秋の味覚狩りと黄金の焼き芋
1. 森が色づく頃
「うーん、いい空気だ」
朝、扉を開けると、ひんやりと澄んだ空気が流れ込んできた。 蝉の合唱は消え、代わりに虫の声が響いている。 森の木々も赤や黄色に化粧直しを始めていた。
「カイトぉ……お腹すいたぁ……」 シルフィが起きてきた。食欲の秋、彼女の胃袋も活発化しているようだ。 「今日は『味覚狩り』に行くぞ。森の奥に、すごい食材があるらしい」
2. 宝石のような栗
ピコの案内で、森の北側にある林へ向かった。 そこには、ガラス細工のようにキラキラと輝くイガをつけた木が並んでいた。
『クリスタル・マロン:ダイヤモンドのような硬度を持つイガに守られた、極上の栗』
「うわぁ、綺麗だけど……これ、どうやって開けるの? 触ったら怪我しそう」 シルフィが恐る恐る指を伸ばす。
「任せろ。【万能農具】……『マジック・トング』!」
俺は農具を火バサミのような形状に変化させた。 硬いイガを軽々と挟み、ねじると パカッ と割れる。 中から出てきたのは、丸々と太った艶やかな茶色の栗だ。
「大豊作だ! 次はあっちの土の中だ!」
3. 地中の黄金
続いて、ツルが伸びているエリアへ。 ここには俺が以前、ポン太から貰った種を植えておいたのだ。
『ハニー・スイート・ポテト(蜜芋):加熱すると蜜が溢れ出す、天然のスイーツ』
「よいしょ、よいしょ!」 ピコとポン太がツルを引っ張る。 「手伝うわよ!」 シルフィも加勢し、最後に俺が『クワ』で土を掘り起こす。
ズボォッ!!
土の中から、子供の頭ほどもある巨大な赤紫色の芋が次々と顔を出した。 「大きい! しかも、生の状態でもう甘い匂いがするわ!」
4. 落ち葉の焚き火
ログハウスの前に戻った俺たちは、落ち葉を集めて山を作った。 その中に、濡らした大きな葉っぱ(耐熱性のあるアイアン・リーフ)で包んだ芋を投入する。 栗は爆発しないように少し切れ目を入れて、網の上へ。
パチパチ……シュー……
焚き火の煙と、芋が焼ける甘い匂いが混ざり合う。 この「待ち時間」こそが、焼き芋の最高のスパイスだ。
「……いい匂いですわね」 匂いにつられたのか、エリシアが優雅に(しかし足早に)やってきた。 「今日は『焼き芋』と聞いて、公務を早めに終わらせてきましたの」
5. ねっとり甘い誘惑
「よし、焼けたぞ」
俺は焚き火の中から、黒く焦げた葉っぱの包みを取り出した。 熱々の塊を割り、半分に折る。
パリッ……ほわぁぁぁ……
湯気と共に現れたのは、黄金色に輝く中身。 蜜がたっぷりと染み出し、キラキラと光っている。
「「「いただきまーす!」」」
シルフィがハフハフしながら齧り付く。 「んん〜〜っ!! 甘ぁい! 何これ、お砂糖入れてないよね!? クリームみたいにトロトロで、口の中で溶けちゃう!」
エリシアもスプーンですくって一口。 「……! これは……野菜というより、もはや高級な菓子ですわ。皮の近くの焦げた部分が、キャラメルのように香ばしくて……」
続いて、網で焼いた「クリスタル・マロン」。 殻を剥くと、ホクホクの実が現れる。 「こっちは粉雪のような食感! 上品な甘さで、いくらでも食べられるです!」 ポン太がリスのように頬を膨らませている。
6. 夕暮れの満腹
気がつけば、山のようにあった芋と栗はすべて空になっていた。 全員、お腹をさすりながら満足げなため息をついている。
「ふぅ……秋って最高ね」 「ええ。こんなに豊かな恵みがあるなんて」
夕日が森を茜色に染め、冷たい風が吹く。 けれど、俺たちのお腹と心は、焚き火のようにポカポカと温かかった。
「余った芋は『干し芋』にして保存食にしようか」 「賛成! 冬のおやつ確保ね!」
こうして、異世界の秋もまた、美味しいもの尽くしで更けていくのだった。




