サバイバル
人を食べると爆発的に増える侵略的怪物群と人類との生存戦争が勃発してかなり経つ。
当初の絶望的劣勢は徐々に巻き返しつつある。
機器の遠隔操作による無人戦闘技術の発展と共に、ドローンを始めとする膨大な遠隔機器が随所に常駐配備され、コンピュータゲーム分野の知見を集約した戦闘システムが実装。
そこへ脳を接続する最新の侵襲型BMI技術が加わったお陰で、高精度かつ低負荷の戦闘が容易になった結果、多くの市民が自宅等から意欲的に参戦するようになったからだ。
各人は精神衛生の為システム画面上で巧妙にマスキングされた現場へ無作為に配置され、同じく外見の脅威度を下げた怪物の描像を倒す。
戦績に応じて賞与と共に登録者名がランキングで公開され、より困難な現場へ配置される仕組みは正にゲームの娯楽性を帯び、VR機器を追加接続して臨場感を増幅できるMODが出回ってさえいる。
かく言う私は当のMODを愛用する専業の世界ランカーだ。
負けて現場が陥落した時の罪悪感が酷いので現場マスキングは剥がさないが、怪物の外見や五感は勿論、痛みや疲労も現実寄りの数値で日々部屋へ籠り切って闘っている。
SNSで感謝の投稿なぞ見ると、楽しみや功名心に留まらず身も心も奮う。
今日も仮眠から復帰して各種VR機器を装着し、吹き荒れる風やつんと刺す怪物の臭い、味方の銃声を感じながらマスキングされた現場で目を開ける。
早速前進する。構造的に集合住宅らしい。
ここ数回好戦績が続いた所為か、怪物の数が多い高難度の現場だ。
警戒心は波打たせずぴんと張り、常に視野を広く取って各怪物の進路を予測し優先順に銃口でなぞり撃つ。
撃ち漏らしたら以降の経路へ統合しつつ左折。ドアを開けて、ああ其処。ああ言う物陰は特に気を付けなきゃ。
死角だらけのこの配置。
今居る私の部屋その物。
あれ?
瞬間、撃ち漏らした怪物に左前腕へ食い付かれ、抜こうと引いた手首の辺りでシステム上存在しない硬質な出っ張りに阻まれる。
VR用グローブの出っ張り。
咄嗟に銃で応戦し、VR用ヘルメットをかなぐり捨てる。
猛然と押し寄せる粉塵、轟音、激臭の中、壁が抜けた自室を背景に、目前の図体を仰ぐ。
仰いで仰いでほぼ真上で頭部に行き当たる。
あー糞何この糞仕様。
こんなのバグじゃん。
目の前の怪物に乱射する。
配備されたドローンが火を吹いて、きんきんからから大量に薬莢が落ちるが間に合わない。
血肉塗れの開口が迫る。
物凄くリアルだ。
終.




