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小噺集  作者: 左鶏守
1/1

標的に銃口を(リメイク)

この作品は2011年に自身のブログで投稿した同名の小噺のリメイク作品です。

と言っても、当時とさほど腕前は変わりませんのでほぼ同じ作品と言っても差し支えありません。

「ちくしょう。俺はこの程度のプレッシャーに敗けるのか……」

ぶれる銃口を必死に抑えながら、男は自分の不甲斐なさを嘆いていた。

「落ち着け……落ち着け……、まだチャンスは残されている」

標的を見据え、自分に言い聞かせる。

そうは言っても弾は、既に残り二発しか残っていない。

自身を慰めるために放った言葉は果たして、自身を追い詰める呪詛として自分に返ってくる。

夏の日差しがじりじりと容赦なく照り付ける。一滴の汗が男の頬を伝う。

一瞬、銃口と標的が重なった。その瞬間を狙って引き金を引いた。

「な……、何!外しただと!!」

銃口がぶれていては、たとえ一瞬標的と重なってもすぐ外れる。

冷静な時なら、判断できたはずである。

「これで最後か……」

最後の弾を感慨深く込め、眉間にしわを寄せ再び標的を睨みつける。

「この野郎、笑うんじゃねぇ」

標的の少年は、銃口を向けられてなお、無邪気な笑みを浮かべていた。

締め上げれば熊をも落とせると称されたその前腕は、駆ければ山を一息で越えられると称されたその脚は、無駄なものを落とした荒縄の如きその筋肉は果たして、緊張と焦燥で生まれたての小鹿のごとくフルフルと情けなく震えていた。銃口は激しくぶれ、標的はぼやける。

「こんなもの、たかがゲームではないか!」

この一発で仕留めれば俺の勝ち、仕留められなければ俺の敗け。そんな単純なゲームなんだ。そう自分に言い聞かせるが、きつく食いしばった歯からはギリギリと音が鳴り、男の目にはジワリと涙が滲む。それでも撃たねばと、左手にグッと力を込めたその時、

ビュォーッ!

一陣の風が吹き抜けていく。滝のように流れる汗に生暖かい風がへばりつく。男はそれを拭うでもなく、涙で滲む標的を睨みつけていた。

しかし、その風が連れて来たのは生暖かい空気だけではなかった。その風は、砂埃を連れて来た。男は、思わず目をつむる。しかしそこで男は判断を誤る。砂埃の中で呼吸を入れてしまった。砂粒が容赦なく、男の鼻腔をくすぐる。それでも最初は耐えていた。しかし、鼻腔の異物を追い出そうとする生理現象には抗えず、たまらず大きなくしゃみをしてしまう。

「ちくしょう、俺の邪魔をするんじゃねぇ」

男はようやく汗と涙を拭い、集中力を奪った砂埃を呪い再び銃を手に取る。

が、銃を手に取った時に分かった。

「銃が軽い。銃口がぶれない。」

砂埃が奪ったのは集中力ではなく余計な緊張だった。先ほどまでよく見えなかった標的がくっきりと見える。

「俺の勝ちだ!」

男は引き金を引いた。


カコン


男の戦いは終わった。


準備金:100円

ミッション:(コルク)弾五発以内にターゲットを捕獲せよ

MISSON COMPLITE


成功報酬:グリコ「ビスコ」

元ネタ→ https://ameblo.jp/sagenokami/entry-12479090957.html?frm=theme

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