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ふかふかベッドと安眠

1. 板の上の限界


「……あいたたた」


立派なログハウスが完成して数日。雨風はしのげるようになったが、俺たちの睡眠環境は依然として「板の間」だった。 頑丈なアイアンウッドの床は素晴らしいが、寝具としては硬すぎる。


「ふわぁ……。カイトぉ、体がバキバキするわよぉ……」


シルフィも寝不足の目で起きてきた。美しいエルフの髪が、寝癖で爆発している。 これは由々しき事態だ。衣食住の次は、睡眠の質。 俺は決意した。「今日はベッドを作るぞ」


2. 雲とゼリーの極上素材


俺は【植物鑑定】(応用して素材探索)を頼りに、森の奥へと向かった。 狙いは、この世界ならではの極上素材だ。


まず発見したのは、空に浮かぶように漂う羊の群れ。


『クラウド・シープ:雲のように軽く、絹のように滑らかな羊毛を持つ魔獣。その毛で作った布団は、無重力の寝心地』


「よし、【万能農具】……『バリカン』!」


俺は農具を変化させ、そっと背後から近づく。 ウィィィン…… 心地よい振動と共に、クラウド・シープのモコモコした毛を刈り取っていく。彼らは気持ちよさそうに目を細め、身軽になって空高く飛んでいった。


次に川辺で見つけたのは、プルプルと震える青い塊。


『スライム・ゼリー(良質):適度な弾力とひんやりとした清涼感を持つ。衝撃吸収性に優れる』


「これをマットレスの芯材にすれば……!」 俺は農具を『吸引ポンプ』に変え、スライムの核を傷つけないよう、余分なゼリー部分だけを頂いた。


3. 悪魔の寝具、爆誕


拠点の前に素材を広げる。 まずは【万能農具】を『織機』に変化させ、クラウド・シープの羊毛を一瞬で最高級の布と綿わたに加工する。 手触りは、まるで空気そのものを触っているようだ。


次に、スライム・ゼリーを特殊な布袋に詰め込み、高反発マットレスを作成。 最後に、余っていたアイアンウッドでベッドフレームを組み上げる。


「完成だ……!」


そこには、高級ホテルも裸足で逃げ出すような、キングサイズのダブルベッドが鎮座していた。 スライム・マットレスの上に、クラウド・シープの羽根布団(羽毛ではないが)。 見ただけで、意識が吸い込まれそうだ。


4. エルフ、堕落する


「な、なによこれ……この白いフワフワした塊は……」


狩りから戻ってきたシルフィが、警戒しながらベッドに近づく。


「試しに寝てみてくれ」


「……しょ、しょうがないわね。毒がないか確認してあげるわ」


シルフィはおずおずと、ベッドの縁に腰掛けた。 ボフッ スライム・マットレスが、彼女の重みを優しく受け止める。


「え……?」


そのまま彼女は、背中から布団に倒れ込んだ。 フワァァァ…… クラウド・シープの布団が、音もなく彼女の体を包み込む。


「……!!」


シルフィの目が大きく見開かれた。 「何これ……浮いてる? 私、浮いてるの!? 背中が痛くない……むしろ、吸い付いてくる……! それにこの布団、お母さんに抱っこされてるみたいに温かい……」


「これが『ベッド』だ」


「……カイト、私決めた」


彼女は布団を頭までかぶり、モゴモゴと言った。


「今日はもう、ここから一歩も動かない。……おやすみ」


5. 朝の訪れ


翌朝。 小鳥のさえずりが聞こえるが、隣からは規則正しい寝息しか聞こえない。 俺も昨晩は泥のように眠り、驚くほどスッキリと目が覚めた。体の痛みは完全に消えている。


「……あと、5分……いや、5時間……」


幸せそうによだれを垂らして眠るシルフィを見て、俺は苦笑した。 どうやら、快適すぎるのも考えものかもしれない。 俺は彼女が起きるまで、朝食のスープをじっくり煮込むことにした。

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