勇者、嘘がバレかける。
国王に呼ばれ、登城したオレ。
あの美人…いやっ、メイドが魔王だと判明したあと、急いで国王に報告し、会議の結果、
国民を混乱させない為に、限られた者しか“魔王が復活した”事を知る者はいない。
人払いを済ませた玉座の間で、王の前に跪く。
「勇者よ…先日、魔王が再度出現したと報告を受け、そなたに討伐を依頼した。依頼は完了したのか?」
ギクリと肩が揺れる。
「もっ、申し訳ございません!敵はあの“魔王”!現在、手を焼いている状態です……しかし、ご安心していただきたい。着々と魔王は弱り、討伐まであと1歩のところでございます、陛下!」
少し前のめりになっていた国王が、ゆっくりと息を吐き、椅子に深く座り直す。
「…そうか、それならいいのだ……話は変わるが、そなたが帰ってくる度に、“あまい香りがする”と報告を受けておる。なにゆえだ?」
甘い香り……?ハッ!毎回“勇者様、ぜひお土産を持っていって!”と、サラ嬢に持たされているお菓子の数々か!!
……実は討伐など殆ど進んでおらず、強制的にお茶会に参加させられている、なんて事がバレるのは、勇者として許されない!
どうにか誤魔化さなければ…
「…こちらに戻ってくる途中に、いま話題の“幻の菓子屋”を、運がいい事に、毎回見つけまして…それで思わず……自分は、あの菓子屋のファンでして…!!」
自分の、クッキーの無人販売店を言い訳に使う。
……これは、これで虚しい気がする……
「なるほどそうか……いや、まさか勇者が我らを欺き、魔王とお茶会などしておるなど、杞憂であったか。」
ギクッ!!
「まさか!そんなこと!あははは!!」
冷や汗が止まらない。
どうか、どうかバレないでくれ――ー
その頃、辺境の地にて。
カイサルの入れたお茶を飲みながら、サラがつぶやく。
「勇者様、明日もいらっしゃるかしら?」
サラのつぶやきに、クスリと笑いながら、カイサルが返事をする。
「サラは、本当に勇者がお気に入りだな。」
「うん!だって楽しいもの!!」
まるで、新しいおもちゃを手にしたような笑顔で“明日も来てくれるといいのだわ!”と話すサラを、
カイサルは、愛おしそうに見つめていた。