サラ、祝われる。
「そっか!ピンと来てなかったんですけど、今日ってサラ殿のお誕生日なんですね!こうしちゃいられねぇ!研究所で、渡せそうなプレゼントを漁ってきますね!」
そう言って、止める間もなく別行動を取るドクトリナ。
なんでわざわざ研究所まで行くんだ、お祭りのもので賄えばいいのに……
「“お祭りのもので賄う”のもいいけど、やっぱり違う特別感を出したいよね!」
にこにこと笑いながら、オレの横に立つジュリエット嬢。
なんで、みんなオレの思ってることがわかるんだ!?
そんなにわかりやすい顔をしているだろうか……?
「“ジュリたちも、サラちゃんにプレゼントを届けに行くの!一緒に行こー!”」とジュリエット嬢が、オレの腕に抱きつき
祭りを見て回りながら、屋敷へと向かう
「(……腕に柔らかい感触が、あたって……その、振り払うのは違う気がするしな……
オレはどうしたら……)」
その時、娘さんがジュリエット嬢をつんつんと突く。
「ママ、この人、困ってる。たぶん、腕組むの、恥ずかしい。」
「えぇ〜!勇者くん、こういうスキンシップも恥ずかしいの?ちゃんとスマートに対応出来るように、ジュリが教えてあげる!」
娘さんのフォローも虚しく、オレの腕は柔らかいものがあたり続けた。
嬉しいのと、娘さんが見てるのが気まずいのでとても複雑な気持ちだ。
あらかた祭りを見終わり、屋敷に着いた。
呼び鈴を鳴らす前に、ノーティが「うるろろろろ」と喉を鳴らしながら、屋根から降りてくる。
娘さんが「“おっきいネコちゃん!”」と大興奮していた。
お祭りを見ている時よりも、テンションが高いように感じる。
「来たか、勇者。それからジュリエットとその娘か……久しいな、変わりはないか?」
目を細めながら、娘さんに挨拶をする魔王。
「お久しぶりです。カイサルさん。ネコちゃん、飼ったんですか!」
聞かれた娘さんは、ノーティをそわそわと見つめて、それどころではないようだ。
「“ネコちゃんは、あとで撫でさせてもらいましょうねー♡”」とジュリエット嬢に手を引かれる娘さん。
あ、哀愁がすごい。
背中から漏れ出ている……
魔王に案内されたのは、いつもの室内ではなく、裏庭。
そこにはサラ嬢と……彼女が埋もれるのではないかと思うほどのプレゼントがあった。
「皆さん、サラの誕生日会へようこそ!今日も楽しんでいってほしいのだわ!」
「サラ、ジュリエットとお菓子の娘、それから勇者が来たぞ。」
「まあ!ジュリちゃんおば様、お菓子ちゃん、それから勇者様!いらっしゃい!カイさん、お茶にしてもいいかしら?」
「わかった、用意しよう。」
魔王が指を鳴らす前に、ジュリエット嬢が娘さんを前へ出す。
「あ!茶菓子は、サラちゃんのプレゼント用に持ってきたこれにして!ほら、持っていってあげて?」
こくりと頷き、魔王へこそこそ大きめな箱を差し出す。
「お誕生日おめでとう。サラちゃん。良かったら、食べて?」
サラ嬢が箱を開けると、彼女が持ってても違和感のない大きさのケーキが出てきた。
「“どれだけ大きいんだ!”」とか「“明らかに箱の大きさと合ってないだろっ!”」
……など、言いたいことは山ほどあるが、オレも“人のことは言えない”ので黙っておく。
「お菓子ちゃんが作ってくれたの!?嬉しい!ありがとう!お菓子ちゃんの作るものは、どれも美味しいから好き!」
二人は仲の良い友人のようだ。
娘さんも照れながらも嬉しそうに笑っている。
「はーい!ジュリから、というより『大罪の魔女たち』からサラちゃんへって感じのプレゼントだよっ!」
そういうと、白い封筒を魔王に渡すジュリエット嬢。
魔王が「“サラに魔法を教えてあげる券”」と読み上げる。
「サラちゃんも、そろそろ魔法の勉強した方がいいでしょ?私たちが使う魔法は教えられないけど、魔族が使う魔法ならジュリたちも教えられるしね!」
ジュリエット嬢が娘さんを抱え、ふわりと浮かびサラ嬢の顔の前に行く。
「そして、ついでに『祝福』をサラちゃんにプレゼントだ!さあ、練習の成果を見せる時だよ!」
娘さんが頷き、サラ嬢を見つめる。
『いつまでも、お菓子のように甘い日々を。』
『飢えに苦しむことない、満ち足りた未来を。』
二人が言い終わると、淡い光がサラ嬢を包む。
なんて優しい光なのだろう。
ノーティも気になるらしく、サラ嬢の周りをうろうろしている。
―――
「“ゆっくりできなくてごめんねー!さすがに仕事サボりすぎちゃって、今日もサボると怒られるんだ!”」と言って、娘さんと一緒に帰ってしまった。
相変わらず嵐のような人だな……
「さて、勇者よ。貴様もサラに贈り物があるんだろう?出せ。」
「言われなくても出すわっ!」
……出すが、出したいんだが
……娘さんの作った、店で出ているようなケーキのあとだと、どうにもパッとしない気がする。
――ええい!男は度胸!出すぞ!!
「早くしろ。」
魔王が人差し指を、くいっと上にあげると、オレが持っていたカバンが勝手に開く。
そしてふよふよと、大きく少し歪なクッキーがサラ嬢の前に運ばれる。
「まあ!サラの顔ぐらい大きいクッキーなのだわっ!夢見たい!いつか私よりも大きなクッキーを食べてみたいと思ってたの!」
目を輝かせ、浮かんでいるクッキーを持つサラ嬢。
……良かった、喜んで貰えたようだ。
緊張してたのか、肩の力が抜けるのを感じる。
「カイさん、食べてもいいっ!?」
「そうだな、今度こそお茶にしようか。」
そして、いつも通りのお茶会が開かれる。
「うふふっ、いつも嬉しいけれど、今回はいつも以上に嬉しい誕生日なのだわ!そうだ、勇者様見て見て!ノーティからもプレゼントを貰ったのよ!」
そう言ってごそごそと探し、オレの顔の前に持ってくる。
「とっても綺麗な石でしょ?」
「……これって……」
「魔石の原石だな。この大きさなら、人間が使うであろう魔石数十個は採れるな。」
何ヶ月も鉱山夫が掘って、やっと一個採れるかどうかの魔石の原石……?
数十個???
ギギギ……と鈍い動きでノーティを見る。
サラ嬢の食べこぼしを狙っていたノーティが、オレの視線に気づき、興味なさげに欠伸をする。
もしや、この中で一番高額な贈り物なのでは……?
オレは現実逃避のため、お茶を飲んだ。




