表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/52

勇者、魔王に決闘を申し込む。


サラ嬢に誘われ、いつものようにお茶を飲んでいると、屋敷の呼び鈴が鳴った。

魔王がふよよと扉を開けに行く。

「カイサル様!突然の訪問をお許しください!オフィリア様はこちらにいらっしゃいますか!?」

「オフィリア?いや今日は来てないぞ。店に居ないのか?」

「はい……ベル様に店番を任せて、どこかにお出かけしていると聞きまして、てっきりこちらかと……」

扉の方へひょこっと顔を出す。

魔王と親しげに話している男性……人間か?

気配は人間なのに、オレの勘が人でないと告げている。

まあ、魔王と似たようなツノが生えているからというのもあるが。

先程まで美味しそうにケーキを頬張っていたサラ嬢も、気になるようで、こちらにやってきた。

「カイさん、そちらの方はお客様?お客様ならお茶の用意をしなきゃなのだわ!」

「いえ、連絡もなしに訪ねて来た者ですので、お構いなく……」

「サラがお茶に誘っている。ヒメーレよ、飲んでいけ、その間に探知魔法でオフィリアを探してやろう。」

「そこまでしていただく訳には……」

「吾の入れた茶が飲めぬと言うのか? 」

威圧的な上司みたいな言い方になっている魔王。

元々傲慢な言い方をしているが、なんだかいつもよりも上から目線に磨きがかかっている気がする。

「……いただいていきます。恐れ入ります。」

あんな風に言われたら、折れてしまうよな。

わかるぞ。


「“サラもおもてなししたいのだわ!”」と言って、魔王と一緒に、サラ嬢もキッチンへ行ってしまったので、初対面の二人っきりというのは、だいぶ気まずい。

「別のお客様の応対もしていたというのに、申し訳ない……カイサル様のお客様も、ご迷惑おかけしてすみません。」

「あ、いえ、こちらこそ……」

なんなんだ、この人……?やたら腰が低い……

魔王関係の人物は、だいたい威圧的な者たちばかりだったから、調子が狂う……

「そういえば、自己紹介がまだでした!ヒメーレ・ホイルズーセと申します。“魔皇国、第四区域の魔王”をしております。」

「あ、ご丁寧にありがとうございます。

オレは王国特殊部隊所属で、今代の勇者でもあります……」


ん?いま“魔王”って言ったか?この人??


「今代の勇者様!カイサル様は、勇者の友人もいらっしゃるんですね!顔が広い、流石だ!」

「いや、友人では……」

友人ではない、友人ではないが……

お茶を飲み、土産を持たされて帰宅するという、今のこの関係を適切な言葉にできない。

それより、気になることが二つある。

「大変不躾ですまないのだが、貴殿は人間か……?その……なんというか、気配が……違ったら申し訳ない。」

「さすが勇者様、ご推察の通り、自分は人間ではなくドラゴンと吸血鬼、そして人間のキメラです。

ベースが人間なので、混乱されたでしょう?」

キメラ……

キメラって動物や魔物を人為的に配合した幻想種の一種だよな!?

倫理に反すると、王国では禁忌の一つだったはず……

「何故、キメラに……?」

「ああ、いや、友人のドラゴンと吸血鬼の三人で歩いていたところを

一般通過イカレ科学者に、魔改造されましてね。」

「“お恥ずかしい話です、アッハッハ”」と軽く笑っているヒメーレ殿。

一般通過イカレ科学者ってなんだ!?それはもう一般ではないだろ!

しかも内容が全然軽くない。重い、重すぎる。

それこそ、ドラゴンの体重よりも重いだろう。


いかん、頭が痛くなってきた……


さっさともう一つの気になることを聞こう。

「あの、先程“魔王”と言ってましたが、魔王……あいつも魔王なのでは……?」

「何度も言っておるだろうが、吾は魔王を退き、今はサラのメイドだ。」

サラ嬢と共に、魔王が戻ってきた。

「はい、カイサル様が引退した後、魔王に就任しました。いわゆる“後任”というやつですね。」


就任制度……

魔王が辞表を出したんだろうか……?


「おじ様が、魔王様なの?」

首を傾げるサラ嬢。

「こら、サラよ、相手の年齢や立場が分からぬ時は、“お兄さん”もしくは“お姉さん”と言うように教えたであろう?」

「そうだったのだわ!ごめんなさい、お兄さん……」

魔王に怒られて、しょんぼりとしながらヒメーレ殿に謝るサラ嬢と、「“いいですよ、いいですよ、お嬢さんから見たらオジさんですから”」と大人の対応をするヒメーレ殿。

……魔王に、ヒメーレ殿の爪の垢を煎じて飲ませてやりたいな。

「勇者も飲んだ方がいいのではないか?その騒がしいのが少しは、マシになるやもしれぬ。」

フッと鼻で笑いながら、オレの前に新しいお茶を出す魔王。

「なんだと!?」

「やはり騒がしいではないか。」

睨み合うオレと魔王を、「“仲良しさんなのだわ!”」「“そうですねー”」と緊張感なく見守るサラ嬢とヒメーレ殿。

なんだか、やる気が削がれてしまった。

「コホン、脱線したが、ヒメーレ殿は魔王ということで間違いないか?」

「はい、そうですね。」

「ならば、貴殿も討伐対象だ!覚悟してもらおう!」

ヒメーレ殿にビシッと指を指す。

「はい、では“決闘の申し込み”ということでよろしいですか?」

ヒメーレ殿が慣れた手付きで、懐から手帳を取り出す。

「あ、ああ。そういう事になる……のか?」

「そうですね……今月と……来月の頭までは予定が詰まっておりまして……中頃以降でしたら、承れます。」

「それじゃあ、近くなったらまた、連絡するという形で……」

「はい、かしこまりました。」

ヒメーレ殿が手帳にさらさらと書き込む。

こんな事務的に“決闘依頼”をしてのは初めてだ。


「ヒメーレよ、オフィリアが探知魔法にかかった。

どうやら店に戻っているみたいだぞ?」

「えっ!本当ですか!?」

ヒメーレ殿はお茶をくびーっと一気飲みしてから「“ごちそうさまです”」と言ってカップを置く。

「カイサル様!ありがとうございました!お嬢さんもおもてなしをありがとう。勇者様!また後日、連絡をお待ちしております!」

そう言って、屋敷からばたばたと走り去っていった。

オレはその背中をポカンと見つめることしか出来なかった。

……美味しそうに、お菓子を頬張るサラ嬢はいいとして、お前は座ってくつろぐなよ、魔王。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ