勇者、元魔王を問い詰める。
「勇者様!いらっしゃい!今日のお茶も、私の好きなフレーバーなの!楽しんでいってね!」
魔王が優雅にお茶を振る舞う。
「ああ、いただこう。……いや違う!!俺は魔王を討伐しに来た!!」
危ない……サラ嬢にほだされるところだった。
しかも最近は、強制的にではなく、自ら進んで椅子に座ってしまっているので、非常にマズイ。
「吾は、魔王を退いている。今はサラのメイドだ。」
「……いつも疑問に思っていたのだが、なぜ魔王はメイド服なのだ?」
前々から思っていた疑問をぶつけてみる。
「??メイド服おかしいかしら?カイさん、とっても似合っていて、可愛いのだわ!」
サラ嬢が“カイさん、かわいいのだわ!”を連呼している。
男にかわいいって、それでいいのだろうか?
「サラも気に入っている。問題ない。」
いいのか!?お前はそれで!?
「いや、貴様は男だろう?本来、執事服などではないのか?」
「こちらの機能性に優れている。」
そう言って、魔王がスカートの裾を持ち上げると、“ほうき”が出てきた。
どうやって入っていた!?明らかに、出てきたほうきの大きさとスカート丈が比例してないだろ!
「恥じらいというものはないのか?!」
そうだ!男がスカートだなんて……
「ただの屋敷の制服だ、何をそんなに、目くじらを立てている?」
魔王がまた、ひらりとスカートを持ち上げる。
今度は、少し大きめのフライパンが出てきた。
……フライパンなら入らなくはないか……?いや、騙されるなオレ!!フライパンは、持ち歩かなくていいだろ!
「そうではなくて!!」
「なんだ、“吾の趣味だ”と言えば満足か?勇者様?」
魔王は、嫌味な笑みを浮かべながらスカートの裾を少し広げる。
すると、ストンとキュウリが落ちてきた。
「なんだ!?……キュウリ?!なんでだ!?」
「今朝、収穫したものだ。アフタヌーンティー用のサンドウィッチに使おうと思っていた。」
なんで一本だけなんだよ!サンドウィッチに使えよ!余ったんなら、食料庫かどこかに、保存しとけよ!
「そういう意味じゃなくて!……クソッ!付き合ってられるか!失礼する!!」
はぐらかそうとしてるのか、本当に深い意味がないのかはわからないが、馬鹿にされてる事だけはわかった。
このままでは魔王のペースに飲まれるだけだと判断して、苛立ちの勢いのまま帰宅することにした。
次から次へと、規格外のものがスカートから出てくることが、気になっているオレがいる……
クソッ!魔王め、覚えてろよ!
「あら?勇者様、もうおかえり?お土産のお菓子持って行ってなのだわ!」
〜その夜〜
「カイさんは、メイド服、いや?」
眠たそうに目をこすっているサラ。
「吾も、この装いは気に入ってる。勇者の言葉は気にかけるでない。では、サラ、良い夢を。」
「はぁい、おやすみなさい……スゥ」
その頃、勇者
「あれは……趣味なのか?……やはり機能性?」
……クソッ気になって、寝られん!!