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TSURITO-繋げる未来  作者: カバの牢獄
第二章 未来は僕の手の中に
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第二章 14 蟲毒7

「サツキ。どうだ?」

「うん。かなり、イメージが固まって来た」

 ゼウスの問い掛けにサツキが頷いた。僕はゼウスの適格の指導に恐れ入った。ちゃんと適性を見極めて確実にレベルアップさせていた。

「僕の単眼のような眼を持っていないのに」

 僕はゼウスの実力に凄さを舌を巻いている。でも、舌を巻いているからこそ歯痒い。

「カナデ。もう、歌わなくても大丈夫だ」

「頑張って。サツキ」

 サツキは仲間を収容するために異空間、否、亜空間のイメージを再び行った。先ほど、死角を失う感覚を体感してイメージがかなり固まって来たようだ。

 サツキの成長が早かったのにはサキューバスの指導力も大きかった。感覚的なことを的確に説明できるサキューバスの力は大きかった。

 だから、実験に協力してくれている仲間たちの姿が見えなくなった。

 歓声が上がった。

「はあ」

 嬉しいことなのに素直に喜べない。頭を無茶苦茶に掻いて苛立ちを隠せなかった。

「コキュートス。顔が怖くなっているぞ。ほれ」

 僕に話し掛けて来たハガネは手に鉱物を持っていた。その鉱物はこれから必要になって来るものだ。

「ごめん。ありがとう」

「お互い意志を曲げないのならば、俺たちの意志を貫き通せば良いことだ。だろ?」

 首を傾げながら鉱物を渡して来るハガネに僕も頬を緩めて受け取った。

「そうだね。勝負なんだから。僕たちがゼウスの想像を超えれば良いんだ」

「その意気だ」

 僕はオーラを纏って金槌を具現した。そして、その鉱物を打った。

「良くもこう、綺麗な花に変えるな、コキュートス」

「粘土で形を整えるように何度も打たなければならないわけではないからね。僕は頭で完成図が浮かんでいたら一発で発明品に変えることができる」

「それで、これは何に使うんだ?」

「オーラの循環だ。今は循環効率が全然悪くて、そこまで有用性がないけど、必ず、ゼウスより先に完成させる。この結界を破るための武器を作るのと同時進行でね」

「そうか」

 僕たちの視線の先では話が終わり、そろそろ別れの時が近づいて来ていた。別れと言ってもゼウスから僕たちは見えないだけだけど。でも、

「わざわざ、孤独になる必要はないだろう、ゼウス」

「まあ、一日一回、食事の時には会えるんだ。コキュートス」

「分からないぞ。ゼウスのことだから、独りになろうとするかもしれない」

「そんなことは、俺たちがさせないさ」

「・・・。フッ。そうだね。僕たちがさせない」

 僕たちはゼウスたちに近づいた。どうやら、サキューバスと話していたみたいだ。

「ゼウス。僕が必ず、君の想像を超えた進歩を成し遂げる」

「フン。精々頑張ってサポートに回るんだな。便利屋」

「言ってろ」

「コキュートス」

 僕たちに気付いて声を掛けて来たゼウスの表情は相変わらずふてぶてしくて自身に満ちていて覇気がある。だから、憎々しくて、

「絶対、敗北を味会わてやる」

「フン。武器が無ければ何もできぬのにか?」

「ゼウス!」

 僕は思い切り睨んだ。殴ったって勝てないから睨む。せめてもの抵抗だ。

「期待しているぞ」

「フン」

 僕は思わずそっぽを向いた。そして、サツキを見ると言った。

「もういい。サツキ。お願い」

「う・・・うん」

「待っているぞ」

「・・・フン」

 僕たちとゼウスの競争が幕開けた。




「さて、一番嫌な手を打たれたな」

 俺は今までの様子を静観してじっと見ていた。

「うーん。俺のシックスセンスでの戦いは最後の最後に取って置かなければならない。だが、つくづく厄介な手を打たれた」

 ゼウスが考えた作戦、中途半端に異空間にいる、亜空間にいる作戦はかなり厄介なのだ。姿が見えなかったり、音が聞えなかったりすると、ホントにいるかどうか分からない。しっかりと見極めないと行けないため、かなり、労力が必要になって来る。

「それに、ゼウスとのサシが必然的に誘われるこの状況は好ましいものではない。厄介だ」

「どうして、対人戦闘に拘るのです?私には結界だけで十分に思えるのですが?」

「カラワラを殺すため、ユグドラシルの実を手に入れるため、星を滅ぼすため。その他に理由はいるか?」

 この理由だけでは納得行かなかったのか、シヘンは再び食い下がろうと言葉を発しようとしたため、静止した。

「俺の結界が簡単には通用しなかったら?敵はカラワラだけではない可能性があったら?手札は多い方が良い」

「ですが、少しは晒した方が良いのでは?これ以上、新しいデータを取ることは難しいですよ」

 シヘンだけではなく、デコイまでも言って来た。俺はイライラを隠さずに言った。

「分かっている。だが、まだ、厄介だって言う状況なだけだ。手の打ちようはいくらでもある」

「どうするつもりで?」

「フン。どんな手を相手が使おうが、何をしているか、大方分かっているのだ。焦る必要は全くない」




「さて、ようやく、自主トレができるな」

 俺は十本の腕をそれぞれ色々な方向に伸ばした。

「詠唱、刻印、合掌、変速、怪腕。この五つが連携できるようにしなければ・・・だが、流石の俺とて、並大抵のことではない。徐々に、だな」

 肩の骨をバキバキポキポキと鳴らし終えると脱力した。

 サツキのシックスセンスは視覚と触覚を遮断している、が、どうなるか?

 オーラを纏い怪腕のシックスセンスを使い腕の順応を高めると結界に触れた。

「さて、どうなるか?」

 俺は大きく一歩踏み出し腰の回転を使い結界を殴った。結界は大きく揺れて壊れた。

「変速が新たな領域に入ったか。だが、それ以上に、力技が通用するみたいだな」

 俺は思わず頬が綻んだ。今の衝撃でサツキの亜空間が揺れてうっすらと姿を確認することができたからだ。うっすらと見えた表情はどれも引きつっていた。

 そして、何より、コキュートスたちが大きく目を見開いて俺を見たかと思えば歯を食いしばっていた。

「フン。この分だと早いかも知れぬな。陽の光を浴びるのは」




 一ヶ月が過ぎた。

 順調に結界をどんどん破って行く日々の中、先の見えない辛さと確実に成長をしている喜びに何とも言えない日々を過ごしていた俺たちは徐々に仲間を増やしていた。

「まさか、僕たちの邪魔をして来るとは思ってなかったよ、ゼウス」

 コキュートスは単眼を細めて愚痴を言いながらも鉱物をブレンドしていた。

「筋力アップは俺以外にも重要だ。特別邪魔をしているわけではなかろう」

 コキュートスは俺の言葉に、より一層睨んで来た。そして言い返そうと胸を張った時、サキューバスが肩を叩いて静止した。

「手が止まってるよ、コキュートス。しかし、ゼウス。ここ最近の動きはどう見る?」

 サキューバスは戦闘が得意な仲間たちと、日々、鍛錬をしながら、サツキの亜空間を手伝う日々を過ごしていて、一番忙しい日々を過ごしている。だから、筋トレをして体力を付ける案は大賛成だった。

「何か狙っていることは間違いない。データが欲しいだろうからな」

「そんなことは、分かっている。どんな方法で攻めて来そうかを聞いているんだ」

「フン。全体攻撃だ。だが、攻めあぐねているのは間違いない」

「どういうこと?」

「貴様は全体攻撃なら攻めあぐねることなどないだろう?と考えているのだろうが、この一ヶ月間を思い出して見ろ」

「そうか。ゼウスが次々に結界を破っているからか」

「そうだ。それに、俺たちはものの移動なら可能故、一発で大ダメージを与えるしか選択肢がない」

「このまま、何もしてこない可能性があるんじゃない?」

 ここまで、ずっと、黙って話を聞いていたカナデが入って来た。

「だって、デストロイはカナデたちを、ゼウスをここに収容できる力があるんだから」

「つまり、僕たちは結界術を使われたら、板の上の魚って言いたいのか?」

「その通りよ、コキュートス。どう思う、ゼウス?」

「まあ、その可能性は大いにあるだろうな。だが、待っているのかも知れない。データが体に馴染むのを。俺たちはここに収容されるにあたって一度、データを取られている故な」

「ゼウス。だとしたら、何で僕たちを襲って新しいデータを奪おうとしていたんだ?」

「分からぬか、サキューバス。はあ」

 俺は深くため息を吐いた。

「その顔を止めろ」

「フン。コキュートス、分かるか?」

「単純にサンプルは多い方が良いってのもあるだろうけど、有力な考え方が二つある。一つは僕たち生き物の体は常に変わっているってこと。もう一つは融合が苦手ってこと」

「待って。あんなにクローンを大量に作っていたのに?」

「ああ。おそらく、クローンを作ることにはかなりの適性があるけど、融合、キメラは得意じゃないんだろう。もし、得意だったら、もっと、デストロイは強くなって現れていただろうし」

「正解だ。だが、今の考え方でもっと残酷な考え方もできる。たくさんの大量のクローンを作り、失敗の経験を蓄積する。クローンの自分を千回、一万回、十万回・・・と殺してな。デストロイの戦闘技術が上がっていたことからも間違いないだろう」

「じゃあ、次、襲って来るときは向こうのレベルはかなり上がってることは間違いないのね」

「ああ。まあ、何にせよ、この一ヶ月間音沙汰なしなのは力を蓄積しているからで間違いないだろう。だから、俺たちは俺たちのできることをするまでだ。だろ、コキュートス?」

「ああ。ほれ、できたよ」

 俺はコキュートスから輪っかの鉱物を受け取ると背を向けた。

「食事になったら呼んでくれ」

 結界術を使って戦われたら負ける。

 敢えて膨らまさなかった話題を俺は頭の片隅に入れて亜空間から抜けた。

 それから、いつものように結界を破り続けているといつもとは違う色の結界が現れた。その結界は軽く触れただけで崩れた。

 そして、視界の先にいたのはデストロイだった。

 デストロイは不敵に笑うと俺を結界で閉じ込めた。当然俺は、結界を破るのだが、最悪な一手を打たれた。

「貴様は対局の位置に行ってもらう」

 デストロイと俺だけに敷かれた結界で俺は瞬間移動をさせられた。

「貴様とは、まだ、戦わぬ。殺せ」

「蒸発せよ」

 俺の詠唱でデストロイの体は粉々に崩れた。

「クソ。・・・やはり、遊ばれていたか。だが、好都合だ。一人なら、更に全力を出せる」

 俺は一切、コキュートスたちの心配はしなかった。

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