勇者、暴かれる。
『勇者クン♡こっち来て♡』
甘い声色で、勇者を呼ぶメラニ。
魅了魔法が乗せられた声のせいで対抗できずに、フラフラとメラニの元へ向かう勇者。
「おいっ!なんでオレ呼ばれたんだ!クソッ嫌な予感しかしない!!止まれっオレの足っっ!!」
軟弱な奴だな。
『ねぇ♡勇者クン?私にどんなことシてほしい?』
魅了魔法の声で、勇者の欲を暴こうとしているメラニ。
これはいけない。
指を鳴らし、屋敷のカーテンを閉める。
中から「“カーテンがしまっちゃったのだわ!”」と声が聞こえる。
許せ、サラ……お前にはまだ早い。
その間にも、胸を勇者の腕に押し付け、足も絡めるメラニ。
「あぅ……オレの、シてほしいこと……?」
目を回しながら、彼女の言葉を反芻する勇者。
「……くら、して……ほしい……」
『なぁに♡もう一回言って?』
「長いよオバサン!俺に代わりな!」
辛抱を切らしたレイリスが、反対の腕に絡みつき、勇者を上目遣いで見つめる。
『俺なら勇者クンの望む姿になれるよ?思い浮かべてみて?看護師、シスター、ギルドの受付嬢……さあ、どんな子が好み?』
息を荒くしながら「“好みの……姿……?” 」とフラフラとしている勇者。
瞬間、レイリスの姿が変わる。
「「は?」」
二人が声を揃えるのも頷ける。
この姿は―――先日、女体になった吾ではないか。
「……膝枕してほしい。」
勇者がはっきりと言葉を発する。
その時
「うわぁぁぁあああん!!カイ先輩ぃいい!!」
ユニが上から、三人の目の前に降りてくる。
「“どうした”」と声をかける前にユニが「“オェッ”」と嘔吐き、口から虹を吐き出す。
……ここで言う“口から虹”は比喩表現である。
その光景を見たせいか、勇者が正気に戻り「“オレはなにを言って……?”」「“今のは決してオレの本心じゃない!”」と一人ころころと表情を変えていた。
「人の顔を見るなり吐くなんて、いい度胸してるわねユニ?」
「お前の目の前で、勇者クンの童貞を奪ってやろうか?」
「おいっ!オレを巻き込むなッ!!」
「……ユニ、庭を汚すな。掃除が面倒だ。」
「うぇんっ!誰も心配してくれないでぇすっ!」
―――
落ち着いたところで、ユニが話し出す。
「メラ先輩とレイ先輩がいつまでも帰ってこないからって、フェス先輩が、嫌がるユニをここまで投げ飛ばしたんでぇすよっ!しかも着地点には、前も後ろも“ズタズタ”なお二方。これは吐いてもしょうがないでぇすよっ!」
「“サラ姫で癒されないとっ!ぷんぷん!”」と擬音を口に出し、怒りを表すユニ。
相変わらずフェステは、物理的すぎるな。
……より一層、サラに悪影響を及ぼす人材が集まってしまった。
そして、そろそろサラが寂しがる頃だろう。
―――致し方あるまい。
「そうか、なら貴様ら全員、魔界に帰るがいい。」
『魔界の城よ。扉を開きて、この者らを招くがいい。』
奴らに有無を言わせる間もなく、詠唱した後に、手を一回叩く。
魔王三人を魔界へ、強制的に送り返す。
鼻の奥が熱い。液体がたらりと垂れる感覚がする。
どうやら鼻血が出てきたらしい。
……さすがに少々、疲れてしまった。
「……自我を持つ者達を強制的に、転移魔法で送り帰すだと……?」
すこし怯えた目を吾に向ける勇者に、声をかける。
「サラが寂しがる。アフタヌーンティーの続きをするぞ。」
短く「“ああ”」と返事をする勇者の前を移動する。
はあ、皆が帰った理由をサラにどう説明したものか……
いっそ、勇者に丸投げしようと思う。




