元魔王、魔王を簀巻きにする。
「最後の質問だ。サラが食事時、誤ってナイフやフォークを落としてしまった。どうする?」
いや、これは簡単だろ。
新しいのに取り替え……
「すぐさま拾ってぺろぺろしまぁすっ!!!」
「アウトォォォオオオ!!なんでそうなるんだ?!」
「死刑。」
……ここまで蔑んだ目をした魔王を見るのは、初めてだ……
少し身震いをしてしまった。
「あぁんっ!“不合格”ですやらない!?なんででぇすかっ?!」
「いや逆になんでだよっ!?おかしいだろ!?取り替えろよ!!」
ユニ嬢が『ハッ』とした顔になる。
「取り替える……?思いつかなかった……勇者さん、従者の素質がありまぁすね……」
なに『やりますね』みたいな雰囲気出してるんだ!?ユニ嬢が、微塵も従者に向いてないだけだろっ!?
あとオレは勇者だから従者の素質は要らん!!
―――
『ユニの危険性』と言うよりか
「ユニ嬢の“変態性”」の間違いじゃないのか、魔王?」
縄でぐるぐる巻きにされ、床を転がされているユニ嬢を、足蹴にする魔王。
大概お前も、サラ嬢の教育に悪いからやめろ。
「……ユニは、見ての通り“ユニコーン種”だ。清らかなものを好み、それを感知する能力に長けている。そして、魔王に就任したと同時に『穢れたものを浄化する』という特性を獲得した。」
「……?なんの問題が……」
「あれは昔の話だ……本来のユニコーン種なら妊婦には近づかない。しかし、妊婦の“中”にいるものは『清らかなもの』だ。それに惹かれたのだろうな。フラフラとユニが近づいて、お腹を撫でてしまった。そしたら……」
思わず生唾を飲み込む。
「ど、どうなったんだ?」
「……妊婦が、“生娘”に戻ってしまったんだ。」
自分の喉からヒュッと音がした。
中にいた子供は……?
想像すると、背中に汗が伝うのを感じる。
足元のユニ嬢を見る。「“だって〜”」「“あれは〜”」「“不可抗力っていうか〜”」とぶつぶつ言っている少女が、オレには途端恐ろしい者に見えてしまって仕方がない。
「だから言ったであろう?ユニの危険なのだ。」
―――
「カイサルゥー?ユニ居るぅー?」
どこかで聞いたことのある声が、玄関の方から聞こえる。
「やれやれ、やっと迎えが来たか。」
そう言って魔王はユニ嬢を引きづって、玄関の方へ向かう。
そこに居たのは、どこの地区かは忘れたが、サキュバスの魔王二人がいた。
「レイリス、メラニも来たのか。疲れたであろう、お茶でも飲んでいくか?」
「んー、そうしたいのは、山々なんだけどぉ。」
「ユニったら、会議中に『お二人の間は嫌でぇす!』って飛び出して行っちゃったのよねぇ。」
メラニ嬢と呼ばれたサキュバスが、転がってるユニ嬢をつま先でつんつんと突く。
「てなわけで、ユニ連れてくからお茶はまた今度、ゆっくりできる時にね♡カイサル、サラちゃん、それから勇者クン♡」
レイリスと呼ばれた男性サキュバスが、ユニ嬢を担ぎ上げる。
「うえぇぇええん!前も後ろも“ズタズタ”な、お二人のにおいが、ほっっっとうにキツイでぇす!!サラ姫ーッ!!たすけてーッッ!!」
「……やはり、そういう事か。ユニコーンにサキュバスは相性が悪いものな。さしずめ、二人の喧嘩に板挟みに耐えきれなくなって、ここに逃げ込んできたというところか?」
「いや、待てユニ嬢は『穢れたものを浄化する』んだろう?ならサキュバスも……」
「「誰が“穢れたもの”ですって!?/だって!?」」
「何故、自ら地雷を踏みに行くのか、理解に苦しむな。サキュバスの性質は、ユニの特性を上回るということだ。個人の特性より、種族の性質が上なのは当たり前だろう?」
「うっ、や、すまない……?」
「今度言ったら、絞り尽くしてやるんだからねっ!」
「メラニ、それだと勇者にとって褒美だ。」
「なっ!?おま!?何言って!!?」
「今度言ったら、絞り尽くしてやるからなっ!」
「確かにそれは、処刑宣告だな。レイリス。」
「絶対言いません。」
誓約書を作成してもいい。
オレは心に深く刻んだ。
「「“それじゃあねー!”」」と行って、三人の魔王が帰っていった。
「“ユニは、サラ姫のメイドになりまぁすーっ!”」という最後の叫びがまだ耳に残っている。
「ご挨拶もできないまま、みんな帰っちゃったのだわ!カイさんひどいっ!サラもみんなとお話したかったのだわ!」
「すまぬ、サラ。そういえば、アップルパイを用意してるのであった。持ってこよう。」
「アップルパイっ!サクサク……とろーり……楽しみなのだわ!ねっ勇者様!」
「ああ、そうだな。」
いつの間にか部屋にいるノーティが伸びをしていた。
和やかなお茶会にまた戻る。




