勇者、暴食の魔女とヤる。
いつものように、魔王を打ち倒すため、サラ嬢の屋敷を訪ねたら
先日、出会ったジュリエット嬢とオフィリア嬢がお茶をしていた。
「いらっしゃいなのだわ、勇者様!」
「あら?勇者くん、また会ったね!あいも変わらず弱っちぃ魔力量だねぇ!」
「ジュリエット……開口一番、失礼すぎ……ごめんね、勇者くん。ジュリエットは建前ってものを知らないんだ。」
……人はそれを、“本音”というんじゃないか?
「オフィリアよ、それは本音というのではないのか?」
魔王が、スっとオレの前にお茶を置く。
「魔王め!オレの思考を読んだな!?」
「……なにを言っとるんだ、貴様は。」
くそっ、そんなわかりやすい“馬鹿だな、お前”みたいな顔をしやがって……!!
そのとき突然、オフィリア嬢が“そうだ!”と声をあげる。
「カイちゃん!ここまで弱っちぃのって、お目にかかれないから、勇者くんを“味見”していい?」
ジュリエット嬢がオレを見て、舌なめずりをする。
“味見”ってなんだ?!というか、なんで魔王に聞くんだ!本人であるオレに拒否権はないのか!?
「ああ、いいかもしれぬな。勇者よ、ジュリエットにたっぷりと“手解き”をしてもらえ。」
て、手解き?!なんの手解きだ?!
「じゃあ勇者くん、ジュリとイこうか♡」
イク!?ど、どこに!?なんなんだ!??
連れてこられたのは、屋敷の裏手の広い敷地。
「よし!改めて、自己紹介。ジュリは『大罪の魔女、暴食を司るジュリエット』」
「さあ、ジュリとイイコトしよっか♡」
言ってる言葉は軽いが、肌にピリつく威圧感がオレが想像していた“イイコト”とは違うと教えてくれる。
「そんなことを考えていたのか、破廉恥な奴め。」
「なっ!違っ!オレは……!!」
やはりオレの思考を読んでやがるな、魔王め!
「よそ見厳禁だぞ♡」
オレの頬に“なにか”が掠めた。
掠めたなにかが落ちたであろう場所を見る。
地面がゴポゴポと音を立てて黒く溶けていた。攻撃が見えなかった……!
「ジュリエットー、こういう場合って、勇者くんから攻撃させるんじゃないのー?」
「確かに!オレルちゃんてば天才?!勇者くん、早くキて♡」
オレは息を深く吸い込み、整え、構えをとる。
――ここだっ!
突き出した木刀は、思い描いていたジュリエット嬢の左肩には刺さらず、空を貫いていた。
ぐるりと右回りをしたジュリエット嬢に「“遅ーい!”」と怒られる。
「そんなんで、ジュリのことヤレると思ってるの?心外だよ?」
小手調べだとしても、手は抜いてないつもりだ。
こちらも心外だぞ、ジュリエット嬢。
「あ、閃いた!カイちゃんー!オレルちゃんー!勇者くんに上位バフかけて、ジュリに最高位デバフかけてー!」
「……オレを、舐めているのか、ジュリエット嬢。」
貸された木刀の柄を握る力が強くなる。ミシリと音を立てる。
「だってさー、このぐらいハンデないと、お腹いっぱいにならないからさ。」
空腹なら、動かない方がいいんじゃないのか?
魔王とオフィリア嬢が、やれやれといった様子で、魔法詠唱に入る。
オレの身体が淡く光り、今まで感じたことのない高揚感に包まれる。
身体軽い!
「こんなもんかな?じゃあ勇者くん、続きシよっか!」
そう言われて、木刀を構える。
一閃
「わぁお!やっぱりこのぐらいで、丁度いいね!」
“ジュリちゃんおば様も、勇者様もがんばってー!”というサラ嬢の声が遠く聞こえる。
いや、声援が軽いな!?
先程までとは明らかに速さが違うのに、それでもジュリエット嬢の肩に掠めた程度だった。
しかも明らかに、本気ではない様子。
どうなってるんだ!魔王に匹敵する……いや、それ以上だとでも言うのか?!
しかし、バフのおかげで攻撃が徐々に当たるようになってきた。
これなら―――!
「あはは!もっとシたくなっちゃった!そろそろジュリも攻撃しちゃおっかな!」
『仔犬のワルツ』
呪文らしき言葉を唱えると、ジュリエット嬢の周りに大小様々な紫の球体が、無数に浮かび上がる。
なんだ、あれは……?
無数の球から銃弾のように、攻撃が放たれる。
おいおいおい!聞いてないぞ!!
「ほらほら、早く逃げないと“溶けちゃうぞ”♡」
先程は、ほぼ見えなかった攻撃だが、今ならわかる。
“毒”だ。
液状の毒が、弾丸のように発射されているんだ!
「サラよ、ここで人間の魔法、魔族の魔法、そして“魔女の魔法”の違いを教えよう。」
「はーい、カイさんよろしくお願いしますなのだわ!」
オレに、もっと余裕がある時にやってくれないか?!
魔族の魔法構造がわかるチャンスが……!!
想定より長くなったので、一旦切ります。




