お肉の王様? 奇跡の畑バーグ
1. 王女の勘違い
「カイトさん。約束の『ハンバーグ』を楽しみに来ましたわよ」
週明け。エリシアが優雅にログハウスを訪れた。 しかし、彼女は重要なことを勘違いしていた。
「お姉ちゃん、ハンバーグって何か知ってるの?」 シルフィが尋ねる。 「ええ。焼いた丸い料理でしょう? パンに挟んだりもするとか」 「……あれ、お肉の塊だよ?」
「なっ……!?」
エリシアの顔色が青ざめた。 「お、お肉……死肉をミンチにして……? そ、そんな野蛮なもの、高潔なハイエルフが口にできるわけないでしょう! 騙しましたわね!」
怒りの矛先が俺に向く。 だが、俺には秘策があった。
「大丈夫です、エリシアさん。俺が作るのは、**『畑で採れたハンバーグ』**ですから」
2. 肉の味がする野菜たち
俺はキッチンに素材を並べた。 そこには肉は一切ない。あるのは野菜だけだ。
メイン食材1:バッファロー・ポテト
牛肉のような濃厚な旨味を持つジャガイモ。
メイン食材2:大いなる豆(大豆)の搾りかす
豆腐を作った後のおからや、大豆を加工した「ソイミート」。
つなぎ:レンコン(森で採取)
すりおろすと粘り気が出る。卵の代わりに使用。
「野菜で……肉料理を?」 エリシアは半信半疑だ。
3. 騙されたと思って
まずは「バッファロー・ポテト」を蒸してマッシュする。この時点で、キッチンには焼肉屋のような香ばしい匂いが漂う。 そこに、お湯で戻した「ソイミート」と、飴色に炒めた玉ねぎを混ぜ込む。 つなぎのレンコンパウダーと、ナツメグなどのスパイスを投入。
「【生活魔法:粘り気アップ】」
俺は魔力を込め、生地をしっかりと練り上げる。 空気を抜くように ペチッ、ペチッ と両手でキャッチボールをして成形。 見た目は、完全に普通のハンバーグだ。
熱したフライパンに油を引き、タネを投入する。 ジュウウウウ…… 焦げ目がつく音。立ち上る脂(植物油)の香り。
仕上げに、赤ワイン(山葡萄で作成)とケチャップ、ソースを煮詰めた「デミグラス風ソース」をたっぷりとかける。
4. 脳がバグる美味さ
「お待たせしました。『特製・畑のハンバーグ』です」
鉄板の上でソースが踊っている。 エリシアはナイフを入れた。 肉汁……に見える「野菜の旨味スープ」がじゅわりと溢れ出す。
「見た目も匂いも、完全に肉ですけれど……」
意を決して、彼女は一口食べた。
「…………は?」
エリシアが停止した。 そして、自分の舌と目の前の料理を交互に確認する。
「肉……ですよね? 粗挽きの肉の食感、濃厚な脂の甘み、噛むほどに溢れる肉汁……。どう考えても最上級の牛肉ですわ! カイトさん、嘘をつきましたね!?」
「いいえ。中を見てください。繊維が違うでしょう?」
彼女は断面を凝視した。 確かに、それは肉の繊維ではなく、豆と芋が複雑に絡み合ったものだった。
「信じられない……。野菜だけで、これほど『暴力的』な旨味が出せるなんて……!」
5. 罪悪感ゼロの快楽
「これなら、いくら食べても戒律違反にはなりませんよ」
その言葉が引き金だった。 エリシアのフォークが加速する。
「お肉の味がするのに、後味は野菜だから重くない……! ソースが絡んで、ご飯が進みすぎますわ!」 「ああっ、お姉ちゃん私の分まで取らないでよ!」
結局、特大のハンバーグは一瞬で消え失せた。
「ふぅ……満足です。……カイトさん」 エリシアは口元を拭い、真剣な眼差しを向けた。
「この『バッファロー・ポテト』、我が国の王室農園でも栽培したいです。種を分けていただけますか?」 「もちろん」
こうして、ハイエルフの都に「革命的な野菜」が持ち込まれることになった。 頑固な菜食主義の壁を、俺の農具と知識が少しだけ崩した瞬間だった。




