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霊感令嬢はゴーストの導きで真相を究明する  作者: 弍口 いく
第2章 ヴィオレット

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その19

 クリスが言った通り、翌日は朝から大騒ぎだった。

 その一番は侍女の遺体が河辺にあがった事、シュザンヌ様になりすましていた離宮の古参侍女リーリエだ。


 知らせはクリスにも届いたので、すぐに向かい、確認したそうだ。

 なぜ私が詳しく知っているかって? それは昨夜からずっと王宮殿にいるからだ。用意された部屋は、例の王太子妃が入る予定の続き部屋だった。


 心配だから一人にしたくないと言うクリスに強制されて、その部屋に入れられた。イーストウッド別邸にはリジェ兄様もいるし、領地からついてきてくれている侍女もいるから一人ではないんだけどな。王宮は慣れなくて落ち着かない。


 でも王宮侍女たちの至れる尽くせりのお世話は最高だった。マッサージも上手で過激な一日の疲れもすっかりほぐれた。興奮冷めやらずに眠れないのではと心配したが、お陰で思ったよりぐっすりと眠れた。もちろん共同の寝室は使っていない。王太子妃の部屋にもシングルのベッドがあり、私はそこであっという間に寝入っていた。


 朝食は一人だった。

 先ほどの報告でクリスはもう出かけていた。リジェ兄様も来ていたらしいが、私はあえて起こされなかったらしい。


 クリスの指示で私は部屋から出ることを許されずに、ヤキモキしながらただ帰りを待つことしかできなかった。


 アンジェリカ様の本音を聞いてショックを受けたゴーストのヴィオレットが気がかりだった。結局、ヴィオレットが周囲の人々にどんなふうに思われていたかはわかっても、彼女がなぜあのような状態になっているのかはわからないまま、知らなくていい情報だけが入ってくる。





 クリスが戻ったのは夕方になってからだった。


 シュザンヌ離宮の花壇から、シュザンヌ様と思われるご遺骨が発見された。

 同行していたユリウス様がその場で丁重に祈りを捧げてくださったそうだ。異変が起こらなかったところを見ると、シュザンヌ様の魂はちゃんと天に召されたのだろう。


 離宮に仕える使用人たちは全員、一人一人取り調べを受けている。そしてドパルデュー公爵も呼び出されたらしい。


「シュザンヌ様が偽物だとは知らなかったとドパルデュー公爵は主張している、自分も騙されていたのだと……。本物のシュザンヌ様にお会いしたのは幼い頃、物心ついた時にはもう離宮に引きこもっていたので、長い間会っていなかった、まさか既に亡くなっていて侍女が成り代わっているなんて思いもよらなかった、自分も被害者だと」


 相手は公爵、証拠もなしにこれ以上の追及は出来ないと返されたそうだ。


「公安警察が離宮へ踏み込む前に、シュザンヌ様の部屋と侍女の部屋は荒らされていた、離宮への経費が着服されていた証拠は隠滅されたのだろう。後手に回ってしまったのは僕のミスだ」


「こんな急展開になるなんて、予想できなかったわ」

「いいや、僕がそうさせてしまったんだ、シュザンヌ様が偽物だと知っていることをほのめかして……騙されているふりをするべきだった、いや、あそこで会うべきではなかったんだ、そのせいで君を危険な目に遭わせてしまった」


「昨日じゃなくても、私は狙われたわよ、ドパルデュー公爵に邪魔者と思われているんだから」


「馬車の襲撃事件も、あの馬車はドパルデュー公爵家のモノ、真実が暴かれる前に侍女が自分を狙ったのではないかと苦しい主張をしている」

「いやいや、その時はまだ夜会の最中だったし、公爵が乗っているはずないでしょ」


「ほんと辻褄の合わないことを堂々と言う面の厚さには感心するよ、でも野放しには出来ない、君はまた狙われる危険もあるし」

「証拠が出れば、いくら公爵でも罪に問えるのよね」

「もちろんだ」


「侍女の遺体はどこに安置されているのかしら」

「そうか、まだ天に昇っていなければ話が聞けるかもしれないってことか、ブランドンの時みたいに」

「そう都合よくいくかはわからないけど」


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― 新着の感想 ―
頼もしかった人物の死という出来事もありましたが、物語が佳境に入って来てワクワクしております。
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