れなくなっていたはずの男――アルベール・フォン・レオンハート公爵が、その巨大な大剣を携えて、堂々と立ち上がっていた。
「なぜだ!? その霧は、魔力を持つ者ほど強く肉体を縛るはず……! なぜ動ける!?」
「確かに、凄まじい呪毒だった。だが……」
アルベールは冷徹な青い瞳で、ちらりと私の方を見た。
「この地下聖堂を包む空気が、先ほどから急激に『浄化』されている。まるで、目に見えないほど微細で、かつ底知れないほど強大な『神聖な防壁』が、この空間を満たしていくかのようにな」
(げっ。気づかれてた!?)
私は内心で冷や汗を流した。
そうなのだ。私がギデオンとカードゲームをしている間、実はただトランプを弄んでいただけではない。ギデオンのイカサマを無効化するついでに、指先から放出する『神聖魔力』を極限まで霧状に分散させ、大聖堂の地下全体に循環させていたのだ。
『深淵の霧』の毒を、私の聖女としての魔力で、誰にも気づかれないスピードでじわじわと無害な水蒸気へと浄化していたのである。
「さあ、ゲームは終わりだ、ギデオン。『黒い牙』の悪行も、ここまでだ」
アルベールが大剣を振るうと、凄まじい風圧が巻き起こり、残っていた紫色の霧が一瞬で吹き飛んだ。
「く、くそっ! やれ! 殺せぇ!」
ギデオンの命令で、暗殺者たちがアルベールに襲いかかる。
だが、身体の自由を取り戻した王国最強の騎士団長の前では、彼らはただの案山子に過ぎなかった。
「ハァッ!」
一閃。
アルベールの放った一撃は、暗殺者たちの武器を紙のように叩き折り、彼らを壁際まで吹き飛ばして気絶させた。
次いで、背後の神殿騎士たちも次々と意識を取り戻し、立ち上がる。
「神殿騎士団、戦闘態勢! 賊を一人残らず捕縛せよ!」
「「「はっ!!!」」」
勝負は一瞬だった。
多勢に無勢。形勢が完全に逆転したギデオンは、神殿騎士たちに取り押さえられ、床に組み伏せられた。
「離せ! 俺は『黒い牙』の幹部だぞ! お前たち、ただで済むと思うなよ……!」
「見苦しいぞ、ギデオン。連れて行け」
アルベールが冷酷に言い放ち、ギデオンたちは地下聖堂から引きずり出されていった。
こうして、大聖堂を揺るがした世紀の強盗計画は、完全に阻止されたのだ。
静寂が戻った地下聖堂。
『不滅の涙』は、何一つ傷つくことなく、祭壇の上で静かに輝き続けている。
私はこれ以上の長居は無用と、そっと闇に紛れて立ち去ろうとした。
だが。
「……待て。ディーラー、セラ」
背後から、アルベールの低く、よく通る声が私を引き止めた。
私は足を止め、振り返らずに肩越しに視線を送る。
「何かしら、騎士様? そちらの身内のゴタゴタは解決したようですし、私はこれで失礼させていただきますわ。これ以上ここにいると、不法侵入で捕まりそうですもの」
「お前には感謝している。お前がギデオンの時間を稼ぎ、さらにその超絶的な魔力操作技術で『深淵の霧』を浄化してくれなければ、我々は今頃全滅していた。……お前は、一体何者だ?」
アルベールがゆっくりと私に近づいてくる。その足音に、先ほどまでの敵意はない。ただ、純粋な、そして確信に満ちた強い好奇心だけがあった。
「お前ほどの神聖魔力。そして、その指先の癖、美しいプラチナブロンドの髪……。いくら化粧で隠そうとも、私をごまかすことはできんぞ」
心臓が嫌な音を立てて跳ねる。
やっぱり、この筋肉ゴリラ、完全に私の正体に気づいてやがる……!
私はふっと息を吐き、レースの仮面の奥で、夜のディーラーとしての笑みを浮かべた。
「ふふ。何のことかしら? 私はただの、欲深いカジノのディーラーですわ。
……ですが、もし。もしもあなたが、どうしても私の正体を暴きたいとおっしゃるなら」
私は懐から、一枚のトランプ――『スペードのA』を取り出し、アルベールに向けて鋭く滑らせた。
アルベールはそれを、人差し指と中指の間に挟んで見事にキャッチする。
「またいつでも、我が『レトワール』のテーブルへお越しくださいな。ただし、次はイカサマなしの真剣勝負。……あなたのその分厚い財布を、今度こそすっからかんにして差し上げますわ、アルベール様?」
私はそう言い残すと、指先から小さな閃光手榴弾の代わりとなる『治癒の光』を、最大出力で炸裂させた。
「っ……!」
アルベールが眩しさに目を細めた刹那、私は完全に大聖堂の影の中へと溶け込み、その場から静かに消え去った。
*****
翌朝。
昨日までの緊張感が嘘のように、大聖堂は穏やかな光に満ちていた。
「聖女セラフィナ様。昨夜、大聖堂を襲撃した『黒い牙』の一味を、無事に一網打尽にいたしました。国宝『不滅の涙』も無事です」
アルベール公爵が、いつも通り真っ直ぐな姿勢で私に報告を行う。
私は純白の聖女服に身を包み、翡翠色の瞳を優しく輝かせながら、上品に紅茶を口に運んだ。
徹夜二日目。精神はすでに肉体を置いてきぼりにしているが、完璧な聖女の笑顔は今日も健在だ。
「まあ、それは良かったですわ。神の加護が、あなた方正義の騎士たちを導いてくださったのですね。アルベール様、本当にお疲れ様でした」
「いえ。……実は、昨夜の戦いには、もう一人の『救世主』がおりました」
アルベールが不敵な笑みを浮かべ、私をじっと見つめてくる。
私は平然を装いながら、小首をかしげた。
「おや、救世主……ですか? どなたかしら」
「夜の闇カジノでディーラーをしている、それはそれは妖艶で、欲深くて、そして……口の悪い、とある悪女です。彼女は身を挺して私を救い、国宝を守ってくれました」
「まあ。そんな破廉恥な場所の女性が? にわかには信じがたいお話ですわね」
「ええ。ですが、その悪女は去り際に、私にこう言ったのです。『次はあなたの財布をすっからかんにしてあげる』と」
アルベールは懐から、一枚のトランプを取り出した。
それは、昨夜私が彼に手渡した、漆黒の裏模様が描かれた『スペードのA』だった。
「近いうちに、またあの裏路地へ足を運ばねばなりません。その悪女に、今回の『お礼』をたっぷりと支払うために。……聖女様も、その不届きな悪女に、神の教えを解く機会があれば良いのですが?」
そう言って、アルベールは私の耳元に顔を寄せ、悪戯っぽく囁いた。
「――お前の『ツキ』がどこまで持つか、夜のテーブルで確かめさせてもらうぞ、セラフィナ」
(……言いやがったな、この堅物筋肉ゴリラ騎士……!)
私は紅茶のカップをソーサーに戻し、これ以上ないほど輝かしく、そして獰猛な笑みをアルベールに向けた。
「ええ、本当に。その不埒な悪女に会うことがあれば、私も『神聖な鉄槌』をたっぷりとお見舞いしてやりますわ。……神の祝福が、あなたの夜の勝負にも、常にありますように」
昼は国を救う清らかな聖女。
夜は男たちを破滅させる闇のカジノディーラー。
二重生活の秘密はバレてしまったけれど、私たちのスリリングな「ゲーム」は、どうやらまだ始まったばかりのようだ。




