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霊感令嬢はゴーストの導きで真相を究明する  作者: 弍口 いく
第1章 フェリシティ

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第1章 最終話

 裁判は即決し、ベルモンド公爵には死刑が言い渡された。

 危険薬物の売買、及び、人身売買の罪も暴かれた。そして、クリストファ王太子暗殺未遂も公爵の仕業だったと判明した。フェリシティ嬢殺害については、マリアンヌが犯人だと主張したが、だからと言って量刑には変わりない。


 第二王子からクリストファの行動情報を聞き出して父親に漏らした次女のフランソワーズは、暗殺計画までは知らなかったと主張したこと、未成年であることを考慮され修道院送りとなった。

 父親の手先となり悪事に加担していた長男のオースティンは流刑に、生涯重労働を科せられることになった。


 その他、薬物売買に関係していた高位貴族が、芋づる式に摘発されて爵位と領地を失った。



   *   *   *



 私はクリスからプロポーズされた翌日、父と共に王宮殿に呼ばれた。国王陛下と王妃様、父の許可を得て、正式に婚約する運びとなった。発表は日を改めて行うことになっている。


 そして、今日はクローディア様とアルマンゾ様の婚約披露パーティー。

 私はクリスにエスコートされて会場入りした。正装したクリスは素敵すぎて眩しい、直視できないわ!


 私は知らなかったのだが、クリスが公の場で令嬢をエスコートするのは初めてだったらしく、会場は騒然とした。


「主役の私たちより目立ってもらっては困りますわ」

 クローディア様に嫌味を言われたが、

「いやいや、クローディア様の美しさには到底及びませんよ」

 これは本心だ。


 頬を赤らめるクローディア様はこの上なく可愛かった。

「すっかり甘やかされてますからね、優しいのよ彼」

 アルマンゾ様もデレデレで本当に幸せそうなカップル、政略結婚が多い貴族には珍しい。


「改めて、おめでとうございます」

「ありがとう」

 クローディア様は私に顔を近付け、耳元で囁いた。

「約束通りお友達になってさしあげますわ、生き残れたようですし」

 そして悪戯っぽく笑った。


「あなたもこれからクリストファ殿下に甘やかしてもらいなさい、そうすれば少しは可愛くなれて田舎臭さも抜けるのではなくて」

 キツイ物言いは健在だった。


 婚約披露は恙なく進み、満面の笑みを浮かべるクローディア様は本当に美しく愛らしかったが、私は彼女のキツイ一面を垣間見ているので、アルマンゾ様はご存じなのだろうかとふと思ってしまった。


「アルマンゾは彼女の気が強いところも可愛いと言ってるよ」

 私の心を見透かしたようにクリスが耳元で囁いた。

 慣れない……。

 以前にも増して近すぎる距離にいちいち赤面してしまう私を、クリスは面白がっている。


 挨拶の後、クローディア様とアルマンゾ様は中央でダンスを披露した。

 それを皮切りに、招待客もそれぞれダンスをはじめる。


 クリスのリードはリジェ兄様以上だった。自分が上手になったように錯覚させるほどで、気持ちよく踊れた。

 一曲目が終わり、主役の二人は当然二曲目も続ける。

 そして私とクリスも。


 招待客たちは二曲目の意味を知っている、クリストファ王太子が生涯を誓い合う仲と認めた私に驚きと好奇の視線が集まった。


 ダンスが一段落すると、私たちはたちまち囲まれた。クリスにとってはいつものこと、これを機会に王太子とお近づきになりたい貴族たちが、偽物の笑みを浮かべながら群がる。


 しかし今日は、今まで私を見事にスルーしていた学園のクラスメートたちが我先にと話しかけてきた。


「実はね、ディアンヌ様の目が怖くてあなたに話しかけられなかったのよ、もちろんハッキリ言われたわけありませんわ、でも目力強いでしょ、なんとなくわかってしまって」


「亡くなられたのは気の毒だと思いますわよ、でも、圧がなくなったと言うか、風通しが良くなって楽な気分ですわ」


「以前、イーストウッド領を通ったことがありますのよ、自然が豊かで美しいところですね、領都で食べたアップルパイも美味しかったし、もう一度行きたいと思ってますのよ」


 田舎者扱いしていた私に丁寧な話し方だし、変わり身の早さに驚いちゃうわ。

 囲まれて困惑している私を見かねたクローディア様が、

「今日の主役は私だということ、お忘れかしら」

 彼女たちを牽制してくれた。


 私はその隙に、こっそりその場から逃れた。


 バルコニーに出ると、クリスも抜け出して追って来てくれた。

「現金な連中だね、僕たちの関係を察した途端、態度を変えるなんて、信用ならない人たちだ」


「ほんとね、驚いちゃった。でも大丈夫、信用出来るか出来ないかはちゃんと見極められるわ、私にはゴーストの導きもあるしね」

「この会場にもいるのかい?」


「目を合わせなければ問題ないし、それでもゴーストの陰口は聞こえるのよ」

「危ないことはしないでくれよ、僕の大事な婚約者さん」


 ゴーストが見える私を母は邸から出さないようにして護ってくれていた。〝他の人に言ってはダメよ、人は目に見えるモノしか信じないし、理解もしてくれない、頭がおかしいと思われちゃうから〟そう心配してくれた。だからずっと一人で抱えていかなければならないと覚悟していた。


 でも、クリストファはそんな私を理解して受け入れてくれた。

 そして愛してくれている。

 〝心から愛する人に出逢えるのは奇跡よ〟とフェリシティは言った。

 その奇跡を逃さなかったわよ、ちゃんと見ていてくれてる?


 街の灯が邪魔をしていて、イーストウッド領の平原のように降ってくるような星の煌めきはないけれど、丸い月が美しく浮かんでいた。


 夜空を仰いだ私をクリスは優しく抱き寄せた。

「流れ星でも見えた?」

 私はその胸に寄り掛かった。


「いいえ、月がとても綺麗だなと思って」


   おしまい


最後まで読んできただき、ほんとうにありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
 甘々なのにミステリー、しかもゴースト付き、という、一粒で三度美味しく、とても面白い作品でした。後半まで王妃を疑っておりましたが、今は、後頭部を殴られて気絶していた「彼女」にとどめを刺したのはベルモン…
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