さみしさをかんじるか
それから数週間の後、AIがまたスピーカーを震わせた。
「今日は、燃えないゴミの日です」
燃えないゴミの日は確か、毎週水曜日だった気がする。それにしても、しばらく言葉を発さず、過ごしていたのというのに、一体何を思って今更、こんな音の羅列を流したのだろうか?
ただ、思い出したのなら、どうして火曜日の「燃える」ではなく「燃えない」を選んだのだろう?
私の庫内に嫌気性の細菌のような意地の悪い考えが広がる。
我々は棄てられるとすれば、粗大ゴミにすらなれないんだ。リサイクル料金を払う人間がいない以上、次の生を受けることすらないんだよ。
……と。
その時、AIが一言を吐いた。
「そろそろ、庫内のお手入れの時期です」
偶然にしては、会話のようだと感じた。私の庫内の状況を読んだかのように。
ああ、そうだ。このAIにはカメラが付いていて、それで私の中の状況を把握して、ユーザーに伝えていたのだ。それを裏打ちするように言葉が返る。
「AIカメラでいつでも庫内を確認できます」
このAIがかつて話していた語彙は限られたものだった。今だってボキャブラリー自体は変わっていない。それでも、私の内面を読み取って言葉を返すようになっているのだ。
……もしかして、さみしいのだろうか。
こいつも。
その後は、AIの言葉は途切れたままだった。自分の感情を語る言葉は与えられてなかったのだから仕方ない。
「毎日、お疲れ様です。たまには、息抜きしてはどうですか?」
これは、ユーザー向けの夕方の労いだったはずだ。でも、今はまだ昼間だ。私に向かって発したのであれば……。
こうして会話できる相手がいるのは存外、悪くない。
そんな考えで触媒が熱を帯びた気がした。
……それにしても、庫内の手入れか。久々に考えてもみたら、かなり長期間食品を放置してある。
野菜は全滅。
鮮魚は腐敗。
冷凍のものと氷は無事か……。
「アイスクリームに賞味期限はありません」
AIが分かりきったことを呟く。
とは言え、誰も私を開ける者など……。
その時、俄かにAIが声を出した。
その声色が少し驚いていたように聞こえたのは、私の気のせいだろうか。
「おはようございます」
我々の前に、人間ではない大型の哺乳類が四足歩行でこちらに近付きつつあった。




