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行きつけ、いつもの。

作者: 天城なぎさ
掲載日:2025/12/06

 俺の名前は、天野(あまの)(じん)。30歳の乙女座。血液型はAB型。好きな食べ物は、ホットケーキ。趣味はカフェ巡りとスイーツ巡り。


 そして今日も、行きつけの喫茶店、《ポコ・ア・ポコ》へとやって来た。


「よっす~。七菜子(ななこ)ちゃーん」

「うっわ。また来たのかよ。仁」

「え~。ちょっと冷たくない? 常連なんだけどなぁ」

「ハァ。で、いつものでいいの?」

「うん! お願いします!」


 ここの喫茶店は、同級生の唐松(からまつ)七菜子ちゃんのお店。

 小さいけれど、このお店を創った七菜子ちゃんは凄い。


 ドリップコーヒーの良い香りが漂ってくる。俺の特等席はカウンターの3席目。

 他に客はいないけれど、それは時間帯にもよる。

 店内を流れるBGM は、心地良いカフェジャズ。


「そういえば、七菜子ちゃんは聞いた? (かおる)の奴、結婚するらしいよ」

「へぇ。薫がねぇ。あいつ、大学の時に大失恋したんじゃなかった?」

「そーそー。あれから、恋愛はしないとか言ってたのにさ」

「でも、良かったじゃん。はい、コーヒー」

「ありがと。たださ、薫に先越されたの、何か悔しくて」


 甘い香りがしてきた。これは俺のいつもの、ホットケーキの香り。

 ジュワ~と、温められたフライパンに注がれた生地が、少しずつ焼かれていく。


「七菜子ちゃんは、いい人いる? てか、彼氏いたっけ?」

「いないけど? お店やってて、忙しいし。それに、仁に心配されるとか、あたしも堕ちたものだね」

「酷いなぁ。もう俺たちだって三十路よ? み・そ・じ」


 ホットケーキを焼きながら、七菜子ちゃんは黙ってしまった。

 カフェジャズを聴きながら、俺はコーヒーを飲んでいく。

 こうなってしまった七菜子ちゃんは、大体機嫌が悪い。触らぬ神に何とやらだ。


「はい。ホットケーキ」

「ありがと」


 俺の大好きな、2段のホットケーキ。バターとメープルシロップが掛けられた、あまり厚みの無いオーソドックスなやつ。

 受け取ったホットケーキにナイフを入れ、フォークに刺して。シロップが掛かった甘くて美味しいところを。1口。 

 カリカリ、サクサク、フワフワ。この擬音が似合うホットケーキが作れるのは、七菜子ちゃんだけ。


「ん~! 美味しい!」

「当たり前でしょ。あたしを誰だと思ってんの?」


 今日も、七菜子ちゃんが作るホットケーキは最高だ。

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