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勇者、元魔王に敗北する。

今日も、強制的にお茶会に参加させられているオレに、サラ嬢が話しかけてくる。

「ねぇ、勇者様!明後日、手作りのお菓子を持ち寄って、みんなでパーティをするの!勇者様もいらして?」

「……つかぬことを聞くが、面子は…?」

「私とカイさんよ!!」

「勇者であるオレが、魔王とお菓子パーティ?!そんなこと許されるわけ…うぐ?」

“許されるわけがない!!”と叫びたかったのだが、魔王が、“手で口の右端から左端へと引く動作”をする。

いわゆる“お口チャック”の仕草をすると、オレの口が開かなくなった。

「サラの純粋な願いも叶えられぬとは、何が“勇者”だ…嘆かわしい。……サラよ、勇者はお菓子作りに自信がないので、辞退を申し出そうとしている。」

「そうなの?でも大丈夫なのだわ、勇者様!私もカイさんに教えて貰いながらやるもの!!どんなに不格好でも…笑わないでほしいのだわ。」

サラ嬢が首をこてんと、傾げる。

「安心しろ、サラ。勇者様ともあろう者が、笑うなんてことはせぬまい……良かったな、勇者様よ?寛大なサラは、貴様を、不問にするという。」

魔王がお口チャックを解く仕草をする。

「はぁ…はぁ…!くそっ…覚えてろよ!」

「明後日の午後に、また会いましょ!!」

魔法が解かれた身体で、屋敷から走り去る。


というのが昨日の出来事だ。

「菓子?菓子だと?勝手が分からん…しかし――あの魔王をギャフンと言わせたい!!やるしか…オレがやるしかないんだ!!」

寮母や、所属している部隊の調理を担当している者に尋ね回る。

そして、どうにか少し形が崩れたクッキーが完成。

「これで、魔王をギャフンと言わせ…られるだろうか?」


次の日の午後

「勇者様!来ていただいてありがとう!!早速お菓子パーティを始めましょ!私はこれなのだわ!」

元魔王が皿を並べる。そこにはゼリーがぷるんと盛られていた。

「カイさんに教えて貰って、自分で作ったのよ!」

「へぇ、美しい色ですね。何味がお聞きしてもいいですか?」

「うふふ、これは、木苺の味なのだわ!次は、カイさん!!」

「吾はこれだ。」

そう言って、色とりどりのマカロンが並べられている皿をテーブルに置く。

「(焦げもなく、割れもせず、不自然な形もない…コレでは俺のクッキーが霞んでしまう…!!)」

「さぁ!勇者様は?」

「俺は…」

自分のクッキーを出すのを躊躇っていると、

「サラを待たせるな。」

魔王がそう言いながら、人差し指をオレの方に向けたと思ったら、自身の方に向かって、スイっと動かす。

するとオレの懐からクッキーが入った袋が出てきた。

「まぁ!クッキー!私、クッキーが大好きなの!!早速いただきましょう!!」

サラ嬢と魔王が、オレのクッキーに手をつけ、一口食べる。

「うん!香ばしくって美味しい!!」

「ほ、本当か?」

「…本来なら、サラの口に入れるに値しないが、サラが気に入ったのならよかろう。筋も悪くはないようだしな。」

「一言多いな貴様は!!」


後にオレの作ったクッキーが“幻のクッキー”として王国中で人気になるなんて、思いもしなかった。


オマケ

勇者「クソ!魔王め!!何が“サラの口に入れるには値しない”だ!!こうなったら、とことんやってやる!!」

数日後

王国の人「ねぇ?ご存知?不定期的に王国のどこかで、それはそれは美味しいクッキーが売られているんですって!」

「聞いたことがあるわ!つくり手は、一切の顔も名前も出さず無人販売だって。」

「一部の噂では、お菓子を極めたいさすらいのパティシエが作ってるだとか!」

「あら?私は妖精の仕業だって聞きましたわ!」

勇者(練習のしすぎで、余ったから無人販売しただけなのに…)

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