表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

シュガーラディッシュと至高のプリン

1. 【導入】湯上がりの渇望


「ふぅ……生き返った……」


露天風呂から上がり、俺たちはログハウスのリビングで寛いでいた。

シルフィはまだ少し顔が赤く、タオルで髪を拭きながらソファに沈み込んでいる。

手には、先ほど風呂上がりに飲んだ「フルーツ牛乳」の空き瓶が握られていた。


「カイト、フルーツ牛乳も美味しかったけど……お風呂で話してた『あれ』、本当に作れるの?」 「ああ、『プリン』のことか? もちろん。湯当たり気味の体には、冷たくて甘いものが一番だからな」


「やった! 約束よ!」


2. 【素材】怪物級の卵と甘い大根


「よし、それじゃあ約束通り、極上のスイーツを作るとしようか」


俺は冷蔵庫代わりの【クール・ストーン】の箱から、とっておきの食材を取り出した。


テーブルに並べられたのは、ハンドボールほどの大きさがある巨大な卵と、真っ白な大根だ。


『コカトリスの卵:鶏卵の10倍の濃厚さと大きさ。プリンにすると自重で崩れるほど柔らかい』 『シュガーラディッシュ:茹でると甘くなる不思議な大根。乾燥粉末は高級砂糖になる』


「え、大根? デザートにするの?」 シルフィが怪訝な顔をする。


「見ててごらん」


俺は【万能農具】を『製粉機』に変化させ、シュガーラディッシュを瞬時に乾燥・粉砕した。 さらさらとした白い粉末。指につけて舐めると、上品で雑味のない甘さが広がった。


「すごい! お砂糖になった!」


3. 【調理】黄金比の配合


次はコカトリスの卵だ。 殻を割ると、濃厚なオレンジ色の黄身がドクリとボウルに滑り落ちた。その粘度は、普通の卵とは比べ物にならない。


「これを贅沢に使うぞ」


黄身にシュガーラディッシュの砂糖、そして森で手に入れた新鮮なミルクを加えて混ぜ合わせる。 シャカシャカシャカ…… リズミカルな音が静かな部屋に響く。 泡立てすぎないよう、丁寧に。


底に焦がしたカラメルソース(これもシュガーラディッシュ製)を敷いた器に、卵液を静かに注ぐ。 あとは、蒸し器でじっくりと火を通すだけだ。


「……いい匂い。甘くて、香ばしくて……」 シルフィが蒸し器の周りをうろうろと歩き回る。 湯気と共に漂うバニラに似た香りが、彼女の嗅覚を刺激しているようだ。


蒸し上がったプリンを【クール・ストーン】で急冷すれば、完成だ。


4. 【実食】崩れ落ちる快感


「お待たせ。特製、コカトリス・プリンだ」


俺は皿をテーブルに置いた。 その瞬間、プリンが プルン と大きく揺れた。 あまりの柔らかさに、自分の重さを支えきれないようだ。


「……美しい……」 シルフィがゴクリと喉を鳴らす。


彼女は銀のスプーンを手に取り、震える手でプリンに入刀した。 抵抗感はゼロ。スプーンが吸い込まれるように沈んでいく。


一口分を掬い上げ、口へと運ぶ。


「んんっ……!!」


シルフィの動きが止まった。


「……消えた」 「え?」 「口に入れた瞬間、消えたの! 噛んでないのに、舌の上でトロって溶けて……!」


俺も一口食べてみる。 その通りだった。 舌に乗せた瞬間、濃厚な卵のコクとミルクの風味が爆発し、体温で解けて喉の奥へと滑り落ちていく。 後から追いかけてくるカラメルのほろ苦さが、甘さを引き締め、次の一口を誘う。


「なにこれぇ……濃厚なのに、後味はスッキリしてる。いくらでも入っちゃう……」


シルフィの顔が、幸せでとろけている。プリンと同じくらい、今の彼女は無防備だ。


「カイト、これ毎日作って。私、これがないと生きていけない体になっちゃったかも」 「毎日は太るぞ」 「エルフは太らないのよ!」


5. 【結末】甘い夜更け


結局、巨大なコカトリスの卵で作ったプリンは、あっという間に二人の胃袋に消えた。 満腹感と、お風呂の温かさ、そして糖分による多幸感。


「……ふわぁ。おやすみ、カイト」 「おやすみ」


ふかふかのベッドへ向かうシルフィの足取りは、来た時よりも少しふらついているが、その表情は今までで一番穏やかだった。 俺も片付けを終え、静かな森の夜を楽しむ。 明日は何をしようか。そんな贅沢な悩みを抱きながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ