行きつけ、いつもの。
俺の名前は、天野仁。30歳の乙女座。血液型はAB型。好きな食べ物は、ホットケーキ。趣味はカフェ巡りとスイーツ巡り。
そして今日も、行きつけの喫茶店、《ポコ・ア・ポコ》へとやって来た。
「よっす~。七菜子ちゃーん」
「うっわ。また来たのかよ。仁」
「え~。ちょっと冷たくない? 常連なんだけどなぁ」
「ハァ。で、いつものでいいの?」
「うん! お願いします!」
ここの喫茶店は、同級生の唐松七菜子ちゃんのお店。
小さいけれど、このお店を創った七菜子ちゃんは凄い。
ドリップコーヒーの良い香りが漂ってくる。俺の特等席はカウンターの3席目。
他に客はいないけれど、それは時間帯にもよる。
店内を流れるBGM は、心地良いカフェジャズ。
「そういえば、七菜子ちゃんは聞いた? 薫の奴、結婚するらしいよ」
「へぇ。薫がねぇ。あいつ、大学の時に大失恋したんじゃなかった?」
「そーそー。あれから、恋愛はしないとか言ってたのにさ」
「でも、良かったじゃん。はい、コーヒー」
「ありがと。たださ、薫に先越されたの、何か悔しくて」
甘い香りがしてきた。これは俺のいつもの、ホットケーキの香り。
ジュワ~と、温められたフライパンに注がれた生地が、少しずつ焼かれていく。
「七菜子ちゃんは、いい人いる? てか、彼氏いたっけ?」
「いないけど? お店やってて、忙しいし。それに、仁に心配されるとか、あたしも堕ちたものだね」
「酷いなぁ。もう俺たちだって三十路よ? み・そ・じ」
ホットケーキを焼きながら、七菜子ちゃんは黙ってしまった。
カフェジャズを聴きながら、俺はコーヒーを飲んでいく。
こうなってしまった七菜子ちゃんは、大体機嫌が悪い。触らぬ神に何とやらだ。
「はい。ホットケーキ」
「ありがと」
俺の大好きな、2段のホットケーキ。バターとメープルシロップが掛けられた、あまり厚みの無いオーソドックスなやつ。
受け取ったホットケーキにナイフを入れ、フォークに刺して。シロップが掛かった甘くて美味しいところを。1口。
カリカリ、サクサク、フワフワ。この擬音が似合うホットケーキが作れるのは、七菜子ちゃんだけ。
「ん~! 美味しい!」
「当たり前でしょ。あたしを誰だと思ってんの?」
今日も、七菜子ちゃんが作るホットケーキは最高だ。




