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元魔王、庇われる。

前回の話に少し加筆しております。先に前の話を読むことをおすすめします。


また場面が変わる。

しかし、先程の和やかな雰囲気ではなくなってしまった。

なんだこれは、何が起きている……?

とある魔族は、瓦礫に足を挟まれ動けないでいた。

違う魔族は、子供を庇い倒れ、庇われた子はただ泣いていた。

家々は燃え上がり、崩れ落ちていた。

緩やかに発展していた街は、そこにあったことを証明しようがないくらいに、何も無くなっていた。

駆けつけようにも、神のような視点に固定され、身体が思うように動いてくれない。

くそっ、動けっ!種族など関係ない!

泣いている者がいるなら手を差し伸べるのが勇者だ!

気持ちでは、ジタバタと足掻いているが、実際にはピクリとも動けていない。

何分か暴れていたのが功を奏したのか、右手がようやく、ズボンのポケットに触れる。

すると、ポケットから何かが出てきて、オレの目の前に現れる。

……メモ紙?

『親愛なる我が盟友へ。いけ好かないあの野郎を再び、ギャフンと言わせるべく、初回限定であの野郎の過去を追体験できます。ギャフンと言わせる糸口をどうか見つけてください。アルプトラオムより。』

―――っそういうことは、別紙ではない方が嬉しかったな!ラオム殿!!

夢にしては、妙な感覚だと思ったら魔王の過去だと!?

追体験というより覗き見ている、という方がしっくりくるが!?


……だとしたら、この光景は実際にあったことなのか……?

泣き叫び、助けを求め、しかしその声は誰にも届かない。

あいつはこんなことを経験したというのか。

その時、年若い男の笑い声が聞こえる。


「あっはっはっ!悪しき魔物たちめ!虫けらのように地べたに這いつくばれェ!その惨めな生を終わらせてやろう!異世界より来たりし勇者の手によってなァ!あっはっはっ!!」


―――は?

今、あいつはなんと言った?

異世界より来た“勇者”だと……?

そんなわけはない、断じてそんなことはあってはいけない!

……そうだ、きっと何かの間違いだ……

あんな血も涙もなさそうな男が――オレの先祖であるものか……ッ!


突然、瓦礫が音を立て崩れる。

中から手負いの魔王が、フラフラと出てきた。

「……貴様、その魔法はなんだ。魔法が無効になる魔法なんてものは、見たことも聞いたこともないぞ。」

「当然だろォ?魔法じゃなくて、神サマからお詫びとして貰った“祝福チート”だからなァッ!」

魔王が居た場所から、また音が聞こえる。

瓦礫の山だと思っていたものは、どうやらアーラン殿だったらしい。

よろめきながら魔王の前に立つ。

「……我が王よ、自分おれの後ろに。」

「退け、アーラン……吾ひとりで十分だ。貴様は吾にありったけの強化魔法を寄越せばいい。」

そう言って、ふわりと浮かび上がり様々な種類の魔法を発動させる魔王。

アーラン殿も「“偉大なる大地の源よ、我が主に力を……”」と強化魔法を施している。


「あっはっはっ、痛くも痒くもねぇぜェ!?お前たちをぶちのめしたら、次はどの国を潰してやろうかなァ!!」

「“魔族は人間にとって脅威だからよォ!”」微塵も思ってないくせに吐き捨てるように言い、魔法と剣術を駆使して魔王を追い込んでいく勇者。


「―――これで、終わりだッ!!」

強烈な一撃が、魔王へと向かう。

覚悟を決めたように目を瞑る魔王。

オレにも絶望に似た感覚が襲う。走り出したいのに、未だに身体は動いてくれない。

だが、アーラン殿は諦めていなかったようだ。

攻撃が魔王に届くすんでのところで、自分の身体を割り込ませる。

しかし、完全には衝撃を受け流しきれなかったようで、城の方まで飛ばされていった。

「フンッ、雑魚が。準備運動にもなりやしねェ!」

そう吐き捨てながら去っていく勇者。


あいつが、あんな奴が本当に勇者なのか?

……オレが敬愛してやまない先祖だというのか……ッ!!

いつの間にか力を込めていた拳から、血が滲んでいた。


―――

再び場面が変わる。

瀕死のアーラン殿に、魔王が魔力を注いでいる。

……人間では波長が合わない限り、魔力を他に渡すなんてことは出来ないんだが、それをやってのける魔王は、やはり規格外なんだなと思い知らされる。


「……最期に、親友……として、頼みた、い……

カイサル…!どうか、サラの……成長を、見守、て……―――」

「それは、お前の役目だろう、アーラン……?…!!ッアーラン!返事をしろ!!アーラン!!」

眠るように息絶え、うずくまったアーラン殿の身体から、流れ出した血や魔力を栄養として、草木が芽を出し始める。

それを何度か払い除けるが、草木の成長速度は増すばかりで、ついに魔王は、項垂れて払うのを止めてしまった。

「……ッ!……吾に、友の亡骸さえも、弔わせてはくれぬのか…」

一雫の涙が、魔王の足元にある草を濡らす。

何もかも諦めたような顔、と言ったらいいのか。

……お前は、そんな顔をして泣くんだな。


よろよろと立ち上がり、「“奥方……サラ……”」と呟き姿を消す魔王。

また場面が変わるのかと身体をこわばらせるが、変化が訪れない。

不思議に思っていたら、足元から呻く声が聞こえた。

「……ぅ……ずっと、我々を、見ていたんだろ……?」

ぎくりと肩が上がる。

オレのことを認知してるのか?

声を出そうにも、発声の仕方を忘れたみたいに声が出ない。

漏れ出るのは、息だけだった。

「……まぁ、いい。お前が、何処のどいつだろうと、関係、ない。」

夢、ではなく過去の追体験だと言うのに何故、アーラン殿と目が合うのだろうか。

「……あいつは、勘違い、されやすくて、周りに、甘くて……自分で、やった方が、早いって、誰かに……頼ろうと、しない。」

アーラン殿の身体は、ほぼ草木に覆われてしまっていた。

顔にも蔦などが伸びてきている。それでもなお、言葉を紡ぐアーラン殿。


「……カイサルを、自分おれの親友を、頼む。」


そこで、オレの意識は浮上した。



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