勇者、百面相をする。
ヒメーレ殿と決闘の日取りを決め、当日が来た。
「おい、魔王これはどういうことだ?」
決闘場は「“屋敷の前の空き地を使うといい”」という魔王の一言で、サラ嬢の屋敷の前になった。
にしても広い。王城の庭並みに広い。
そこに用意された豪華な席に、見知らぬ魔族が四人――数え方は合ってるのか?――が座っていた。
六つの席に四人…?席の数が合ってないが、いいのか?
―――それから
「なんだ!?この人の数は!!?」
空き地の周りに、街の人たち全員いるのではないかと思わせる人集り。
「街の領主に「“催しにできそうなことがあれば、一週間前もしくは三日前に教えてほしい。”」と言われてな。
街の者たちは、娯楽に飢えているらしい。この決闘のことを教えたら、「“必ずや盛り立てて見せますぞ!”」と張り切っていた。」
愉快そうに笑う魔王。笑い事じゃないんだが。
遠くの方から屋台の香ばしい匂いや、甘い香り、
それから「“エール一丁ォ!”」「“へい、串焼きお待ちィッ!”」など様々な声が聞こえてくる。
勇者と魔王の決闘を、見せ物にするな!!
結界があるといっても、不安にならないのか!?
さすがは、魔王を“守り神”と称えている街の人たちなだけある。
肝が座りすぎてはいないか?
「勇者よ、そこに座っている魔王たちを紹介しておこう。」
魔王たちを紹介しておこう??
いや、そうなんだが、なんか……違くないか?
勇者と魔王が名乗り合いをするなら、『戦いに合った場、重い雰囲気の中』とかではないのか?
そんな『友達に親戚を紹介する』みたいなノリでいいのか?
いや、友人ではないのだが!
「まずは、一番右端に座ってる大男が、第一区域の魔王、フェステ……ファミリーネームは、長いから忘れたな。フェステはスライムだ。」
「お前、昔の同僚なんだろ!?いいのか?!」
「フェステ・ウンアウフハルツァムだ!
カイサルは、昔からそういう所があるからな。やむなし!」
確かに長いし、覚えづらいが……
いいのか?いや、絶対ダメだろ!?
てか、スライム!?こんな軍隊をまとめ上げてそうな屈強な男性が!?
「その左隣が、第二区域の魔王、メラニー・ケー二ギン、サキュバスだ。」
「あら、私の名前は覚えてたのね。よろしく、勇者クン♡」
にこりと笑って手を振ったあと、投げキッスをくれた。
サキュバスか……言われなくても分かる気がする。
片目が前髪で隠れていて、口元にホクロ……
なんというか、フェロモンが漂って……いかん、しっかりしろオレ!
「ウフフ、勇者クンってばカワイイ♡」
「破廉恥なやつめ。」
「うるさい!」
「その隣を飛ばして、次が第五区域の魔王、レイリス・ウムアルムング。こちらもサキュバスだ。」
「よろぴく〜♡」
目元にホクロがある男性が、ウインクしてきた。
順番的に飛ばされたのは、第三区域の魔王と第四区域……だよな?
第四区域はヒメーレ殿だからいいとして、第三区域の魔王は……?欠席か?
「第三区域の魔王は、何故か吾を嫌っている。今回、招待したが欠席に丸が付いていた。」
招待状を出したのか!とか、嫌ってる割には丸を付けて返信してくれるのか!とかツッコミたいが
今からそれをしていると、体力が持たないので受け流すことにした。
第五区域の魔王は……
「サキュバス?どう見ても男性のようだが……?」
「男のサキュバスだよん♡」
「男性ならインキュバスでは?」
「男から搾り取るんだから、サキュバスで合ってるよ♡」
???
「やめておけ、レイリス。こいつは童……」
「それ以上言ってみろ……八つ裂きだ……!」
第五区域の魔王が「“おお、怖っ”」と引き下がった。
危なかった、なにが危なかったかは、よくわからないが、とにかく危なかった。
「まあ、いい。続けるぞ。第六区域の魔王、ユニ・ベー……省略。ユニコーンだ。」
額に一本角が生えている少女がガタッと立ち上がる。
「カイサル様!酷いでぇすよ!確かに一緒に働いた期間は短いでぇすけど、私のファミリーネーム、レイリス様と同じぐらいだと思いまぁすよ!」
おお、魔王にちゃんとツッコめる者もいるのか。
希少だ……
もっと言ってやってくれ。
「最後の空席は、第七区域の魔王、ローガン・レクスだ。ローガンなら、貴様も会ったことがあるな。」
「ローガン??」
「覚えておらぬのか、目元が隠れた童と三人の侍女、それから黒いデカブツとお茶をしただろう。
あの黒いデカブツがローガンだ。そして魔皇国、第七区域の魔王だ。」
あ?
……あ〜〜〜っ!?
いた!確かにいた!
黒い人物よりも、ミオという少年の言動が気になって、気にもとめてなかった!
魔王のロングスカートの中が気になると言って、ドロワーズだ、生足だ、終いにはガーターベルトだと騒いで……
それから魔王がスカートをたくし上げようとしたのを、オレが止めたんだよな……
いや!まだその時は、魔王が女性だと思ってたし!
女性にそんな、はしたない真似をさせるわけには……!
ん?待てよ……もしかしてミオ少年は、魔王が男であることに気づいていたから、あんな質問を……?
ぐぁぁぁぁ!
十歳くらいの少年でも魔王を男性だと見抜いてたのに、オレときたら……!!
「一人で百面相してるのはいいが、そろそろ時間だ。戻ってこい勇者よ。」
魔王の声でハッと我にかえるオレ。
そうだ、今はヒメーレ殿に集中しなければ……!
え、魔王の紹介だけで終わった……だと?
ミオ少年のくだりは、別作品『王子、脱稿しました!』の 閑話「魔王の数だけ勇者もいる。」を読んでいただければ、なんとなくわかります。




