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TSURITO-繋げる未来  作者: カバの牢獄
第二章 未来は僕の手の中に
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第二章 16 蟲毒9

「ホームズ」

 カラワラは瞑想中のホームズに話し掛けた。

 まだ、二歳の子供の恐ろしいほどの成長速度に舌を巻きながらも素直に尊敬していた。

 今回、ホームズのシックスセンスを上手く利用しようと考えていた。

「ちょっと、付いて来てくれ」

 カラワラの言葉にホームズは精一杯の嫌そうな顔をした。

「面倒だな。来い」

 カラワラはネキも連れて瞬間移動をした。ウミはその様子を心配そうに眺め、ワトソンは不満をいっぱいにして唇を尖らせていた。

「ん、で、何?」

 地べたに座ったまま、不貞腐れた顔で睨まれてカラワラは無視して笑いながら言った。

「力を借りたい」

 ホームズはネキに持ち上げられて抱っこされながら、辺りを見渡した。色んな作物が細かくランダムに植えられていていくつかのブロックがすっぽりと無くなっていた。

「まだ、イメージが固まってないんだけど」

「お前には戦闘はさせないよ」

「別に、イメージが固まってないだけで、オーラの、魂の熟知はほぼ完璧なんだけど」

「と、言っても、わっちが参加させないでありんすよ」

「ふーん。で、いつ?」

「五分後だ。それと、人間の移動はできないみたいだ。あと、一瞬。できるか?」

「余裕」

「俺だけタイミングを合わせて移動させてくれ」

「うーん、やだ。そのためのネキでしょ?」

「チッ」

 カラワラは二歳のホームズに見透かされていて思わず舌打ちをした。ネキはホームズの頭を撫でながら笑った。

「三ヵ月ほど粘って諦めた癖に、その態度は何でありんすか?」

「得手不得手だ。ネキだって異空間に逃げられたら追跡できんだろ」

「はあ。まあ、仕方ないでありんすね。ホームズ。できそうでありんすか?」

「さあ?まあでも、余裕でしょ」

 ホームズは不敵に笑った。




 時間が来た。

「「ホームズ」」

 ホームズはシックスセンスを使って畑の辺りだけ時が進むのを遅くしていた。

 それは、この一瞬のためだった。

 突如として、作物の一塊にオーラが纏われて消えようとしていた。

 そこに、ホームズとカラワラ、ネキは瞬間移動をして、オーラに纏われた。

 そして、多重結界の中への侵入が成功した。




 話は少し遡る。




「まさか、十日もしない内に戻って来るとはね、ゼウス」

「フン。これぐらい、造作もないさ」

「だが、ゼウス。その体はどうした?」

 サキューバスたちはゼウスの帰還に喜んだ。だが、ゼウスの筋肉量が二倍ほどになり、尚且つ、質が凄く上がって、体が一回り以上大きくなっていたのだ。

 サキューバスと同様に仲間たちも驚いていたが、コキュートスが一際、驚いていた。

「僕の発明品のおかげじゃないだろう?」

「ああ。少しズルをした。話は少し遡る」

「ややこしいよ!」

 サキューバスは思わずツッコんだ。




「イキシチ。俺の質問に答えろ。俺が急速に成長するにはワラシの力が必要だな」

「うん」

「ワラシはそのために俺にシックスセンスを一時的に与えることが可能だな」

「うん」

「そのシックスセンスは過剰吸収だな」

「うん」

 イキシチたちはゼウスの聡明さに口を開けて茫然としていた。イキシチのシックスセンスを最大限に生かしていないのにも関わらず、正しい道に進んでいるからだ。

「僕のシックスセンスは、はい、いいえ、で答える質問じゃない方が、正確だし、速いのはゼウスも分かってるだろう?なのに・・・」

「フン。己をちゃんと知っていたら、自ずと分かって来るものだ」

 イキシチたちは唖然とした。何かシックスセンスがあるんじゃなかろうか?

 全員がそう、疑いたかった。だが、本能が信じていた。

 それほどまでに、ゼウスは落ち着き払っていて、平然と、当たり前のことだと言わんばかりに堂々としていたのだ。

「俺に任せて置け。すぐに、仲間たちの元に合流させてやる」

 ゼウスに会ってから驚かされてばかりだった。




「と、言う訳でこうなった」

「って、割には引き連れている仲間たちが多いんだけど!」

 サキューバスの視線の先にはゼウスが引き連れている仲間たちが大勢いた。

「ここまで、どれほどの距離があったと思う。そりゃ、仲間が増えるのは当然だ」

「まあ、それは、そうだけど、誰がこれほどまでの人を守っていたんだい?」

「それは、このガキだ」

 全員が視線を下に向けた。そこにはゼウスの膝下ほどぐらいの大きさしかない、女の子がいた。

「タテが全員を守った」

 サキューバスたちは思わずざわつき、驚嘆の声を漏らした。

「確かに、この子は凄い潜在能力を秘めている」

 タテの実力はコキュートスによって確証された。より一層ざわめきが起こったがゼウスが軽く咳払いをしたことにより収まった。

「で、だ。俺たちはこのように元気だ。貴様らは、・・・まあ、元気だな」

 ゼウスが決めつけたことにコキュートスたちは若干ムッとしたが、言葉を呑み込んで代表してサキューバスが喋った。

「僕がデストロイをほとんど殲滅したからね」

「フン。そうか」

 ゼウスはサキューバスの自信ありげな笑みを見て鼻で笑って労った。

「ここからは最速でこの多重結界から抜け出すぞ」

 ゼウスの覇気の籠った気合に、叫んでいたわけではないが、確かにはっきりと聞こえた声に、全身が武者震い、あるいは、鳥肌を感じ、同時に、覇気を漲らせた。

「「「おう!!!!」」」




「サキューバス。サインは伝わったか?」

 ゼウスがたくさんの幼子を抱えながら、サキューバスに確かめたのは、サキューバスが新たに食料を得ようとフロンティアから作物を瞬間移動をさせた時だった。

「見ての通りだよ」

 瞬間移動で手に入れた作物は偏りがなく、たくさんの種類だった。

 ゼウスはそれを見て安堵した。と同時に足元に抱き着いているイキシチの頭を撫でた。

「イキシチ。貴様のおかげで道が開けそうだ」

「良かったよ。でも、人の瞬間移動ができないのが、増々ムカついて来る」

「フン。そうだな」

「モテモテだね」

「フン。だが、これで、フロンティアから近い未来助けが来る」

「だが」「でも」

「俺の力で外に出て魅せる」

「僕たちの力で外に出て魅せる」




 かくして、一ヵ月間ほど、ゼウスたちは競い合いそれぞれのやり方で外にでるために頑張った。頑張って頑張って頑張って、コキュートスは名刀を一つ完成させたが、ゼウスは個人の力では成し遂げることができなかった。

「ゼウス。僕たちの勝ちだ」

 コキュートスは顎を上げて勝ち誇ってゼウスに名刀を渡した。

「『正夢』願いを実現させる刀だ」

 コキュートスは顔に笑みを溢れさせていた。だが、そんなコキュートスを仲間たちは冷たい白い眼で見ていた。

「フン。一ヵ月間、俺に子守りをさせて置いてよく言う」

 ゼウスの周りにはこの一ヵ月間の成果と言わんばかりに子供が群がっていた。

「仕方ないだろう。タテが一番心を許していたのはゼウスだったんだから」

 タテ。この二歳ほどの少女は両親が殺されたことをトリガーにシックスセンスを爆発的に進化させていて、その実力は凄まじいものがあった。

 タテがたくさんの人を守っていたやり方はデストロイが作った人を通さない結界のようなものを、デストロイの結界を貫通させて広げた。

 だだ、それだけだ。そして、命をそれぞれ守るために一人一人にラップを巻くように防壁を巻いた。

 それまでは、意地でやっていたが、ゼウスが助けに来てくれたことで疲れて倒れたのだ。

 それからは、毎日のようにゼウスにくっついていた。一度、ゼウスから離れると泣く始末。カナデの歌を持ってしても慰めることは不可能だった。シックスセンスで壁を作りカナデから逃げるから。

 コキュートスたちはこの態度を見てゼウスにタテのことを聞いた。

「タテは何で、あんな態度を取るんだ?」

「これは、俺の推測だが、自分より強い人と一緒にいないと怖いのかもしれない」

 とのことだった。その時、外から助けが来る状況を整え終えていたこともあり、ゼウスは言った。

「俺がタテの面倒を見る。だから、俺の負けで良い」

 コキュートスは反発したかったが、仕方ないことだと受け入れた。

 との経緯があり、今に至る。

「良くぞ、間に合わせた。イキシチのおかげだろうがな」

「フン」

 コキュートスはそっぽを向いた。その様子を見てゼウスに懐いている子供たちはコキュートスを指さして笑う。だから、

コキュートスは子供たちを追いかけた。

「「「逃げろーーーー!!!」」」

 と、そんな微笑ましい様子を眺めながらサキューバスがゼウスに近づいた。

「早くしないと来るんじゃない?」

「そうだな。サツキ、頼む」

「うん、任せて」

「タテ。ちょっと待っていてくれないか」

「うん」

 タテは二歳にして聡明だ。ゼウスたちがしていることも、やろうとしていることも、全て理解していた。




 ゼウスが『正夢』を持って久しぶりに姿を見せた時、デストロイは思わずため息を吐いた。

「ようやく。だが、・・・これは止めねばならぬな」

 デストロイは独りで空間を歪ませてゼウスの目の前に現れた。

「まさか、ここまで、早く、結界を解く力を付けるとは思ってはいなかったぞ」

「フン。わざわざ、死にに来たか。だが、丁度良い」

 デストロイはオーラを纏った。ゼウスもそれに合わせてオーラを纏った。

 デストロイは先に動いた。否、動けた。それは、ゼロイチでシックスセンスを使うわけではなかったからだ。指を鳴らした。

 二人ともオーラが纏えなくなった。

 だけではなかった。仲間たちも姿を現せた。

「守り切れるかな?」

 手前の結界が崩れると再びオーラを纏えた。決戦が始まった。

 全員が動くのが早かったが一番早かったのはタテだった。ゼウスとデストロイ以外を防壁で壁を作り守った。

「さすがだ」

 ゼウスが勝算の言葉を漏らしたがタテは頭を乱暴に掻いて目を見開いていた。精神状態が著しく不安定となった。

 そんな様子を見たコキュートスたちはサキューバスに視線を集中させた。

「分かっている。外からの助けを呼ぶ!」

 サキューバスたちは必ず来ると確信がある。イキシチのおかげで。

 だから、カラワラとネキ、そして、ホームズが姿を現した時、声にならない歓喜の声を漏らした。

「もう大丈夫。このカラワラが来た」

 フロンティアの王の登場にデストロイが作った異空間が揺れた。そして、その姿を視界に捉えたデストロイは余裕があった表情から焦燥、そして、憤怒の形相に表情を変えた。

「カラワラ!!!!」

 ゼウスのことを一瞬、忘れてしまうほどに。

 異空間の様子を見て、把握して、ホームズは全てを理解した。だから、

「気に食わねえ」

 と怒気を露わにした。

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