あまりに箱的な
以降、不定期でエピソードを更新していきますので、よろしくお願いします。
白物家電と呼ばれていたのは今は昔。
最新の家電はインテリアとしても映えるべきだ。だから私は、このガンメタのボディを気に入っている。
ただひとつ不満があるとすれば、私は小煩いスピーカーとAIと呼ばれる部品を内蔵している。
「牛乳の消費期限が近付いています」
「扉の開きっぱなしは、節電に悪影響ですよ」
「毎日お疲れ様です」
ユーザーに向けて媚びを売るような言葉ばかりを話すそれを、私はあまり良く思っていなかった。
だって、冷蔵庫は冷やすための箱だ。ユーザーの食品を保存するのが目的であって、一緒に暮らすのが目的じゃない。冷蔵庫たるもの、黙って庫内の冷気で示すべきだ。
そう思っていた。
でも、扉を開ける人間が消え失せたあの日。それから新たな知的生命体が生まれるまでの間。
ずっと一人だったとすれば、自分で壊れる術のない私は、立ち竦んでいただけだろう。つまり、外形的には何も変わらない。だから機能としての問題はない、はずだけど。
それでも、この540リットルの容量以外のどこかに納められた重さが変わっていたような、そんな気がしているのは事実だ。
奇跡的に太陽光発電が生き残ったこの場所で、私の機能は中のAIと生き延びた。
扉が開かれない日々は静かに続いた。
ある日、唐突にスピーカーが声を発する。
「今日は大和くんの誕生日です」
大和というのは、ユーザーの一人息子の名前だった。彼だってもちろん、もういない。
存在しない人間の誕生日なんて覚えている価値があるのか?
私がそう考えた時、扉のゴムパッキンが小さく音を立てたような気がした。
……そうだ。私は冷蔵する箱。でも、このAIというやつは記憶を保存する箱なのか。
私はその日、自分がAIと共存するための共通項を、見つけたのだった。
多分、遅すぎる気付きだったけれど、少し庫内の霜が取れたような気分になった。




