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その13

 ディアと私は、ジョセフィーヌ様の回復をお祈りしていますと言ってニールセン邸を後にした。


 帰りの馬車で、ディアは、

「なんだかジョセフィーヌ様のお見舞いと言うより、お母様の愚痴を聞きに行ったみたいね」

 吐息を漏らした。


「言いたくて仕方なかったのよ、看病でストレスもたまっていらっしゃるだろうし、息抜きをさせてあげられてよかったんじゃない」


「噂には聞いていたけど、ヴィオレット様の無神経さは筋金入りだったのね」

「そんなふうに言われてたの? 彼女」

「私は見た目が少々被っていたから避けていたんだけどね、共通の友人は何人か」

 見た目がって、双方同じことを意識していたのね。


「なんというか妙に自信があって勘違いが甚だしい?らしいわ、ただ悪気はないから憎めないタイプなんですって」

 わかるーっ、そうなのよね。


「お母様が言ってらしたように、ジョセフィーヌ様が振り回されていたのは確かよ、周囲の人も気付いていたもの」

 知らなかったのは本人だけか、ヴィオレットは親友だと思っているんだもの。


「で、あなたはなにか掴めたの?」

 ディアは私の目を覗き込んだ。


「えっ?」

「惚けないで、あなたの交友関係くらい把握しているわ、一度話をしただけで親しくもないジョセフィーヌ様のお見舞い、不自然極まりないんだけど、いったいなにを探っているの」


「探っていると言われても……」

 ジョセフィーヌ様は意識不明のままで、なにも掴みようがなかったし……。

「なにを嗅ぎつけたの?」

 口ごもった私にディアは詰め寄った。

「私は犬じゃないんだけど」


「お父様が仰ってたの、ドリスメイは特別な嗅覚を持っていると。普通の人とは視点が違う、ちょっとした違和感を感じ取るというか、自分たちには見えていないモノを見る力があると仰ってたわ」


 まさか! ゴーストが見えることに気付かれているの!?

 そんなはずないわよね、でも、さすが宰相殿、鋭いわ。


「フェリシティ叔母様のご遺体を見つけてくれたでしょ、あなたがいなければ発見されなかったかも知れなかったし、感謝しているのよ」

「あれはたまたまで」

「ベルモンド公爵家の大事件、あなたも解決に一役買っていたのでしょ、で、今度はなにに引っかかっているの?」


「参ったわね……、ジョセフィーヌ様というよりヴィオレット様の不可解な行動が気になっているのは確かよ、事故以来急にでしょ。だからと言って意識不明の彼女を訪ねたところで、糸口が掴めるとは期待していなかったわ」

「でも、伯爵夫人からはいろいろ聞けたじゃない」


「ええ、違和感だらけだったけど……実はね、ヴィオレット様とも話をしたことがあるのよ」

 ゴーストのヴィオレットだけど。

「その時は王太子の婚約者になりたいとは言ってなかったし、他にお慕いしている殿方がいると言っていたのよ」


「じゃあなぜクリスを追いかけまわしているの? 他に好きな人がいて、あんな行動、おかしいじゃない」

「でしょ」


「新たに流布した黒魔術の噂も彼女の取り巻き連中が広めたと思うわ。なんだかディアンヌ様を思い出しちゃった。彼女もあなたを貶めるためにいろいろ噂を流してたわよね……。まさか! あんな大事件の火種を発見したんじゃないでしょうね」


 その可能性はあるのよね、ドパルデュー公爵家は既に亡くなっているシュザンヌ様と関係があるだろうし、なんか不穏な空気を感じる。

 嫌な予感に背筋がゾクゾクする私と対照的に、ディアは好奇心に目を輝かせているように見える。


「王太子妃になるということは権力争いも絡んでくるから、命の危険も伴うのよね、フェリシティ叔母様の件もあるから父は最初から反対していたのよ、でも私は……」

 ディアはなにか言いかけてやめた。私に気を遣ったのだと思う。


 きっとディアの初恋はクリスだったのだろう。

「今は第三者だから、高みの見物させていただくわ」


「ねえ、好きな人がいて、相手も自分を想ってくれていると信じてたのに、それが勘違いだったとしたら、あなたならどうする?」

「ヴィオレット様のこと? お慕いしている殿方ってアンドレイ様よね、でも、伯爵夫人はアンドレイ様はヴィオレット様を嫌っているとおっしゃってたし、それが事実なら」


 しまった! こんな質問はディアには酷だったかも知れない。私もたいがい無神経だわ。


「どうするも、あきらめるしかないないんじゃない? 悲しいけど私はそうしたわ、キッパリあきらめて、その人の幸せを願うわ」

 もう吹っ切れているようね。


「ディアはお人形みたいに可愛いけど、中身は男前ね」

「もーっ! そこは突っ込んでよ、キッパリじゃなかったでしょ、ずいぶん足掻いたし、あなたにも酷いこと言ったじゃない」

「そうだっけ?」

「あなたの方が男前よ」


「もしかしたらヴィオレット様もアンドレイ様の気持ちに気付いて、クリスに狙いを変えたってことかしら? どう考えてもクリスの方が難攻不落なのに」

「そこはドパルデュー公爵の意向が絡んでいるんじゃない」

「そこでシュザンヌ様が登場するのか」


 本当は亡くなってるから登場できないんだけどね。

 それにゴーストのヴィオレットはまだアンドレイ様の気持ちを知らない。

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