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勇者、喧嘩を買う。


「てかよ……ただの人間が、こんな所で何してんだよ。」

少年が、デコピンを食らった額を押さえながら、オレを見る。

「オレは、魔王を討伐しに……」

「魔王を討伐?それは“勇者”の仕事だろ?お前、そこら辺の人間どもと変わんねぇ魔力量じゃねぇか。」

ぐさぐさとオレの心を刺してくる少年。

なんで、魔王関連の人間はオレが気にしていることを、ずけずけと言うんだ!

魔力量の増やし方を、ドクトリナに聞いてこようかな……

「……オレが、今代の勇者だ……」

絞り出すように、声を出すオレ。

「つまんねぇウソつくなよ!勇者って魔力量が、人間のくせに

魔王に匹敵するほどあって、手にしたもの全てが、武器になるぐらい武器の扱いに長けていて、

身長が五メートルで、肩幅が三キロメートルあるんだろ!?」


どんな化け物だ、それは。


「“本当!?サラより大っきいのだわ!”」「“文献に書いてあった!”」と二人の会話が聞こえてくる。

どの種族でも文献とは、当てにならないんだな……

「少年よ、残念ながらそやつが、今代の勇者だぞ。」

魔王が哀れなものを見るように、オレを見る。

そんな目で、こっちを見るな!!

魔王の言葉を聞いて、オレと魔王を交互に見る少年。

ノーティも少年の真似をして、交互に見る。

……見なくていい。


「肩幅……三キロメートルない……」

「まず、肩幅が三キロメートルある奴は、人間とは言い難いぞ、少年。」

「“少年”って……お前、人間だろ?オレ様の方が歳上だっ!ひれ伏しな!」

あまりにも子供じみた言い草なので、頭が冷静になってくる。

「人間ごときが、オレ様の姿を拝めるんだ。泣いてありがたがれよな!」

冷静に……

「そんな大したことない魔力量で勇者なんて、お前の祖先も大したことなかったんだろうな!」

置いていた武器に手をかける。

オレの魔力量が少ないのは事実だが、偉大なオレの先祖をバカにされるのは許せん!

「勇者様に、いっぱい酷いこと言わないで欲しいのだわ!確かに魔力量はちょっぴりだけど!」

ぐっ……

フォローになってないフォローありがとう、サラ嬢……

「うるさいっ!デカチビ!!」

サラ嬢がオレを庇うように抗議し、少年が一蹴する。

魔王の方から“バチッ”と電気が走る音がする。

見ると、目を見開き、瞳孔を細めて少年を見ている魔王。

身体に青白い雷がバチバチと走り、魔王の髪を逆立てていた。

――しかし、喧嘩を売られたのはオレだ。ならば買うのもオレだ。


「……女性に対して、その口の利き方はなんだ。」

「あ?なんだよ、お前に関係あんのかよ?」


“サラ嬢の手前”など、言ってられない。

剣を構えようとするオレと、戦闘体勢に入る彼――

――の、間に魔女殿が入り、スパンッ、スパンッとオレと彼の頭を一発ずつ叩いていく。


――ッた!?グァッ!?痛い!えっ!?頭割れてないか!?これ!

血が出ているのではと思い、頭を触ってみる。

出てはいなかった。なんと巧みな力加減なんだ!

これを受けてたのか少年は!?……頑丈だな……


「あんたら、暴れるなら外でやりな!いや、人様の屋敷で暴れるなんて、もってのほかだ!もっと実益のあることで勝負しな!」

勝負に実益もくそもあるのか……?

「カイサル、すまないね。うちの従業員はだいぶ手のかかる子でね。これでも柔らかくなったんだが……」

「サラに謝罪すれば、それでいい。サラよ、大丈夫か?」

サラ嬢がこくこくと頷く。泣いてはなさそうだった。


あれで、柔らかく……?

ノーティの肉球の方がまだ柔らかいぞ?

やめろ、オレの剣にじゃれるんじゃない、ノーティ。

「殺し合いに実益もくそもあっかよ、オレは、“事実を言った”それに対して、こいつは“キレた”、ならシンプルに殺し合い一択だろ!」

これで、柔らかく……?

魔王の作るマカロンの方がまだ柔らかいぞ。

昔はどんなだったんだ……?


魔女殿が、少年に鉄拳制裁を食らわす。

ドゴォッとおよそ人体から、してはいけない音が聞こえた。

「いってぇな!殴るのやめろよババア!背が縮んだらどうする!」

縮むとかそんなレベルではないと思うのだが。

「背が伸びる薬を処方してやるよ。」

あるのか、そんなものが。

いや、気になるとかそういう訳では……

オレだって、王国の方では高い部類だし……

魔王が大きすぎるだけだし……


―――

「勇者VSベルン、三番勝負!」

魔女殿が高らかに宣言する。

……そうか、少年の名前はベルンというのか。

魔女殿が続けて言う。

「ルールは簡単。お題別に勝負をしてもらい、二回勝ったものを勝者とする!」

「へっ!どうせ勝つのは、このオレ様だ!!」

案外ノリ気なので、少し驚いてしまう。

魔女殿には、懐いているということなのだろうか?


「最初のお題は『食器洗い』!自分で飲み食いした後片付けは自分でやる!実益も兼ねてる!」

実益ってそういう感じなのか、いいんだろうか?

「食器洗いなんて、オレ様がすることじゃ……」

――ヒュンッ

「……やってやるぜ!!」

「……力の限りを尽くさせてもらおう!」


魔女殿が、サラ嬢に合図を頼む。

「“サラが合図していいの!?やったーなのだわ!”」

元気になったようでよかった。

「それじゃあ、よーい……はじめ!なのだわ!」



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