元魔王、勇者と共闘する。
「勇者様、今日も来て下さらないのかしら?
忙しい?ご病気?それとも ……サラ、勇者様に嫌われちゃうようなこと言っちゃったのかしら?」
ここ最近、勇者が来ない日が続いていた。
サラが黄色と青の瞳に涙を溜める。
「泣くなサラよ、吾が知る限り、サラの言動に問題がないように見えた。奴も勇者だ、忙しいのであろう。そら、アフタヌーンティーの時間だ。」
「……うん。」
サラを悲しませるとは、勇者にお灸を据えなければ。
「……仕方あるまい。どれ、吾が勇者様の様子を見て、連れてこよう。」
「ほんとう?!」
「あぁ、吾は、サラに嘘はつかぬ。」
「ありがとう!カイさん!!」
その頃、勇者は地方貴族の逆恨みを買い、ゴロツキ達に貧民街にある、使われていない民家の部屋の奥、椅子に括り付けられ身動きが取れずにいた。
「ここで騒げば、地方貴族がまた何かとつけてイチャモンをつけてくるだろう……どうにか穏便に……」
なにやら外が、騒がしい。だんだん音が近づいてくる。
「貴様の魔力が微弱すぎて、感知魔法に反応がなく、骨が折れたぞ。……して、貴様、こんなところで何をしておる。」
「魔王?!お前こそ、なぜここに?!!?」
「……吾の疑問に答えぬとは……“疑問には疑問で答えよ”と教師や親に、教えられたのか、貴様は?」
「なっ…!……チッ!ある貴族から、逆恨みをされた……これは、オレの問題だ!お前には関係ない!!」
「逆恨み?……フハハハ!勇者ともあろう者が、市民から逆恨みを受けるとは!……人はいつまでも、愚かなのだな。」
後半の方は聞き取りづらかった。
「今、なんと言っ――」
魔王が指をパチンと鳴らすと、オレを縛っていた縄が解ける。
「まぁ良い、サラが“お前が来ぬ”と、泣いておる、早く準備をしろ。」
「待て!外の奴らは……」
「ああ、少し眠っている。……ふむ、どうやら追加が来たような。」
「“おい、なにがあった!?”」「“勇者か!?奴は今動けないはずだ!”」
ぞろぞろとゴロツキ達が集まってくる。
そして、勢いよく扉が開いた。
「何をしやがった!勇者ァ!!」
「くそっ面倒だな……しかし、やるしか……」
魔王はフッと笑う。
「勇者よ、忘れてはおらぬか?我は“メイド”だ。そして特技は、『掃除』だ。」
「ハァ?」
「なんだお前!?」「どこから入ってきやがった!」「仕方ねぇ、勇者諸共やっちまえ!!」
ゴロツキ達が、オレと魔王に襲いかかる。
オレが一人二人と相手にしてると、魔王がスカートを翻す。
そこに現れたのは、“ホウキ”だった。
ホウキを手に取り、バサリと『掃く』動作をすると、風が起こり、あらかたのゴロツキ達が悲鳴を上げながら、巻き上げられ、そして落とされた。
「“グァッ!”」「“ガハッ!?”」「“グェッ!”」
まさに死屍累々。
「おい!!魔王!!」
「なに、死んではおらぬ。まぁ無傷ではなかろうがな。」
楽しそうに笑う魔王。
少しだけ、今は敵対していなくて良かったと思ってしまった。
ゴロツキ達を片付け、魔王の移動魔法でサラ嬢の元へ向かうオレと魔王。
「カイさん、ありがとう!!勇者様!いらっしゃい!!一緒にお茶をしましょう!!」
本当に、オレとお茶をしたかっただけらしい。
先程までの緊張感との落差で、少し力が抜けてしまった。
「……あぁ、頂こうか。」
そして、サラ嬢には敵わないなと、思うオレであった。
魔王からお茶を出されるタイミングで、「次、サラを泣かせるようなことがあれば、貴様を『掃除』してやろう。」と聞こえた気がして、思わず身震いをしてしまった。




