勇者、呪いを知る。
サラ嬢の屋敷でのお茶会も、抵抗感も感じなくなってきた今日この頃。
「“きたる、ヒメちゃんとの戦いに備え、勇者くんを特訓してあげる!”」とジュリエット嬢に裏庭へと強制連行された、オレとオフィリア殿。
それをワクワクした顔で見るサラ嬢と、いつも通り嫌味な笑顔の魔王。
ヒメちゃん……もしかしてヒメーレ殿のことだろうか……?
「前回はジュリだったから、今度はオレルちゃんとヤろう!」
「ジュリ、言い方変えて。サラの教育に悪い。」
全くもって同感である。
ジュリエット嬢の言い方は、なんというか……
その、あれだ、刺激的すぎる気がする。
「ん?勇者、貴様もしや童……」
「それ以上言ってみろ!刺し違えてでも、お前をコロ……討伐してやるからな!!」
魔王の言葉を遮るように叫ぶ。サラ嬢の教育に悪いとオフィリア殿が言ったばかりだろうに!
それにオレが童……女性との経験がないのは、訓練や任務が忙しいせいだ!
それがなければオレだって……クソッ
やめろ!哀れみの目をオレに向けるな!!
「“どう”?どうってなにかしら?気になるのだわ!」
気にしなくてもいいぞサラ嬢!
「ねぇ、これやらなきゃ駄目?」
「いいじゃん!ジュリたちが勇者とヤれる機会ってあんまりないんだからさ!」
「そうだけど……」
「オフィリアよ、『大罪の呪い』はいいのか?」
「ぐっ……そうだった……」
ジュリエット嬢の時も言ってたな、魔女の魔法の根本になるもの……確か『飢餓』だったか?
「カイさん、オレルおじ様も、たくさんお腹がすいてるの?」
「前に、吾が話していたことを覚えていたのか。さすがはサラだ。やはり魔女の素質もあるやもしれぬ。」
親バカめ。
「カイちゃんってば、サラちゃんが絡むとほんと、頭がゆるゆるだよね!」
「『飢餓』はジュリエット専用の呪い、僕の呪いは『衰弱』対処法は、一日一善。一日に一回、人助け的なことをしなければ、一週間眠りっぱなし。」
そ、それだけ……?
寝てるだけの呪いだなんて、まさに怠惰だ。
サラ嬢も「“寝てるだけなの?”」と言いたげな顔をしている。
「サラも勇者くんも「“寝てるだけ”」って思ったでしょ。」
ギクッ
思わず肩が跳ねる。
「一週間寝てるだけって簡単に言ったけれど、その間、一切飲まず食わずだからね。人間なら水があってギリ一週間、水なしだと三日程度が、生命の活動限界なの知ってる?」
そうか、種族は魔族寄りだけど身体の構造は、人間と同じなのか。
「しかも、魔族や魔物なら、自分より上位の存在から魔力を与えてもらえたりするけど、魔法の根源にもなっている魔女と同等もしくは、それ以上となると魔皇帝ぐらいしかいない。」
魔女っていうのは、大変なんだな……
それで、オレとの手合わせを“人助け”にカウントすることによって、呪いを対処するという寸法か。
「ハァ、めんどくさいけど、これが“人助け”になるなら、やらなきゃね。とりあえず、好きに攻撃してきてよ。」
そう言ってオフィリア殿は、人差し指をクイクイっと動かす。
オレだって、前回のジュリエット嬢の時からもっと鍛錬を積んでいる。
木刀を構え、オフィリア殿へと走り出し、フェイントをかける。
今回こそは――
「あー、うん、なるほどね、うん。……ジュリエット、カイサル、勇者くんにバフを、僕にはデバフをちょうだい。」
ジュリエット嬢みたいに面と向かって言われるのもキツイが、濁されるのもかなりショックなんだが!?
「決着つくまでやるのめんどくさいから、勇者くんが息切れし始めたらやめよう」
どんだけ面倒くさがりなんだオフィリア殿!
それともオレを舐めているのか……?
オレは、木刀を握る力を強めた。




